老舗ギターブランド「フェンダー」が成長し続けている理由

来日したフェンダー社のCEOアンディ・ムーニー氏


──今月から始めたという新しいサービス「FENDER SONGS」についてもお聞かせください。

「FENDER SONGS」は今のところiOS用、アメリカのみの公開ですが、会員制によるアプリベースの新しいサービスです。Shazamのギタープレーヤー版だと思っていただくと分かりやすいかもしれません。SpotifyやApple Musicなど、皆さんが普段使っているストリーミングサービスに連動しているのですが、我々が登録している100万曲以上の中から選んでいただくと、コード進行と歌詞を自動的にジェネレートします。まずはアメリカで「βテスト」をスタートさせたのですが、ここで分かったのは、ギタープレイヤーというのは「曲の中にギターが使われているかどうか?」は関係なく、「いい曲であってコード進行さえ分かれば弾いてみたい」と思うものなのです。つまりヒップホップの楽曲でも、コードがあれば曲に合わせてギターを弾いてみたい。


 (FENDER SONGS Courtesy by Fender)

──なるほど。

βテストの一人である私の娘はウクレレ奏者なのですが、ビリー・アイリッシュの曲を「FENDER SONGS」でウクレレ用のコード進行を調べて実際に演奏していました。

最近のデータによれば、「ギターを始めた72パーセントの人は、自分のライフ・スキルとしてギターをマスターしたいと思っている」そうです。別に大きなステージに上がって人前で弾くようなロックスターになりたいわけではなく、純粋にスキルアップの手段としてギターを習う傾向にあるのだと。自分自身の余暇をどう過ごすかを、真剣に考える人が増えているのでしょうね。フェンダーは、そんなふうに一生付き合っていけるギターとのライフスタイルを提唱していきたいと思っています。

──ところでアンディさんは、どんなきっかけで音楽に目覚めたのでしょうか。

父親がピアニストだったので、私にいつも「ピアノをやれ」と言っていました。すると当然ギターを弾き始めるわけですね(笑)。小学生の頃は、ガットギターでスパニッシュギターを習っていました。でもそれだと全然モテないので(笑)、中学でエレキに持ち替えて。高校を卒業する頃にはセミプロレベルで演奏をしていました。20代後半まで続けていましたが、ナイキで働くことが決まって機材を全て売り払って就職した。今でもそのことを後悔しています。

社会人となり、アメリカに移り住んだ頃にアランという友人と出会いました。残念ながら今年亡くなってしまったのですが、彼はずっとピート・タウンゼントのギターテックをやっていて。彼が僕に、フェンダー社のヒストリーが書かれた本をプレゼントしてくれたんです。1986年のことで、その時に決心しました。「この本に載っているギターを全て買い揃えてやろう」と(笑)。それからフェンダーのCEOになるまでに60本は購入したかな。もちろん今も増える一方です。ちなみに、歴代のフェンダーCEOでギターが弾けるのは僕が初めてらしいですよ。

──膨大なギター・コレクションをお持ちですが、中でも「これだけは絶対に手放せない」というギターは何ですか?

1955年のフェンダーストラトキャスターですね。僕が生まれた年のギターで、これはもう棺桶まで持っていくつもりです(笑)。

──最後に、ギターという楽器の魅力について改めてお聞かせください。

ギターやウクレレがピアノと違うのは、どこへでも持ち歩けることだと思うんです。自宅で一人ポロポロと爪弾いても楽しいし、キャンプファイアーへ持っていって友達と一緒に弾いてもいい。その気になればステージで弾くこともできる。しかも、コードを3つでも覚えれば、1000曲くらい弾けてしまうわけです。

そんな魅力的なギターの中で、フェンダー社がなぜこれほどまでに人気あるのか。それは、どの楽器にもレオ・フェンダーのフィロソフィーが受け継がれているからではないでしょうか。先ほども言ったように彼は優秀なリスナーで、「プレイヤーが必要としているもの」を作るということを常に第一に考え続けてきた結果、1950年代に発売されたストラストキャスターやテレキャスターが、すでにパーフェクトな形で出来上がっていたのが何よりの証拠です。

──なるほど。

私はよく「ポルシェ」の例を引き合いにするのですが、ポルシェも1930年代にデザインとして完成され、それが今は最新鋭のテクノロジーを搭載した形で再現されている。そこまではフェンダーとポルシェはとてもよく似ています。ただしフェンダーは、50年代当時のギターが欲しいと思えば手に入れることは可能ですが、ポルシェはなかなかそうもいかない。フェンダーにとって一番新しい「AMERICAN ULTRA STRATOCASTER」も、古いヴィンテージも両方手に入るのがフェンダーの素晴らしいところだと思います。

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