捜査ツールはSNSとポッドキャスト、一般市民が殺人事件解決に貢献

一般市民に正しい犯罪捜査の手ほどきをするビリー・ジェンセン氏(Photo by Robyn Von Swank)

不眠症といっても、ビリー・ジェンセン氏は寝付きが悪いわけではない。犯罪ジャーナリストでもある彼の場合、数時間後に疑問が湧いて、夜中に目が覚めてしまうのだ。

たとえば、ニューハンプシャーの森で樽に入れられた身元不明の女性と3人の少女の遺体。のちに遺体として発見される女性が男と一緒にブルックリンの公園へ入っていった後、男が煙草の灰を落としながら1人で出ていく姿を収めた監視カメラの映像。娘がカリフォルニアへ引っ越したが、その後行方が分からないと言うメイン州の母親。彼は暗闇の中コンピュータに向かい、YouTubeで「未解決」と検索し、迷宮入り事件というネット上のウサギの穴へどんどん転がり落ちていく。

2016年春、ジェンセン氏は早朝4時のネット検索中に、シカゴでバーテンダーをしていたマルケス・ゲインズ氏の死を知った。彼が死ぬ直前の姿を、監視カメラの映像が捉えていたのだ。2016年2月7日未明のその映像には、ゲインズ氏が街のリバーノース近辺のセブンイレブンでポテトチップスを購入する姿が映し出されていた。彼が店を出ると、パーカーを着たガタイのいい男が目の前に立ちふさがった。戸口には警備員1名と数名の人々。画面は道向かいのカメラの映像に切り替わる。ゲインズ氏は男から逃れようとしていたが、車が行き交う車道の手前で立ち止まった。歩道の端で振り返り、追いかけてきた男と対面する。男が彼の顔を殴る。ゲインズ氏が車道に倒れこむ。2人の男が意識を失ったゲインズ氏に駆け寄り、恐らくポケットの中を漁った後、急いで立ち去った。他に誰も近づく者はいない。ゲインズ氏はそのまま約2分間横たわった状態で、車はよけて走り過ぎていったが、ついに1台のタクシーが角を曲がってきた。車の右の前輪がゲインズ氏の上半身を轢き、停車する様を目撃してしまった歩行者達は身をすくませた。すでに手遅れだった。ゲインズ氏はこの後まもなく、搬送先の病院で死を迎えることになる。

検視官は彼の死を殺人と断定。ゲインズ氏の遺族は、殴った男を殺人罪で起訴するよう要求した(タクシーの運転手は警察が到着するまで現場に残り、違反切符を切られることも起訴されることもなかったようだ。ちなみにゲインズ氏の遺族はセブンイレブンを不法死亡で訴えていたが、最近和解に応じた)。ジェンセン氏は映像を立て続けに数回見てた後、身震いした。その時だ、ひらめきの瞬間が訪れたのは。

Translated by Akiko Kato

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