幾何学模様×OGRE YOU ASSHOLE、日本発の「サイケデリック」が更新された一夜

2019年10月5日、東京・渋谷WWW Xに出演した幾何学模様(Photo by Yosuke Torii)

海外ベースで活動し、昨年は自身のレーベル〈Guruguru Brain〉より最新作『Masana Temples』をリリースした日本人5人組バンド、幾何学模様が2年ぶりに来日。東名阪を回るツアーの初日公演(10月5日)は先だってニュー・アルバム『新しい人』をリリースしたOGRE YOU ASSHOLEをスペシャル・ゲストに迎え、東京・渋谷のヴェニューWWW9周年・WWW X3周年の記念シリーズ「 WWW & WWW X Anniversaries」の一環としてWWW Xにて開催された。「サイケデリック」を独自に解釈する両雄の共演とあって、この日のチケットはソールドアウト。土曜の18時開演という早い時間にも関わらず、会場には多くのオーディエンスが詰め掛けていた。

最初に登場したのはOGRE YOU ASSHOLE。濛々と立ち込めるスモークの中、青い照明が4人のシルエットを映し出すと、会場からは大きな声援が巻き起こる。シンセサイザーの発振音とギターのフィードバックがレイヤーされた、スペイシーなドローン・サウンドが徐々にフロアを満たし、あっという間に異次元へとトリップ。教会のオルガンを思わせる荘厳なギターフレーズに導かれ、まずは2012年リリースの通算5枚目『100年後』から「黒い窓」でライブはスタートした。

オリジナル音源よりもぐっとテンポを落とし、サビから歌い出すという意表を突いた展開。まるでジャックスを彷彿とさせる哀愁のメロディを、出戸学が艶やかなハイトーン・ヴォイスでブルージーに歌い上げる。続いて新作『新しい人』より「朝」。カウベル、シェイカー、ベース、キックの順に音が重なり、ミニマルなフレーズをひたすら反復するアンサンブルが、こちらの時間感覚を少しずつ奪い去っていく。PAブースではエンジニアの中村宗一郎が、ダブ・リミックスよろしくミキサーやエフェクターを駆使しながら、バンドが繰り出すサウンドスケープをリアルタイムで変調させていた。




Photos by Yosuke Torii



さらにニュー・アルバムから「さわれないのに」を披露。マイナーとメジャーを行き来する風変わりなメロディと、16ビートのシンコペーションが効いたタイトなリズム、掛け合いのような馬渕と出戸のギター・オーケストレーションが、一定の温度を保ったままひたすらストイックに繰り返される。

ミシェル・ウエルベックが1998年に発表した小説『素粒子』との“共振”を、出戸自らが認めた表題曲で幕を開ける『新しい人』は、これまで以上に抽象度を高めた歌詞世界と、中心に巨大な空洞がぽっかりと空いたようなミニマルなバンド・アンサンブルが、「サイケデリック=酩酊」という安易な連想をもきっぱりと拒絶する、どこまでも醒めたアルバムだった。「朝」も「さわれないのに」も、そんな世界観を象徴するような楽曲で、隅々までピントが合っているが故にかえって足元がおぼつかなくなるような、アンドレアス・グルスキーの写真にも通じるサウンドスケープはライブでも忠実に再現されていた。








Photos by Yosuke Torii

そして、ここから怒涛のライブ後半。時空がグニャリとねじ曲がるような途中のダイナミックなテンポチェンジと、そこから展開される祭囃子的なビートが圧巻の「フラッグ(Alternative Ver)」、間髪入れずに繰り出された、宙を切り刻むような馬渕啓のファンキーなギター・カッティングは印象的な「見えないルール」という定番曲の応酬に、フロアから叫び声のような声援が湧き上がる。

そして最後は2011年の通算4枚目『homely』から「ロープ」。まるでラーガのようなインプロビゼーションからスタートし、ボトルネックを使った出戸のスペイシーなギター・フレーズと、シンプルだがツボを押さえた馬渕のアルペジオ、勝浦隆嗣によるトライバルなドラミングに、ねっとりと絡みつく清水隆史のベースラインが官能的に混じり合いながら、唯一無二のグルーヴを紡いでいた。

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