ユアン・マクレガー、映画で演じたキャラクター・ランキング

9位 『パーフェクト・センス』(2011)
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デイヴィッド・マッケンジー監督はこれまでにマクレガーと2本の映画を製作していて、彼のベストな活かし方についてしっかりと理解しているようだ。人間の感覚を徐々に奪う疫病が世界的に蔓延している中で、マクレガーは、ひどく苦しんでいる科学者(エヴァ・グリーン)に恋をする女たらしのシェフを演じている。この映画は非常に象徴的な危機を背景にした恋愛ものであり、この感染症が蔓延するごとに、人間は感情全体に過剰な負担をかけてしまう(例えば、臭覚を喪失すると悲嘆し、味覚を喪失すると恐怖にかられる)。この映画での課題は、映画の空想的な魅力を帳消しにしてしまうぐらいの大げさな演技はせずに、感情の爆発をどのように伝えるのがベストなのかということだ。中核となるラブストーリーが段取りを踏んで進む中、主人公の2人があらゆる感情を経験する姿を見てほしい。どうやって映画が成立しているのかがはっきりとわかるだろう。彼ら2人の相性も素晴らしい。マクレガーの他の作品で共演した恋愛相手には、必ずしも同じことは言えない。

8位 『猟人日記』(2003)
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ユアン・マクレガーがどれほど表情豊かであるかを忘れてしまうことがある。アレグザンダー・トロッキの小説を2003年にデヴィッド・マッケンジー監督が映画化した雰囲気のある本作品は、緊迫感を持って雄弁さを備えた印象的な静寂に満ちている。マクレガーは作家を志している魅惑的な甲板員を演じる。そして、ティルダ・スウィントン演じる石炭船の持ち主とは、ピーター・ミュラン演じるぶっきらぼうで素っ気ないその夫の目と鼻の先で、激しい情事を始めてしまう。それはねじれた三角関係になり、観客が期待するような形にはあまり発展しない。3人の主人公は全員完璧だが、実に際立っているのは、スウィントンとマクレガーの肉体関係を表現するシーンだ。喜びと絶望、情熱と疑念が交互に現れる。もちろん当時、マクレガーはスクリーン上で全裸になる傾向があることでは有名になっていた。彼のペニスがスクリーンに現れる頻度について冗談を言う人がいた。だが実は、演者としての大胆不敵さは彼にとって途方もなくプラスとなった(エミリー・モーティマーとの常軌を逸した暴力的な性行為を見てみてほしい)。『猟人日記』のような映画のおかげで、マクレガーは、当時の若い役者にひどく欠けていた本能のままの優雅さと無防備さを表現している。

7位 『フィリップ、きみを愛してる!』(2009)
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ユアン・マクレガーにとって、スクリーン上の恋愛相手として相性がこれまでで最高に良かった人物が、ジム・キャリーだったとはなんと皮肉なことなのだろう。この映画は実話に基づいた刑務所ものであり、恋愛ものでもあり、コメディ・ドラマでもある。そして、マクレガーが演じるのはブリーチしてブロンドになった男。『エース・ベンチュラ』のジム・キャリー演じる詐欺師を引きつける対象となる。マクレガーの役は刑務所に入ることになる少年から始まり、奔放な詐欺師の自分に対する執着の具合をよく理解していない。だが、2人の関係は深遠で甘ったるいものへと発展する。そして、マクレガーは、これまでの多くの映画と同様に、自分が共演者に対して寛大であることを証明している。この作品はキャリーの映画だ。しかし、映画の中核を作り上げる繊細で重要な仕事をしているのはマクレガーだ。キャリー演じる派手な役が次第に度を越して悪ふざけをする中で、マクレガーは穏やかに落ち着いている。彼は恋人であり、引き立て役であり、そして同時に“ストレートな男”――異性愛という意味ではなく、真面目という意味のストレート――でなくてはならない。

6位 『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)
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ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」のプリクエル3部作のラストとなるエピソード3で観客は気付くことがある。それは、この3部作がある意味で最初からオビ=ワン・ケノービの物語であったことだ。確かに、アナキン・スカイウォーカーは優れた才能のあるジェダイかもしれないが、最終的にはダークサイドに落ちていってしまった。だが、本当に感情に訴える強烈なものは、年長の騎士であるオビ=ワンが若い弟子のアナキンを正しい方向に導くことを失敗したことに気付くところだ。それまでの2作品では、オビ=ワンとしてのマクレガーの演技は素晴らしいが、いくぶんか周りから切り離されたものだった。彼はしばしば周りを忘れて彼自身の物語に没頭していた。ところが本作では、自分が輝くだけでなく、他の俳優をより良く見せようとしている。マクレガーが最後の戦いで放つ「お前は弟と思っていた、アナキン! 愛していた!」というセリフの言い方は、“はるか彼方の銀河全体のシネマティック・ユニバース”で最も衝撃的な瞬間だ。

5位 『恋は邪魔者』(2003)
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非常に完璧なキャスティングであるがゆえに、この作品には痛みがある。『夜を楽しく』のような1950年代のロマンティック・コメディを陽気に色鮮やかに再現したペイトン・リード監督によるこのパロディ映画は、文化における性差別を風刺に富んで脱構築的に解釈し、真の愛を見つけることを真面目に描いている。そのため、一度に何人ものペルソナを具現化できる俳優を必要とする。しかも、すべて同じ1人のキャラクターの中での具現化だ。マクレガーは話し上手で、きらめく笑顔を見せる女好きの男(もちろんジャーナリストだ!)を演じ、口説き落とした相手は女性について意味深い皮肉を漏らす。彼はまた、情熱的な男の主人公として自分にふさわしい場所を見つけるために、そして、ルネ・ゼルウィガー演じる独立心の強い主人公との真の愛を見つけるために、正しいと思えるあらゆる方法で変わらなければならない。マクレガーは、わざとらしさと誠実さ、うぬぼれ具合と好感度を適度に役に取り入れている。まじめな話、これをうまくやり通すことができる俳優がマクレガー以外の他にいるのだろうか?

