TOTALFAT・Shunが語るblink-182「天性の華がある部分に憧れるのかもしれない」

パンクロックをどう刷新するか?

―ブリンクの『NINE』という作品は、ポップパンクをベースにヒップホップ以降をどう咀嚼するかをテーマにしたであろう音色、リズムに満ちている作品で。時代の流れの中でパンクロックをどう刷新するかという意味でも、TOTALFATがやってきたことと重ねられる部分は多かったと思うんですが。

Shun:そうかもしれないですね。いちファンとしては『California』が大好きすぎるんですけど(笑)。でも、音楽をやっている身としては、『NINE』はものすごくモダンなアルバムだと思ったし、チャートに入って然るべき作品だと思いました。トラッキングの部分で、言われたようにヒップホップ以降をうまく咀嚼していて。バンドサウンドなんだけどバンドじゃないサウンドデザインがされてるんですよ。メロディもリズムも、今までで一番ループが多くて。ポップパンク的なものとは別だけど、でもキャッチーなフレーズがリフレインで入ってきて、気づいたら歌っちゃう楽曲構造になってる。





―先行で出ていた「Blame It On My Youth」なんかは、まさにそういう構造の中でブリンク印のメロディを聴かせる曲ですよね。

Shun:そうそう。それってヒップホップで言う「フック」と一緒のものだし、何かをサンプリングしたトラックを同じBPMで回しながらノリを作っていく手法でもあるし。それを人力でやってるのが『NINE』だと思ったんですよ。トラヴィスがルーツのヒップホップから持ってきたものもあるだろうし、マークはAll Time LowのアレックスとSimple Creaturesを始めて、デジタルなポップパンクにトライしたことで吸収したものもあったと思う。そうやってオリジナルメンバーのふたりが持ってきたものに対して、マットは元々やってきたAlkaline Trioでめちゃくちゃメロウで素晴らしいアルバムを出したじゃないですか(『Is This Thing Cursed?』/2018年)。そこでマットがメロウな部分を昇華できたからこそ、ブリンクのオリジナルメンバーふたりが作ったモダンなものに乗っかることができたのかなって。そういう絶妙なバランスでできた作品のような気がしましたね。



―『California』は、ブリンクの名フロントマンであったトムが脱退してから一発目の作品だったからこそ、いわゆるブリンク節を自分たちで整理するようなところもあったと思うんですね。だからこそキッズにとってのブリンク名物になった「What’s My Age Again?」をセルフオマージュしたMVを作ったりしていたと思うんです。

Shun:そうですよね。

―今のお話で言うと、新しい3人になったブリンクでも変わらないブリンク節を提示したのが前作『California』なら、今作は新しい3人だからこそできることはなんなのか、この時代にロックバンドをやるにはどういうサウンドを鳴らすべきなのかを提示した、新たなブリンクの本当の意味での1作目のような質感がありますよね。

Shun:アメリカって、ストリーミングサービス時代のサウンドに対しても、俺らより仕上がってるところがあると思うんです。たとえばチャンス・ザ・ラッパーを聴いている時にアルゴリズムでブリンクの名前が上がってきても、違和感なくブリンクを聴けるようなサウンドに仕上がってるのが『NINE』だと思うんですよね。ギターは特に抑えられてると思うし、基本はヴォーカルとリズムトラックっていう感じの曲になってる。

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