indigo la Endが見出した「良質なポップス」のヒントとは?

「普遍的な、いつの時代に聴いてもいいものにしたい」

―ポストロックは徐々に形式的になっていって、ムーブメントとしては廃れていったけど、その精神性はそれこそ2010年代のジャズ周りにも受け継がれてると思っていて。

川谷:結局時代は回るから、ビリー・アイリッシュみたいなのが出てきて、タイラーも新しいことを始めたり、またちょっと変わってきてると思うんですよね。今海外で竹内まりやさんの曲が流行ってるとかっていうのも、時代が回ってるっていうことだと思うし、そういう中でも取り上げられるような、普遍的な、いつの時代に聴いてもいいものにしたいっていう、それだけは決めてやってるかもしれない。昔のインディゴの曲って、いいんですけど、時代は超えられてなかったかなって。でも『藍色ミュージック』以降は、どのタイミングで聴いても古くないと思うから、そこは一貫してると思います。



―それこそ最初期は歌ものポストロック的なイメージだったけど、『幸せが溢れたら』が転換期の作品になって、『藍色ミュージック』からは歌謡曲的な要素と、海外の同時代的な要素をどちらも踏まえつつ、より普遍的になっていったなって。

川谷:『幸せが溢れたら』も、まだ邦楽ロック感があったというか。



―もちろん、あれはあれですごくいいんだけどね。メロディいい曲多いし。

川谷:まだ演奏面でできることが少なかったから、いろんなメロディを使ってたというか。でも、『藍色ミュージック』以降は演奏面でかっこいい曲が作れるようになって、今回はその演奏ありきで、メロディは弾き語りからしっかり考えて作ったから、すごくいいものになったと思います。

―だからこそ、最初に言ってた「良質なポップス」に、ホントの意味でなってるというか。

川谷:今回の曲って、ライブで一定の乗り方ができると思うんですよ。GREEN ROOMに行って、トム・ミッシュとかやってると、手を上げるとかじゃなくて、カッティングのリズムとかに普通に乗っちゃうじゃないですか? これまでの曲は、「ここで手を上げた方がいいのかな?」みたいになってたかもしれないけど、今回はそうじゃないゾーンに入ってきたというか、クラムボンとかくるりとかもそうじゃないですか?

―ゆったり乗ってもいいし、手を上げたい人は上げるし、自由な空間になってますよね。

川谷:クラムボンって、特に初期の曲とかめっちゃキャッチーだけど、でもフジロックみたいな場所が映えるじゃないですか? 「キャッチーなバンドがこの並びの中にいるのは違和感がある」みたいにならないっていうか。

―それは音楽的な強度がちゃんとあるからでしょうね。

川谷:80年代のポップスが今でも最先端くらいな感じで聴かれてるのも、そういうことかなって。布施明さんとかも今聴いてもめっちゃ新鮮で、「これを今の人がやったらどうなるんだろう?」とか思って、今それをやろうとしてるのが、月9の主題歌の……。



―ああ、折坂悠太くん。

川谷:そう、折坂くんが今ああいう歌謡曲の感じを一番うまくやってるなって。ナイアガラとか、はっぴいえんどが好きな若い人はいっぱいいるけど、でもその多くがアンダーグラウンドで終わってる中、折坂くんがあの感じで月9をやってるっていうのはすごいなって。(星野)源さんや米津とかは、もっと海外のトレンドを意識してると思うけど、これからどうなっていくんだろうなって思ったり。俺が今やりたいのは、大橋純子さんのバンド形態(美乃家セントラル・ステイション)がすごくて、『PAPER MOON』とかめちゃめちゃいいから、次はこれかもなって思ったりもしてるんですよね。





―じゃあ、気が早いけど次の作品はインディゴ版『PAPER MOON』?

川谷:今はそう思ってるんですけど……。

長田:実際作る頃にはまた変わってそう(笑)。


Photo by Masato Moriyama

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