モルモン教徒一家殺害事件、容疑者逮捕も謎は残る

月曜日、メキシコ北部でレバロン一家9人が殺害された車の焼け跡(Photo by HERIKA MARTINEZ/AFP via Getty Images)

メキシコ北部で、子供を多数含むモルモン教徒一家のメンバー9人が殺害された事件で、メキシコ警察当局は容疑者を逮捕したと伝えた。

容疑者の氏名は未だ公表されていないが、ソノラ州の犯罪捜査局がFacebookに書き込んだ投稿によると、容疑者はメキシコのチワワ州のアグア・プリエタ山脈で逮捕された。容疑者は逮捕時に2人の人質を連れており、2人ともトラックの後部座席で手足を縛られ、猿ぐつわをされた状態で発見された。さらに警察は、防弾処置を施したSUVと複数の武器を現場で押収した。

3人の女性と6人の子供を含む被害者は、ソノラ州とチワワ州を車で移動中に襲撃された。3台の車両が襲撃を受け、そのうち1台は銃弾を受けて炎上した。8人の子供が生き延びた。そのうちの1人の10代の少女は、残る家族が道路脇の茂みに隠れている間、14マイルの道のりを歩いて助けを求めに行った。

被害者は全員レバロン家の一族で、一家はメキシコとアメリカの国境沿いに暮らしていたモルモン教原理主義者だった。この一派は1920年代、末日聖徒イエス・キリスト教会が正式に多重婚を禁止した後、袂を分かってメキシコに移り住んだ。全員ではないが、一部の信者は今でも多重婚を行っている。

襲撃の動機は今も明らかにされていない。メキシコ当局は声明の中で、容疑者はホアキン・“エル・チャポ”・グズマン率いるシナロア・カルテルの一味、ジャガーズが首謀者だと主張しているという。襲撃当時、一家はジャガーズの縄張りと思われる地区を通過していた。

メキシコのアルフォンソ・デュラーゾ保安相は声明を出し、車内にいた家族は「この地域のギャング抗争」に巻き込まれ、対抗するギャングのメンバーだと間違えられたために襲われた可能性があると述べた。アメリカ政府職員も、この地域のライバル組織ラ・リネアが襲撃に絡んでいた可能性があると述べていた。

だがレバロン家の親族は、一家が麻薬カルテルに反対する活動を行っていた経歴を挙げ、こうした公式見解を否定している。2009年、一家の1人ベンジャミン・レバロン氏はカルテルを相手に全国運動を展開し、数カ月前に地元の麻薬カルテルに誘拐された16歳の兄弟エリックを解放するよう圧力をかけていたが、後に義理の弟と共に殺害された。この事件の後一家は自己防衛のため武装したが、これがメキシコの法律に違反したとして、後にアメリカのマスコミで報道された。

偶然にもレバロン家は、オールバニーに拠点を置く“セックス集団”ネクセウムのメンバーの1人が制作した誘拐事件の顛末を描いたドキュメンタリーにも登場している。ネクセウムはメキシコの裕福な名士とも繋がりがあった。後にレバロン家の1人が組織のメンバー勧誘に使われているこのドキュメンタリーとの関係を否認している。

チワワ州の議員でもある親族の1人アレックス・レバロン氏は、メキシコのW Radioで事件について取材を受け、メキシコ政府の公式見解を否定した。「巻き込まれただけな訳がありません」と言って同氏はこう続けた。「人違いだったなんてありえない。これは単純明快、テロ行為です」

Translated by Akiko Kato

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