追悼ジンジャー・ベイカー、ドラムの魔術師が残した名曲10選

2. クリーム「サンシャイン・ラヴ」1967年


クリームの代表曲である「サンシャイン・ラヴ」は、ヘヴィメタルの起源とされることが少なくない。しかしこの曲におけるベイカーのドラムは、後年に主流となるラウドでアグレッシヴなロックのマッチョイズムとは似て非なるものだ。ジャック・ブルースが生み出した歴史に残るリフに対し、ベイカーは力技で応戦するようなやり方ではなく、タムを基調としたミニマルでレイドバックなパターンで、曲にそっと華を添えてみせた。ベイカーは同パートを考えたのは自分だとしているが、エンジニアのTom Dowdは考案者は自分だと主張している。「ダウンビートが必要とされる場で、インド音楽のビートを考えつく欧米人に会ったことがあるかい?」Dowdはスタジオでメンバーにそう問いかけたという。「(ベイカー)がそのパターンを叩き始めた瞬間、すべてのピースがピタリとハマったんだ」

3. クリーム「ホワイト・ルーム」1968年


ジャック・ブルースの手によるこのクラシックには、ベイカーの代名詞ともいうべきスタイルがはっきりと反映されている。ヴァースの部分ではキックとスネアとハイハットによるヘヴィなグルーヴで曲全体を支えつつも、随所に盛り込まれたスネアやタムのオカズによって強烈にファンキーなヴァイブを生み出している。このパフォーマンスは今聴いても新鮮だが、後年のベイカーは同曲を含むクリームの全楽曲への称賛に対して嫌悪感を示していた。「まったく、クリームは頭痛の種だよ」彼は2015年にそう語っている。

4. クリーム「スプーンフル(Live)」1968年


クリームの真骨頂、それは3人の天才が楽曲の深みを見せつけるライブだった。ウィリー・ディクソンが作曲し、ハウリン・ウルフが世に広めたブルースのスタンダード「スプーンフル」は、3人の力量を示す上で理想的な曲であり、サンフランシスコのWinterlandで披露されたこの17分に及ぶセッションでは、半分のテンポで刻まれるシャッフルビートや煽るようなハードロック調パターンによって、ベイカーがバンド全体をリードしている。各メンバーが持ち味を存分に発揮している一方で、それぞれが相手の一歩前に出ようと競い合うかのようなこのテイクでは、バンドの持ち味であるエッジーなケミストリーが際立っている。「当初クリームはダダの集団になる予定だった」クラプトンは2012年にそう話している。「ステージ上で次々に不可解なことをやる、実験的で奇妙で挑発的なグループになるはずだったんだ。でもインストのパートを延々とジャムるようになって、結局それがバンドのイメージとして定着することになったんだよ」

Translated by Masaaki Yoshida

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