THE NOVEMBERS×Dos Monos×君島大空、「激動の2019年」を菅野結以と語る

ラジオへの恩返し、3人から見た菅野結以

─そもそも、菅野さんがラジオを始めたきっかけを教えてもらえますか?

菅野:当時、モデルとしての活動は始めていたんですけど、なるべく人と関わらない生き方をずっとしていたんですよね。24歳でラジオのパーソナリティを始めるまでは友達いなくて、むしろ「要らない」とすら思っていて。ずっと一人で好きなものを掘っては、一人で楽しんで、一人でライブを観ては、その感想を誰に向けるでもなく日記に書く、みたいな(笑)。それで良かったというか「この世界に自分と好みが合う人なんて存在しない」と思ってたんです。特に、その頃はギャル雑誌に出ていたので、周りの子たちとは全く聴く音楽も違えば、読む本も違うし。

でも、この『RADIO DRAGON』という番組が20時台にやっていた頃、私はリスナーとして聴いていて。友達がいないと、ひとりの時間が多いのでラジオを聴くじゃないですか(笑)。「人との会話がラジオ」みたいになっていて、そこで音楽と出会い、救われることがめちゃくちゃ多かったんです。そのことに対していつか恩返ししたい、ラジオに関するお仕事をしたいと漠然と思っていたら、ほかでもない『RADIO DRAGON』が、たまたまパーソナリティを探しているという話を聞いたんですよ。すでにオーディションを締め切った後だったのですが、「これをやるのは私しかいない!」という並々ならぬ思いでお願いして、それで人生初のオーディションを受けに行きました。

─オーディション自体が初めてだったんですね。

菅野:それまでは、「落ちたら一生立ち直れないから」と保守的に生きていて。でも思い切ってオーディションを受けて、ディレクターと話をしたときに「この世界に、こんなに言葉が通じる人がいるんだ!」って感激して。「どんな音楽が好きなの?」と訊かれ、「一番好きなのはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインです」って言ったら「じゃあ、この辺も好きかもね」って。その中には知らないアーティストもあったりして。「こんな話が出来るなんてメチャクチャ楽しい! なにこれ!」って(笑)。人と共有できる楽しみみたいなものも、ラジオの世界で初めて知ったんです。

─皆さんは、菅野さんにどんな印象を持っていますか?

君島:今年、デビューEP『午後の反射光』をリリースしたときに、初めて呼んでいただいたラジオ番組が『RADIO DRAGON』だったんですよ。そのときに、作品について「これだけは言おう」と決めていたことを紙に書いて持っていったんです。光というのは常に美しいものとは限らなくて、光に照らされることで暴かれてしまう醜い部分があったり、その光が遮ってしまう別の光があったり。そういうことについて、僕は考えながら作品を作っていたのだなということを結以さんに話したら、それをすごく理解してくれて。この人は本当にちゃんと作品を受け止めてくれている人なんだなって。

菅野:嬉しいです。その話を聞かせてもらったとき、私が作った最新の写真集『Halation』のテーマとすごく似ていたというか、すごく近いところにあるなと思ってすぐ『Halation』を君島くんに送りました。


君島大空:1995年生まれ 日本の音楽家。高井息吹と眠る星座のギタリスト。2014年からギタリストとして活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞/作曲/編曲/演奏/歌唱をし、多重録音で制作した音源の公開を始める。2019年3月にデビューEP『午後の反射光』をリリース。ギタリストとして数々のアーティストのライブや録音に参加する一方、短編映画の劇伴、の楽曲提供など様々な分野で活動中。



荘子it:結以ちゃんはね、「ギャル」「闇」「ピュア」みたいな感じ、弁証法的にいうと。「ギャル」と「闇」が戦った末に、ギリギリ「ピュア」な性格が勝ったというか。

菅野:あはははは。

荘子it:だからギャルも続けているわけじゃない? 闇落ちしてギャル界のダースベイダーにはならず、ギャル界の底力を提示して見せているところがすごい尊敬する。

菅野:あざす。「ギャル魂」は大事にしてるんで(笑)。

荘子it:俺は割と簡単に闇落ちしてしまうというか。「分かるやつだけ分かればいい。100年後に評価されればいい」みたいな逃げ道に簡単に行ってしまうタイプなので、こういう人は尊敬しますね。今年、Dos Monosで『Dos City』というアルバムを出したときは、「世間に顰蹙を買ってやろう」くらいの勢いだったし、評価を求めていたわけじゃないんだけど、でもそれを「いい」と思ってもらえてこうやってイベントに呼んでもらえたことは、意外だったし有り難かったですね。俺の音楽が、ピュアネスにも届き得る強度があったんだなって。


Dos Monos:荘子it(MC/トラックメーカー)、TAITAN MAN(MC)、没 a.k.a NGS(MC/DJ)からなる、3人組ヒップホップユニット。フリージャズやプログレ等からインスパイアされたビートの数々と、3MCのズレを強調したグルーヴが特徴。デビューアルバム『Dos City』を今年3月にリリース。荘子itは向井太一やDATS、yahyel等にも楽曲を提供するなど新進気鋭のプロデューサーとしても活躍。



─この中では小林さんが一番、菅野さんと付き合いが長いですよね?

小林:そうですね。僕が覚えているのは、THE NOVEMBERSの「いこうよ」という、後半がノイズだらけになる長尺の楽曲を番組でかけてくれたとき。フル尺で流すとなると、結構分数も割くし「放送事故なんじゃないか?」というような箇所もあるんですよ。普通、こういう時ってラジオの場合はフェードアウトして曲紹介になることが多いのだけど、結以ちゃんはその曲を最後まで流し切るんです、わざわざ自分で選んで(笑)。で、曲が終わったときに「ずっと(このノイズを)聴いてられる」ってボソッと呟いたんですよね。

僕はこの曲を作りながら「このノイズがずっと続くといいのにな」と思ってたんです。だから、さっき君島くんが言ったように「この人は、ちゃんと聴いてくれているんだな」と思った。このノイズを僕と同じように、「美しい」と感じてくれる感性を持っている人なんだなと思ってすごく嬉しかったんですよね。

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