4位 『シャロウ・グレイブ』(1994)
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『トレインスポッティング』でトップに躍り出る以前だが、ダニー・ボイルとマクレガーは、展開にひねりを効かせたスタイリッシュなスリラーの本作品でタッグを組んだ。ストーリーは、新しいルームメイトが出所の不審な大金が詰まったスーツケースを残して死んだのを機に、グラスゴーに住むヤッピーの3人が深みにはまっていく内容だ。マクレガーが演じるのは、楽しげに思い上がっていて、いたずら好きなジャーナリスト(またジャーナリスト役だ)であり、一般的には嫌なやつだ。しかし、茶目っ気のある笑顔でそれをすべてやっているので、当然、我々は彼が好きになる。バランスを取るのは見かけによらず難しい。すでに書いたように、このキャラは非常に迷惑かもしれない。だが、マクレガーが役に意外な人間らしさだけでなく、異常なほどの魅力をもたらすのは当然のことだ。そして、彼はこの映画にとって一番ヒーローに近い存在になる。彼の友人は欲望と妄想に圧倒されるが、ユアンのキャラクターは何らかの形で感情を抑えられる唯一の人物なのだ。

3位 『ベルベット・ゴールドマイン』(1998)
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「ミシガン州のアルミニウム・トレーラー・パーク」の産物、マクレガー演じるハードロックのきらめく神カート・ワイルドは、ジョナサン・リス=マイヤーズ演じる変形自在のデヴィッド・ボウイの代わりとして創作されたブライアン・スレイドにとって、シャーマン的な発想の源や恋愛対象、クリエイティブ面での引き立て役として役割を果たしている。マクレガーがこのような熱狂的で好色で傲慢的な役に真っ向から飛び込むのを見るのは最高だ。性差を曖昧にするグラムロックの時代をトッド・ヘインズが架空のストーリーとして描いている内容と実在の人物には類似がある。ワイルドはルー・リードとイギー・ポップを足して2で割ったような存在だ。それでも、トッド・ヘインズとマクレガーはワイルドにもっと多くのことを与えている。彼はロンドンの音楽シーンに荒々しくハードな鋭さをもたらすアーティストだ。また、アイデンティティーをリミックスして、作り直すという創造的かつ破壊的な力を描いた物語の中で、ワイルドは常に自分自身に忠実であり続ける数少ないキャラクターの1人でもある。

2位 『ユアン・マクレガー/荒野の誘惑』(2015)
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「何よりも神を愛するのだ……人生を愛するんだ」。このセリフが『トレインスポッティング』での「人生を選べ」というレントンのセリフをどの程度まで皮肉を込めて踏襲しているのかを自分で判断して構わない。ここでのマクレガーのイントネーションには、どこかなじみがある。そこには曖昧さがあることを理解できるだろう。というのも、砂漠を放浪する「神の子」についてロドリゴ・ガルシアが監督した胸が痛むほどに美しく深刻なこのドラマの中で、マクレガーがイエスと悪魔の両方を演じるからだ。その2人の演技を見せられるのに、なぜ1人だけの際立った演技を見せるのか? イエスとしては、マクレガーは父親と心を通わすことに苦労している男性を表現しなければならない。そして、悪魔としては、疑念や身勝手さをもってイエスを本気で誘惑しなければならない。悪魔の言葉は自分の内から生まれているのか、それとも外から来ているのか? それは自分の外にいる悪なのか、それともイエスの頭の中から聞こえてくる声なのか? これは、マクレガーが渡らなければならない非常に危なすぎる橋だ。過小評価されているこの映画の中で、彼が華麗かつ感動的に演技をしているということだけでも、その成果がいっそう印象的なものになっている。

1位 『トレインスポッティング』(1996)
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ユアン・マクレガーをスターにしたこの映画は今でも間違いなく楽しめる。また、華麗な役をたくさん演じてきた中でも最高の作品であり続けている。ダニー・ボイル監督が1996年にアーヴィン・ウエルシュのカルト小説を映画化したこの作品は、ぶっ飛んだスタイルとロックンロールな奔放さを持ち、スコットランドの貧民街でジャンキーのたむろしている強烈に愉快な世界感に観客をのめりこませてしまう力も持っている。そして、落ちこぼれたちにも魅力があるということだけでなく、消費世界のシュールな脅威も伝えている。しかし、ボイルが作り出す映画の中のあらゆる騒動の中で、マクレガーの演じる役がこの作品全体の鍵だ。主人公でありナレーターであるマーク・レントンは正常な世界をひどくあざ笑ったかと思うと、そのあとには皮肉なことにその正常な世界を受け入れてしまう。我々がこの物語の旅に感動をするのは、彼の誠実さや無邪気さ、自分を身ぎれいにしたい思いと完全に自分を見失いたいという狭間であまりにも人間的な気持ちの揺れ動きを見せるレントンのことが大好きだからだ(実際、「人生を選べ」というくだりのセリフは、そのすべてを一挙にカバーしている)。考えてみれば、この映画にはほとんどストーリーがない。全体的にばらばらのエピソードが連なっている。それを繋げ合わせる接着剤的な役割を果たすのが、マクレガーのとてつもなくカリスマ的な演技だ。“象徴的“という言葉は、少し漫然と口にされすぎているが、この作品のマクレガーには紛れもなく当てはまる。

Translated by Koh Riverfield

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