アンダーワールドが語る「未知なる挑戦」とクリエイティブの源、世界最高のフジロック

アンダーワールドのリック・スミス、カール・ハイド(Photo by Rob Baker Ashton)



―ところで、『Drift』はどのようなスタジオ環境、及びプロセスでレコーディングされたんですか?

リック:お互い自分の自宅スタジオがあって、それとは別にPig Shed(豚小屋)と呼んでいる二人のスタジオがある。そこはライブ演奏や録音ができる広い空間があって、誰かと共演する時にも使っているよ。あと、今は二人ともラップトップをそれぞれのスタジオの「中枢」として使っているから、可動性の高い環境で制作に取り組むことができた。ツアーなどで外国に行った時でも時間さえあれば、ホテルの部屋や移動のバス、空港などでレコーディングを行えるんだ。

カール:リックが今回プロセスでこだわったのが、「どこにいようと二人で作品に取り組む」ということだった。だからツアー中でも、可能な限りホテルの部屋で新曲に取り掛かるようにした。時間を有効に使うことで、二人でいつどこでも新しい曲を書けるようにしたんだ。

―今回新しいく導入した機材やソフトウェアなどはありますか?

リック:ハードウェア機材だとロシア製のシンセサイザーでLYRA-8 organismic synthesizerというのを2台ほど手に入れて、「Brilliant Yes That Would Be」で特に活躍している。モジュラー機材も色々と手に入れたよ。作り手が誰か忘れたけど、Shiftyというかなり小ぶりのモジュラー・キットで、shift registerというぶっ飛んだことをしてくれる。それは「Border Country」「Appleshine」「Listen To Their No」といくつかの曲に貢献してくれた。この機材自体は音を発するものではなくて、制御電圧を振り分けることで音に変化をもたらすんだ。

あとはSSLのマイク・プリアンプとミキシング・デスクを、今回のプロジェクトではこれまで以上に活用した。それからカールが前々回の誕生日、僕にギターをプレゼントしてくれたんだけど、カリフォルニアのSubway GuitarのFat Dogの弟子が作ったモノで、なかなか素晴らしいんだ。カールもギター周りで色々あるんじゃないかな。



カール:ツアー中は、リックのトラベル・ギターを使わせてもらったよね。宇宙船のような形をした凄い代物なんだけど、それをラップトップにつなげて音を加工してる。

ーアンプやペダル・エフェクターは?

カール:アンプは確か日本のメーカーだと思うのだけど、ELKという70年代に出回ったやつをオランダで見つけてね。修理してもらったら、自分にとって「夢のアンプ」になったよ。

ペダルはいつもイギリスにあるJoe’s Pedalsというところで買うか、買わない場合もそこでオススメを教えてもらってる。「最近で一番ヘンな音を出すペダルは?」ってね。同じ手癖に陥らないようにしたいから、自分の演奏をめちゃくちゃにしてくれるペダルが好きなんだ。Red Panda Particleは、ランダムに僕のプレイを崩してくれるから気に入っている。それと、古いロバート・フリップ風のペダルを元に、自分用にカスタマイズしてもらったディストーション・ペダルがある。



―逆にアンダーワールドがずっと使い続けている、「トレードマーク」とでもいうべき機材はどのようなものですか?

リック:難しいな。何年も前なら「ローランドのTR-808(リズムマシン)とVP330(ボコーダー)」と言っただろうね。この2つはどちらも非常に重要だった。ただ、もうヴィンテージ機材はあまり好きじゃなくなった。一番の理由は扱いにくいからだ。昔より高価だし、手に入りにくいからツアーで使うことができない。

なので今は「これ」というものはないけど、あえて挙げるとしたら最新のラップトップだね。もう長いことLogicのソフトウェアをシーケンサーやサウンド・ソースとして使っているよ。まだLogicという名前じゃなくて(Notator SL)、ドイツのEmagic(当時C-Lab)から出していた頃からね(笑)。ラップトップは、それこそが僕たちにとって可能性を無限に広げてくれるツールだ。移動中でもスタジオと同じ環境で作品を作ることが可能になったわけだからね。

リック:僕は個人的に、モジュラー・シンセが若い時から大好きで集めている。アープやモーグといったヴィンテージ・モジュラーも持っているけど、それらの現代アップデート版にも愛着があってね。最近のものではプロフェット12が気に入ってる。新しいものを見つけたら、まずは試したくなるんだ。


Photo by Rob Baker Ashton

―「人」から「機材」に至るまで、「新しいもの」への好奇心がキャリアを支えてきたんですね。今回の『Drift』プロジェクトに限らず、アンダーワールドとTOMATOは常にマルチメディア・アートに積極的に取り組んできたわけですが、自分たちの作品にとってアートやテクノロジーはどのような意味を持っていますか?

リック:僕は学生の頃、物理や数学が大好きで、電子機器のケーブルや真空管などをいじったり、電子部品を組み立てて音を鳴らしたりすることにたまらない魅力を感じている。僕にとってテクノロジーと音楽は、ずっと昔から切っても切れない関係なんだ。オーケストラにヴァイオリンが欠かせないのと同じくらい、僕にとっては当たり前のものだよ。

カール:(TOMATOの)サイモン・テイラーは有機的なアプローチを大切にする人で、テクノロジーの中にも昔ながらの手作りの表現を取り入れることができる。加工の仕方によって、テクノロジーにも立体的な命を宿らせることができるんだ。

―創造的なアイディアは、いつもどんな時に思いつくのでしょうか。

カール:もちろん、リック と一緒にやってるとき。

リック:できる限り視野を広げること、自分の心に従うこと。「これは面白そうだ」と思うものがあれば、それがきっかけになる。なので興味を惹くものがあったら、まずは自分の心に従って追求しながら、それがどんなところに導いてくれるか試してみることが大事なんじゃないかな。きっと僕らは生きていくなかで、見逃してしまっていることはたくさんあると思う。なので、まずは自分の心に従うこと。それに尽きるかな。

Translated by Yuriko Banno

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