ファンクとは異なる、句読点のないアフロ・ビートの躍動感? 鳥居真道が徹底解剖

何がすごいって右手でシェーカーを振り、右足でキックのダブルを決め、左手でスネアをしばいて細かいゴーストノートを入れつつ、左足でハットの開閉をコントロールして演奏しているところです。この左足によるハットが特に凄い。俄には信じがたく、思わず友人のドラマーに「ハットって左足だけでこんな音を出せるものなの?」とLINEで質問してしまったほどです。というのも、左足のみでハットを演奏するというと、落ちサビなどで手持ち無沙汰になったドラマーがなんとなく「チッ、チッ、チッ、チッ」と鳴らす程度のものという先入観があり、「チー」という音価の長い音が出せるとは認識していなかったからです。友人は両手に持ったシンバルを合わせて「シャーン」と鳴らすのと同じ要領だよと解説してくれました。ハイハットの原型となったのは角度のついた2枚の板につがいのシンバルを取り付け、足元で踏んで演奏するソックシンバルと呼ばれる楽器で、元々はスティックで叩くものではありませんでした。そういう意味では左足のみで演奏することはオリジナルに近いといえるかもしれません。

スネアを叩く左手の動きはほとんどギターのカッティングのようです。動画で観ることのできるコリー・ウォンの柔らかい右手首とネイト・スミスの左手が対になったアングルはさしずめ脳みそへのご褒美といったところでしょうか。

ネイト・スミスの演奏は躍動感があって熱っぽいのだけれども、どこかメカっぽいところがあって、ディス・ヒートのチャールズ・ヘイワード的な端正でクールな面もあるように感じます。「The Baal Shem Tov」でシェーカーを振る動きなんてGIFアニメのループのようです。名人の演奏はホットで人間的な面とクールで機械的な面が同居しており、一概にどちらとは割り切ることができない。そんな印象を持っています。

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