元米議員のヌード写真流出騒動に見るメディアの罪

Photo Illustration images: Caroline Brehman/CQ Roll Call(Hill); Shutterstock(Sky)

2013年、ゴーカー・メディアはレスラーのハルク・ホーガンと、親友ババ・ザ・ラヴ・スポンジの当時の妻とのセックステープ動画を公表した。この記事に対する世間の怒りは、実に緩慢だった。

悪質な記事だと言う一部メディアのコメンテーターもいたが、大方の意見は、毎度おなじみ何でもありのタブロイド紙の流儀、つまりいつも通りのゴーカーだ、というものだった。その後2016年にホーガンはプライバシーの侵害を理由に、ゴーカーを相手に1億ドルの損害賠償訴訟を起こした。最終的にホーガンが勝訴し、陪審は1億4000万ドルの賠償金の支払いを命じた(ゴーカーとホーガンは後に3100万ドルで和解。これにより、ゴーカーと設立者のデントン氏は破産申請する羽目になった)。

評決後、メディア評論家たちが今回の裁判が報道の自由に与える影響について議論し、未公開株式投資会社らがゴーカー・メディアを骨の髄まで搾り取る中、ホーガン裁判の資金的援助をしていたのがシリコンバレーの億万長者ピーター・ティール氏だったことが報道された。ティール氏がデントン氏に対して腹に一物を抱えていたのは間違いない。2007年にデントン氏は、ティール氏がゲイだという記事を出していたからだ。だがティール氏はニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した記事の中で、自分が訴訟を支援したのはゴーカーおよびデントン氏に対する個人的復讐ではなく、同意なきポルノの被害者を守るためだったと主張した。「ネット上での個人的尊厳の保護は長期的な課題です」とティール氏は述べ、リベンジポルノを違法とする改正案、個人情報保護法(IPPA)を引き合いに出した。同氏はこれを「ゴーカー法案」と呼んだ。

後にIPPAの立案者が指摘したように、ゴーカー裁判が法案のきっかけとなったというティール氏の発言は正しくない。もっと突き詰めて言えば、ゴーカーを訴えたホーガン裁判に加担したのは高尚なイデオロギー上の理由だという同氏の主張も、本当に誠実だとはいいがたく、面汚しもいいところだ。だが、彼はひとつだけ正しかった。ネット上でリベンジポルノの被害者の個人的尊厳を守ることはまぎれもなく長期的な課題であり、個人や州政府、連邦政府だけでなく、メディアの関与が欠かせない。ゴーカーの倒産後、束の間ではあるが一部メディア関係者の間で、テープ公開に踏み切ったゴーカーの姿勢はこの試みが失敗した証ではないか、という内省的な会話が持ち上がった。だからこそ驚かずにはいられないのだ、あれから3年後、ケイティ・ヒル氏に対するメディアの対応をめぐって何の議論も持ち上がっていないのが。

Translated by Akiko Kato

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