映画『イエスタデイ』監督と脚本家が語る、今の時代に改めて伝えたいビートルズの音楽

エリー役のリリー・ジェームズとジャックを演じたヒメーシュ・パテル(手前はギャヴィン役のアレクサンダー・アーノルド)Jonathan Prime/Universal Pictures

遂に日本公開を開始した映画『イエスタデイ』。ビートルズの名曲たちを若い世代に届けるという課題から、エド・シーラン起用の背景まで、監督のダニー・ボイルと脚本家のリチャード・カーティスがローリングストーン誌に語ってくれた。

【注:文中にネタバレを想起させる箇所が登場します】

ビートルズというバンド、そして彼らが残した名曲たちの存在しない世界を想像してみて欲しい(「イマジン」にちなんだダジャレではない)。ダニー・ボイル(『トレインスポッティング』『スラムドッグ$ミリオネア』)が監督を、リチャード・カーティス(『フォー・ウェディング』『ラブ・アクチュアリー』『ブリジット・ジョーンズの日記』『ノッティングヒルの恋人』)が脚本を手がけた映画『イエスタデイ』(10月11日全国ロードショー)では、まさにそういう世界が舞台となっている。ヒメーシュ・パテルが演じる売れないシンガーソングライターのジャックは、世界中が謎の大停電に見舞われた12秒間の間に、バスにはねられるという交通事故に遭ってしまう。彼が目覚めると、人々の記憶からファブ・フォーの存在が消滅してしまっていた。ジャックは彼らの音楽を自分の曲として発表し、瞬く間にスターダムを駆け上っていく。

その過程でジャックは、本人役で登場するエド・シーラン(自虐的な演技は賞賛に値する)との共演を果たす。また彼は、幼馴染で現在は彼のマネージャーを務めるエリー(『ダウントン・アビー』『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』等で知られるリリー・ジェームズが演じる)に恋をする。ジャックのキャリアと恋が交互に描かれる展開について、カーティスは「ジャグリングみたいなもの」としながらも、両テーマは互いに支え合っていると主張する。「僕らがみんなペテン師だっていう考え方は主なテーマのひとつだ」彼はそう話す。「でも同時に、僕はラブストーリーを書きたかった。どんなことがあろうとも、結局愛に勝るものはないんだよ」。

本作の原案を考案したのは作家のジャック・バースだが、その内容を耳にしたカーティスは、そのアイディアを元に脚本を書かせて欲しいと申し出た。「その素晴らしいアイディアを僕なりに解釈したものを作りたい、そう伝えたんだ」カーティスはそう話す。「ビートルズは僕の人生において不可欠な存在だったし、ずっと彼らの音楽がもたらす喜びを描いた映画を作りたいと思っていたからね。自分のキャリアが終わりに近づきつつあるからこそ、そういう思いを形にしたかったんだよ」本作ではカーティスが脚本家として、バースは原案の考案者としてクレジットされている。

ボイルとカーティスは、ロンドンオリンピックの開会式でもタッグを組んでいる(カーティスは『Mr.ビーン』が登場する場面の脚本を担当)。ボイルから他に取り組んでいる作品について尋ねられたカーティスは、彼に『イエスタデイ』(当時は『All You Need』というタイトルだった)の脚本を見せた。「いいアイディアを耳にすると、まず考えるのは同じような作品が既に存在してるだろうってことだ」しかしそれが事実ではないことがわかると、ボイルはすぐ制作に乗り出した。「音楽についての映画を撮る上で、素晴らしいアプローチだと思った」ボイルはそう話す。「この映画はミュージカルじゃない。ビートルズの曲をただカバーするだけじゃなくて、彼らの存在を人々の記憶から蘇らせ、改めて世界にプレゼンしようとしているんだ」

『イエスタデイ』誕生の背景を知るための6つのストレートな質問に、2人は率直に答えてくれた。

Translated by Masaaki Yoshida

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