もし「死にたい」と打ち明けられたらーー最も悲劇的な"自殺"について考える

もし「死にたい」と打ち明けられたら、話をそらしたり、批判的な態度をとったり、常識を押しつけたり、すぐ何らかの助言を与えようとしたり、安易に励ましたりしてはなりません。まずは、ひたすら誠実に相手の言葉に耳を傾け、感情を理解するように務めることが大切です。もし相手が沈黙してしまったら、無理に話をせず、じっくりと待ちます。そして相談機関や医療機関の力も借りましょう。

アメリカにしても、日本にしても、若い世代の自殺が増えている原因ははっきりと特定されていません。しかし、人を取り巻く社会や環境が影響を与えていることは間違いないのです。そしてそれは、その渦中にいて苦しんでいる人のせいではありません。讀賣新聞のシリーズ・インタビュー「STOP自殺 #しんどい君へ」に掲載されたRADWIMPSの野田洋二郎さんの言葉を借りるなら「こんな狂った世界なんだから、君が苦しかったり、悲しかったり、違和感を覚えるほうが自然だ。逃げ出したくなるのが当たり前」なのです。

メンタル面で起きてしまう問題の多くは、その当事者ではなく環境の方に問題があるかもしれない、と考えてみることが大切です。そしてできることなら、そもそもメンタルの問題が生じないように、誰もが生きやすい社会を目指すべきなのだと思います。

ミュージシャンに限らず、多くのアーティストたちは「狂った世界」が少しでも良くなるように表現してきた歴史があります。私は、その歴史と力を信じたいと思いますし、そうしたアーティストたちの犠牲をこれ以上増やしたくないとも思います。

参照
アメリカで10代の自殺率が激増
Rolling Stone 2019.10.26 11:40 EJ Dickson
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/32260

メタリカ、ボブ・エズリンら、自殺防止キャンペーンの生放送に出演
BARKS 2017.9.6 12:34
https://www.barks.jp/news/?id=1000146540

音楽が若者を自殺から救っている 米ラッパーLogicの曲『1-800-273-8255』
J-CASTニュース 2017/9/ 1 17:39
https://www.j-cast.com/2017/09/01307436.html?p=all
東京都福祉保険局 自殺予防コーナー 
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/chusou/jouhou/jisatsu/index.html

RADWIMPS野田さん「こんな狂った世界、苦しいのは自然」「一生は続かない」…STOP自殺 #しんどい君へ
讀賣新聞オンライン 2019/08/29 08:40
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/stop01/interview/20190827-OYT1T50249/



<書籍情報>



手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/

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