アンダーワールドが語る「未知なる挑戦」とクリエイティブの源、世界最高のフジロック

―では、ゲストとのコラボについて聞かせてください。まずはØ (フェイズ)から。

カール:リックが前からØ(フェイズ)のファンで、僕も何曲か聞かせてもらったら、とても刺激的でね。聴いていると、様々なアイデアが湧いてくるというか。それでリックが彼と連絡を試みたところ、この共演が実現したというわけ。期待を裏切らなかったよ。彼は非常に直感的で、ラップトップを使って素晴らしいものを生み出していくんだ。

リック:彼の曲は、インストとして完成されているんだよね。「それだけですべてを満たしている」というか。例えるならチョコレートみたいで、彼の音楽を聴くと満たされる気持ちになる。あるいは、クラフトワークを夢中で聴いてた21歳の頃を連想するというか。自分に突き刺さる何かがあるんだよね。



―ザ・ネックスとのコラボは?

カール:彼らとは数年前、シドニーのオペラハウスで行った、(ブライアン・イーノ絡みの)即興ライブで共演する機会があった。演奏力に感銘を受けたのはもちろんだけど、それよりも彼らの人間性に惹かれたんだ。

才能のある人って、時には心を開いてくれない人もいるけど、彼らは寛容で僕らを受け入れてくれた。そのことを当時リックにも話していて、それをずっと覚えていてくれた。あれから何年も経ち、今回また彼らとセッションしてみたら素晴らしいものになったよ。



―ブラック・カントリー・ニュー・ロードにはカールの娘さん、タイラー・ハイドも参加しています。自分の娘さんがやっている音楽をどのように感じますか?

カール:ゴミだ! 最悪だ! 今時の若者に、音楽の何がわかるって言うんだ。俺たちの時代は最高だった。なんてったって、シェイキン・スティーヴンスみたいに裾を折ったタイトなジーンズで決めたロカビリー・ボーイズがいたからな。で、質問は何だったっけ?

―(笑)。

リック:「ウチの娘の音楽は最高だ」って言えばいいじゃないか。

カール:いや、自分で始めたことなんだから、親の力を借りずに自分でどうにかすればいい。今のUKでは多種多様の新しい音楽がたくさん出てきている。特にここロンドンではジャズ・シーンが新たな盛り上がりを見せているし、それ以外でも注目されている若手バンドがたくさんいる。僕たちは幸いにも、ブラック・カントリー・ニュー・ロードを介してそのシーンに直接アクセスできるんだ。

彼らは型破りな若手バンドの一つで、ロンドンのジャズ・シーンから出てきた。今はジャンルの線引きがなく、多くの若手ミュージシャンはジャンルを超えたところで活動・交流し、バンドを掛け持ちしている。凄く健全だと思うよ。実際、ミュージシャンとしても非常に優れているから、たまにメンバーを拝借して、僕たちの楽曲に思いもよらないことをやってもらうんだ。それこそが様々なジャンルの人と共演することの醍醐味さ。


『Drift Series 1 - Sampler Edition』のオープニングを飾る「Appleshine」にはブラック・カントリー・ニュー・ロードのメンバーがヴァイオリンとフルートで参加。公開された映像はTOMATOのサイモン・テイラーが手掛けている。



―リックの娘さん(Esme Bronwen-Smith)も本作にクレジットされていますが、自分たちの娘たちと作品を作ることをどのように感じますか?

リック:なかなかいいものだよ。他に何と答えればいいのか……。

カール:ちゃんと育てた証だ。

―クリエイティブな子供に育てるための、独自の教育方針などありますか?

カール:「教育方針」ってそもそも、どの家庭も独自のものがあるんじゃないかな。僕たち二人の間でも違うしね。

リック:まあ、そうだね。

カール:娘にはずっと、「音楽と芸術の道だけは絶対に進むな」と言い続けたのに(笑)、結局その道を選んでしまった。我が子ながら大したものだよ。父親の助言に全く耳を貸さず、自分が正しいと信じた道を進んだわけだから。見込みがあるよね。

リック:うちの娘は優秀としか言いようがない。音楽の才能に恵まれ、感性も鋭い。生まれてからずっと音楽を愛して止まなく、コミュニケーション能力も高い。それだけ揃ってれば父親としては敬服するしかないよ。こっちが彼女の才能にうまく便乗させてもらってる。

カール:アーティストは歳を重ねるにつれ、若いアーティストとつながっていることが重要になってくる。それはどんな分野で活動する表現者にも言えることだ。だんだん歳をとると皮肉屋になってしまい、楽な道を選ぶようになるからね。

さっき僕が冗談で「昔は良かった」と言ったけど、僕たちも若い頃には同じことを何度も言われた。(若いアーティストがこれからやろうとしているのと)同じことを自分は既にやったと思うからね。でもそれは違う。僕たちは僕たちのやり方でやったことを、若いアーティストたちは違う視点でやっている。そういう新しい物の見方を、常に意識する姿勢を持ち続けることが必須だ。自分の視野を狭めないためにも。

リック:あとは観察力の問題かな。相手が若いからって耳を貸さないのは違う。歳をとっているからって何でも知っているわけじゃない。僕の息子と娘は新しい環境の中で生きていて、それは僕たちが過ごした時代とは全く違うものだ。彼らが人生で経験していることは、僕たちが経験したものとかけ離れている。当然彼らのことを愛しているから、頼りにされた時に、彼らを支えられるくらい物事を理解している必要があるんだ。


Photo by Rob Baker Ashton

―お子さんから、最近の若いアーティストやバンドを紹介してもらったりもしますか?

リック:こっちが求めなくても向こうから言ってくるよ。嫌でも耳に入ってくる。息子は今、世界で盛り上がっているサイケデリック・ギター・ミュージックがお気に入り。特に好きなのはキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードで、つい先日ライブを観に行っていたよ。

―お二人の最近お気に入りは?

カール:Detroit Undergroundレーベルの作品はどれもいいね。あとUKのバンドで、ガール・バンドも凄く気に入っている。

リック:サンズ・オブ・ケメットは物凄くお気に入りだ。あとスヴェン・ヴァスのDJプレイも好きだ。自分の曲ばかりかけるわけじゃないけど繋げ方がいい。カール・コックスもそう。



Translated by Yuriko Banno

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