「音楽を検閲してるのか?」TikTokが歌詞の内容で楽曲利用を制限

歌詞に不適切な表現がある楽曲を制限したのは事故だった、とTikTokはコメント(Chesnot/Getty Images)


TikTokの“内部エラー”は、同アプリを所有している中国企業Bytedanceのコンテンツ制限方法に対し、米国と英国が懸念を募らせていた最中に発生したものだ。10月初頭、マルコ・ルビオ米上院議員は財務長官が議長を務める対米外国投資委員会(CFIUS)宛に文書をしたため、Bytedanceが中国政府を支持しない動画の検閲を行なっているという疑惑を調査するよう促した。「自由社会ならびに世界において情報を検閲しようという中国政府の悪質な取り組みは受け入れがたいものであると同時に、米国と同盟国に対して深刻かつ長期的な課題でもある」とルビオ上院議員は記した。

アプリから汚い言葉遣いを取り除きたい、という短命かつ(TikTokいはく)意図的ではない努力は、2018年のSpotifyの取り組みを思い出させてくれる。2018年5月、Spotifyは「ヘイトコンテンツと悪意ある行動を取り締まるポリシー」を新たに導入。結果として、性的ならびに身体的暴行が噂されたR・ケリーやXXXテンタシオンらアーティストの楽曲がSpotifyのプレイリストから除外されたのだ。

だが、音楽業界が声を大にして異議を唱えると、同社は慌ててこのポリシーを撤回した。「奴らは音楽を検閲してるのか?」とケンドリック・ラマーの所属レーベルとしてお馴染みのトップ・ドッグ・エンターテインメントの“パンチ”ことテレンス・ヘンダーソン社長は当時このように述べた。「これは危険だ」とヘンダーソン社長は付言した。数週間以内にSpotifyは「アーティストの行動をめぐるポリシーの導入を控える」と発表。のちに同社のダニエル・エクCEOは、「出だしがマズかった」ことと「もっと上手くやるべきだった」と弁明した。

Spotifyの取り組みが意図的であったのに対し、TikTokは不適切な表現があるコンテンツを制限したのは、あくまでエラーであると主張しているが、それは民間企業から不満が噴出しなかったからにすぎない。おまけに米国の音楽レーベルには、連邦通信委員会(FCC)が定める放送禁止用語を使わない楽曲のクリーンバージョンをラジオ用として提出することが義務づけられている。それなのにレーベルの関係者は、blackbearの「Hot Girl Bummer」などの不適切な表現がある一部の楽曲は、TikTokの制限から巧妙に逃れられたと述べる(それに対し、blackbearの代表者はノーコメント)。さらに、レーベルの従業員は重要な楽曲が復元されるよう、TikTokとの連絡係が熱心に対応してくれたことも語った。

だが、今回のTikTokによる差し止めの気まぐれさを目の当たりにしたレーベルの従業員たちは、無力さと苛立ちを感じている。TikTokの動画でクリーンなオーディオバージョンが15秒だけ使用されても、楽曲のどこかにののしり言葉が使われているだけで楽曲がまるごと除外される可能性がある、とレーベルの情報提供者は語る。さらに、ののしり言葉の制限はヒップホップ楽曲に多大なる影響を与え、米国でもっとも人気のあるジャンルからTikTokは距離を取ろうとしているのではないか、と懸念されたほどだ。「我々ができることは、あまりないのです」とある従業員は残念な気持ちをあらわにした。

先日、レーベル関係者のふたりは、TikTokがエラーによって除外してしまった不適切な表現がある楽曲をすべて復元した、という通知を受け取った。それなのに、10月17日になっても一部のレーベル従業員やマネージャーは制限が解除されたことを知らず、クリーンバージョンをTikTokに送り続けていたそうだ。

復元されたとはいえ、TikTokのヘビーユーザーのあるマネージャーは、TikTokを今後使用するうえで注意が必要だと語る。「私の作業のほとんどは細分化されているので、こうした状況は避けられます。楽曲、または動画がTikTokの意に反するものではないことをしっかり確認していますから。TikTokを利用する皆さんにも同じことをお勧めしますね」。

Translated by Shoko Natori

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