女性を支配し罰する「処女検査」の恐ろしい実態

アフガニスタンでは自殺者が出たケースも

処女検査で「不合格」となった場合、とんでもない罰則が科せられる場合もある。婚前性交渉が犯罪とみなされるアフガニスタンでは2018年まで、女性や少女が処女検査で不合格となった場合は最大3カ月投獄することが法律で認められていた。さらに過激なケースでは処女検査を落ちた若い女性が自殺したり、あるいは一家の面目を傷つけたとして家族から殺されることもあった。

処女検査の話は海外諸国の慣習に関するものがほとんどだが、T.I.の発言からも明らかなように、アメリカ以外で行われているものだと決めてかかるのは間違いだ。医師からは処女検査は反道徳的だと非難が挙がっているものの、マリ・クレール誌が2019年の調査で指摘しているように、連邦法にも州条例にも処女検査を禁じる法律は存在しない。全米産婦人科学会(ACOG)は、処女検査は医学的根拠がない上有効な医療措置ではないことを理由に、処女検査にまつわる公式ガイドラインを未だ発表していない。「“処女検査”なんてものは存在しません」と言うのは、ノースウェスタン大学の産婦人科准教授でACOGイリノイ支部の法務部長、モーラ・クインラン医学博士だ。ローリングストーン誌に応えてこう語った。「なんらかの医療検査で女性が処女かどうか証明できる、というのは単なる俗説です」

だがアメリカでも、かなり日常的に秘密裏に行われているようだ。2016年、288人の内科医を対象に行ったアンケートによると、回答者の10%が、親または家族から2本指の内診の実施を依頼されたと答えた。さらに34%が実際に実施したことがあると回答した(ただし、マリ・クレール誌の取材を受けた多くの内科医が、患者を危険にさらしたくないがために虚偽の結果を伝えたと答えた)。

処女検査の科学的根拠が疑わしく、かつ女性に無理やり屈辱的な行為を受けさせるのは明らかに非倫理的であるがゆえ、人権保護団体は全世界で処女検査を禁止するよう求めている。2018年、国連と世界保健機関(WHO)は共同で声明を発表し、「処女検査は少女や女性の人権侵害であり、女性や少女の身体的、精神的、社会的福利を脅かす可能性がある」として、全世界での処女検査撲滅を呼びかけた。にもかかわらず、体系的な法律やガイドラインが欠如し、検査を禁じる法律もない以上、女性の純潔に対する時代遅れで科学的根拠を欠いた信念の名の下に、T.I.のような男性が娘にああした辱めを受けさせることを禁じる術は皆無に等しい。

Translated by Akiko Kato

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