ユアン・マクレガー、映画で演じたキャラクター・ランキング

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最新主演作『ドクター・スリープ』(『シャイニング』の続編)で、ユアン・マクレガーは大人になったダニー・トランスを演じている。いかれたカウボーイからイギー・ポップのようなグラム・ロッカー、ジェダイ・マスターからジーザスまで、幅広い役柄を演じてきたスコットランドの映画スター、ユアン・マクレガー。歴史に残る名演技から、いまいち作品まで出演作をランキング。

四半世紀の間に、ユアン・マクレガーは正真正銘の映画スターになったが、彼の世代だけでなく他の世代の中でも一番過小評価された俳優であることを自分の実力で証明している。マクレガーの演技の幅は広いが、彼の一貫した芸は抑制にある。マクレガーは変幻自在に役を演じることもなければ、大げさに演技をすることもない。好奇心に満ちた視線や穏やかな話し方、そして並外れたあらゆる表現方法で自分の映るわずかなフレームを利用しているだけだ。基本的には常に自分自身として存在している。それが真の映画スターの証だ。それでも、長年にわたって、マクレガーは、問題の多いヘロイン常習者からスキャンダルを追いかけるジャーナリスト、いかれたカウボーイからイギー・ポップをベースにしたグラム・ロッカー、ジェダイ・マスターからイエスまであらゆる役を演じてきた。すごい経歴である。

最新主演作『ドクター・スリープ』(『シャイニング』の続編)では、マクレガーは大人になったダニー・トランスを演じている。その公開を祝って、これまで彼が出演してきた映画での演技すべてを、最低なものから最高なものまでランキングにしてみた(いつものように、これは映画自体ではなく、演技のランキングだ。だから、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』が上位にランクされていることで我々を怒鳴りつけないでほしい)。


56位 『氷の接吻』(1999)

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この最下位の演技を見てほしい。マクレガーが演じる諜報員は連続殺人犯であり、アマチュアの占星術師でもある美しい女性(アシュレイ・ジャッド)のとりこになり、全国各地へと彼女の後を追いかける。そしてその各地で、彼女は次々に男とベッドを共にしては殺人を犯していく。面白いことに、彼女が犠牲者の命を奪うたびに、マクレガーは本当に唖然としているように見えることだ。一方で、数年前に行方不明になった7歳の娘の幻覚に取りつかれている。ばかげていて、ひねり過ぎのヒッチコックまがいのプロットは、キャストがバカバカしく演じていたら、うまくいったかもしれない。だが、悲しいことに彼らはそれを真面目に演じている。そして、マクレガーは、かなり極端なことが要求された役に対して、彼お決まりの落ち込んでいるお人よしの演技に変化をつけたことから、この作品の中で一番感情移入ができない役になっていた。本作でマクレガーは完全に自分を見失っているかのようだ。

55位 『ホンモノの気持ち』(2018)

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何度も繰り返されてきたような退屈な内容のこのSF映画で、マクレガーが演じる役は、本物の感情を感じることができる人造人間を設計した優秀な科学者だ。その目的は、恋愛交際を大量生産すること。彼の美しい同僚(レア・セドゥ)は彼に想いを寄せる。ただ残念なことに、彼女もレプリカントだった。この2人はほぼずっと画面に映っているが、するべき役割が驚くほどにほとんど与えられていない。特に何も手に入れることがなく、伝えるべき興味深いことや感情移入することも何もない。はっきり言って、マクレガーはもがいているだけで映画が終わっている。これは、素晴らしい俳優を可能な限り最悪の方法で誤用してしまった教科書的な例だ。

54位 『彼が二度愛したS』(2008)

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この作品もまたくだらないエロチックスリラーもどきの映画で、いい人を演じるユアンが怪しげなキャラクターに引っかかってしまう(まさに、アクセントはニュージャージーのものであるかようだ)。彼は企業の会計士で、ヒュー・ジャックマン演じる口先巧みな弁護士と出会い、企業のお偉方がセックスを目的に匿名で出会いの場に集まる秘密のネットワークを紹介される。そこでもちろん、我らのユアンは謎のデート相手(ミシェル・ウィリアムズ)に恋をしてしまうが、もちろん彼女は行方不明になり、ジャックマンも本人が言ったとおりの人間ではなかった。本作品は『ファイト・クラブ』と『アイズ ワイド シャット』を足したようなものだが、馬鹿げたものになっている。そして、いつもは抑制された演技をするマクレガーは、とんでもなく大げさに意気地なしの役を演じた。

53位 『ブルー・ジュース』(1995)

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英国コーンウォールに住むサーファー(ショーン・パートウィー)は、大人へと成長する中で、溺愛する自由奔放なガールフレンドのキャサリン・ゼタ=ジョーンズに身を捧げるか、もしくは“ビッグ・ウェーブ”に乗るために今以上にサーフィンに時間をかけるべきか悩んでいる(キャサリン・ゼタ=ジョーンズを選ぶのが当然なはずだが)。この主人公の友人として厄介なことを引き起こすどうしようもない若者を演じるマクレガーは、たくさんの活力以外のことはほとんど何もその役にはもたらしていない。彼の演じる男はワイルドだが、ほとんど混乱の種をまいているだけだ。ただし、脇役として自らの人生の酷さを嘆くシーンは素晴らしい。この役は野暮ったくかつ単純すぎる映画の野暮ったく単純すぎる。同時期に作られたドラッグで腐った怠け者たちの群像コメディドラマ『トレインスポッティング』でのマクレガーの役とは全く異なったものだ(このリストの上位を参照)。

52位 『荒野はつらいよ ~アリゾナより愛をこめて~』(2014)


マクレガーにとってありがたいことに、TVドラマ『ファミリー・ガイ』のセス・マクファーレンが監督した場違いすぎるこの西部劇コメディに登場するのは約2秒。セリフはたったの1行だけだ。彼は、映画全編にわたって登場する大勢の有名人のカメオのひとりとして、群衆の中のあるカウボーイを演じている。スコットランド訛りに気づくかもしれないが、口ひげとカウボーイの身なりだけではかろうじて本人だと気づけるぐらいであるため、セレブのカメオ出演の本質を妨げている(ちなみに、「俺にはわからない…彼が笑っていたかどうか」というセリフは良かった)。このリンク先の1分24秒経過したところの映像を見てほしい。そして、彼が自分の品格を損なわずにこの映画からどのようにして逃れたのかということに驚いてほしい。

51位 『Scenes of a Sexual Nature』(2006)

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短いエピソードから構成されるこの群像劇コメディは、ロンドンのハムステッドヒースでとある午後を過ごしている様々なカップルの会話から成り立っている。その会話はいささかセクシャルなものだ。マクレガーが演じるのはゲイの財務アドバイザー。ダグラス・ホッジ演じるレストランの評論家のパートナーとは公園の男性専用エリアでくつろぐのを好んでいる。だが、そのパートナーは近くの林の中でだれかれ構わずにセックスに勤しんでしまっている。優しくて遊びほうけている男と真面目な知識人の間の対比が説得力を持って生み出されている。だが、マクレガーはこの映画では演技をしているというより、セリフを読んでいるだけのように見える。彼はちゃんと話し合ったわけではなかったようだ。

Translated by Koh Riverfield

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