21歳のeillが見たリアル「救いとなるのは、友達と手を取り合って繋ぎ止め合うこと」

韓国でオーディションを受けた理由

―さきほど「韓国の高校に行く気満々だった」という話もありましたが、中学生の頃から「韓国で歌いたい」という夢を抱いて、実際に韓国でオーディションを受けたり、韓国人のボイストレーナーに習ったりしていたんですよね。

eill:そうです。最初は憧れが韓国にしかなかったんですよ。日本にはそこまで憧れがなかった。だから自分のなかで「韓国でしか歌いたくない、韓国語じゃなきゃ嫌だ」となっていて。それで14歳のときから韓国語でオーディション受け始めたんですけど、歌が上手くなかったので、日本に住む韓国人の先生に教えてもらうようになって。その先生に「曲も作りなさいって」言われて、歌詞も書くようになるんですけど……日本語なわけじゃないですか。韓国語でも書いていましたけど、自然と出てくるのは日本語で。そうなったときに、自分の歌う場所は日本だって気づいたんですよね。自分で書いた曲を自分で歌いたいと思ってからは、日本でオーディションを受け始めました。それが高校1年生のときです。

―高校生の頃は「ENNE」名義で活動をされていて、「eill」として作品を発表し始めたのは去年からですよね。「eill」としてスタートしてから一気に広まった印象があるのですが、ご自身としてはいかがですか?

eill:去年の6月までは曲すら出してなかったので。そう思うと、この1年でいろんなフィーチャリングとかも呼んでいただけるようになったし、作品を出すことで少しずつだけど聴いてくれる人が増えていくものなんだなって。びっくりしてるし、感動だなあ。

―この1年でいろんな人に見つかって評価を受けるようになったのは、もちろん「ENNE」時代の経験やスキルの積み上げによるものもあるとは思うんですけど、具体的になにかを変えたからうまくいった、という部分もありますか?

eill:「ENNE」名義のときは、ほとんど配信リリースをしてなかったんですよね。基本、ライブハウスでライブをして、その場所で音源を売る、という感じで。eillからは、「ライブよりも配信」みたいな。SNSと同じように、自分が思っていることを呟くみたいに出す、ということをeillでは大切にしていきたいと思っていて。やっぱりサブスク時代だから、届けたら、届いた! みたいな(笑)。

―「呟くみたいに曲を発表する」という言葉はすごく面白いですね。曲作りにおいてはどうですか? なにか意識を変えた部分はありますか?

eill:私、ピアノで曲を作るんですけど、前の名前のときはほぼ一人でピアノで作っていたんです。でもeillでは、最初はピアノで作るんですけど、そこにバンドメンバーのみんなでセッションしたアレンジが加わったりして、視野がブオオンって広がりました。自分で街に行って録った音を使ったり、「普通だったら、これはしないかな」みたいなことも「やってみよう!」みたいなテンション、心構えで曲作りをするようになりましたね。



―「普通や常識の“枠”から一歩だけはみ出る」って、ポップスの必須条件ですよね。eillさんって、この先はどういう立ち位置のアーティストになりたいと思っていますか? 個人的には、宇多田ヒカルさんや西野カナさんのような、メジャーシーンで活躍して大衆に聴かれる歌を届けながら、同性から憧れる存在になり得るシンガーだと思っているんですね。それは、活動全体を見ていてもそうだし、ライブを観るとより強く思います。

eill:私も、同じことを思っていて。今は、「ディープ」というか、「シティ・ポップ」とかって呼ばれる場所にいると思うんですけど、自分から出てくるメロディとか、ピアノと向き合って出てくる曲は、今のeillのものだけじゃないんですよね。昔からR&BとかK-POPも大好きだけど、根幹にあるもの、自分が気持ちを持って書く曲は、すごくJ-POPだったりする。今もそのあいだを意識して作ってはいるんですけど、もっと言葉が伝わりやすい音楽も歌っていきたいと思っています。でも、だからと言って、ピアノで弾き語れる曲だけではなくて、ダンスミュージックとかも歌いたい。人って、生きているあいだにいろんな感情や瞬間があるじゃないですか? 夜遊びしてるときとか、夜遊びから帰ってきて少し寂しくなるときとか……「今はこのeillだ」「今はこのeillだ」みたいな感じで、それぞれの瞬間に組み込んで聴いてもらえる音楽を作りたいなと思っています。



―eillさんって、本当にいろんな国のいろんなジャンルの音楽を聴かれていると思うんですけど、そのなかで「J-POPらしさ」とはなんだと思いますか?

eill:歌詞ですね。私、アニソンもすごく好きなんですけど、アニソンって変なことを言ってるんですよ。「にゃー」とか「好きだよん」とか(笑)。海外だとそういう要素ってあんまりないのかなと思っていて。J-POPって、「本当にここにいる」みたいな感じがするんですよね。アニソンとかも、本当に自分の真横でアニメのキャラが言ってる、みたいな感じがする。だからJ-POPでは言葉が一番大事なのかなって思うようになりました。

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