米出版界の大物、性的虐待者を黙らせ権力者にすり寄る姑息な「手口」

まだまだ出てくる告発の数々

ハワード氏の名前は、2018年にファロー氏がNew Yorker誌に掲載した記事にも登場する。AMIのCEOで、ドナルド・トランプ大統領の長年の友人デヴィッド・ペッカー氏に関する記事だ。ファロー氏によれば、AMIは元プレイボーイ誌のモデルでトランプ大統領と関係を持ったと主張するカレン・マクドガル氏に6桁台の大金を払い、独占出版権を買った。同社は彼女に100ページ前後のコラムの執筆とスキンケアコーナーでのコラボレーションを約束したが、どちらも実現しなかった。同社は定期的にこうした「金を払って握りつぶす」という契約を交わしており、ペッカー氏の許可なしでAMIがトランプ大統領に関する批判的な記事を掲載することはなかった、とファロー氏は報じている。別のNew Yorker誌の記者がAMI社に関する別の記事でマクドガル氏とインタビューを試みたところ、ハワード氏はAMIの指示で彼女のもとへ出向き、今後AMIが予定している授賞式の報道記事を任せる話をもちかけて彼女を丸め込んだとみられる(これも実現には至らなかった)。

2018年、ファロー氏はNew Yorker誌の別の記事で、AMIがトランプタワーの元ドアマンにも金を払っていたと報じた。このドアマンは、トランプ大統領が1980年代に従業員の一人を孕ませたと主張していた。ファロー氏によれば、National Enquirer誌がこのネタを金で握りつぶしたことをAP通信が報じようとすると、AMIはハワード氏率いる法務チームを差し向け、情報提供者の評判を貶め、AP通信の記事が出るのを未然に防いだという。

さらにファロー氏の新著には、AMIおよびハワード氏に関する話以外にも、NBCのセクハラ疑惑調査に関する新事実も明かされている。『Today Show』の元司会者マット・ラウアー氏は、元スタッフから性的に不適切な行為で訴えられた後解雇されたが、ファロー氏の新著で告白者の身元が初めて明らかにされるようだ。また、別の元スタッフによる新たな疑惑も暴露されている(ラウアー氏は疑惑を否認し、「全くのでたらめ」としている)。

ゴシップサイトPage Sixの報道によれば、ファロー氏がのちにピューリッツァー賞を受賞することになるワインスタイン氏の最初のルポの詳しい調査過程も、『Catch and Kill』に盛り込まれているようだ。当初、ファロー氏はこのネタを元雇い主のNBCニュースに提案したが、結局New Yorker誌へ持ち込んで出版された。ファロー氏とプロデューサーのリッチ・マクヒュー氏は、おそらくワインスタイン氏から圧力を受けたNBCニュースが無理やりネタをもみ消したと主張している。NBCはこの主張に対し、一貫して否認している。

Translated by Akiko Kato

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