『スター・ウォーズ』シリーズ最終章の監督J.J.エイブラムスが語る「挑戦と敬意」

―『スター・ウォーズ』はニクソンの退陣やベトナム戦争の終結から数年後に公開され、ルーカスの同世代の仲間が作った悲観的な映画とはかなり対照的なものでした。今回の新しい3部作もやはり現代の混沌とした時代に公開しています。

確かに政治的には類似点が見られるけど、映画の鑑賞という視点で言えば、全く異なる状況だと思う。でも、真実や希望に満ちたものを同時に伝える作品にとって、今は悪い時期なのかどうかはわからないね。

―最初の作品に見られた喜びと変わらない雰囲気で終わる必要があるのでしょうか?

ちなみに、みんなは旅をする価値のようなもの、ハッピーエンドや悲しい結末に関係なく満足感を得られるようなものがあってほしいと思っているはずなんだ。課題は、一貫性を持たせる方法を見つけ、今までの内容を尊重すると同時に、予想外のことをすることだった。それは作品に必要不可欠なものであり、また今日という現代に関連するようなものでなければならなかった。そして、例えば、綱渡りをしている時に、「踊りたい」と思うもの、そこに楽しみを感じたいと思えるものであってほしい。まるでカミソリの鋭い刃の上にいるようなものだね。

―以前、今では有名になりましたTED TALKでスピーチをされましたが、そこで、おじいさんから頂いた謎の箱をいまだに開けていないという話に基づいて、ストーリーをミステリー・ボックスとして語りました。それは、自分の手元にあるカードを全て見せなくてはならないエンディングを持つ映画とどのようにマッチするのでしょうか?

その話が原動力ということでは、まったくないんだ。「ミステリー・ボックス作戦を今回のストーリーでどうやって使うべきか」と積極的に考えているわけではないんだ。僕が言いたかったことは、いいストーリーというのは、何が起きているか、どうしてそうなるのか、どんな心情なのか、といったことを知りたいと思わせるものだということ。それから、僕がTED TALKで何を話せばいいのか考えていたところに、「君が持っているあの箱のことを話してみれば」と言ってくれたのが、友人であり、優秀なプロデューサーのブライアン・パークなんだ。

―それで、いろんなことが物語の中でかなり誇張されたのですか?

実は、僕はそのことを全く考えたことはない。だから、誰かがそのことを話題にしたら必ず、僕は「ああ、そう、そのことね」と言ったりしている。素晴らしいストーリーには疑問が湧くことはないと今でも思っているわけでないよ。でも、エンディングは、その名が示す通り、結論的になるべきなんだ。僕は、今から100年後に子供たちがこの9本の映画を見ているのをよく想像するんだ。だからこそ、必然性と一貫性の感覚が必要なんだよね。繰り返すけど、もし観客が楽しんでいない場合、少なくとも楽しもうとしていない場合、絶望的だ。だから、映画には、クレイジーかもしれないものもあると思う。その中には、僕のお気に入りもある。そして、それ次第で、人々に受け入れられるかどうか決まるんだ。

―レイには大きなファン層がありますが、そのキャラクターの背景にある元のアイデアは何でしたか?

アイデアは、ある若い女性の物語を伝えることだったんだ。その女性は本質的にパワフルで、本質的に道徳的で、本質的に優しいけれども、それだけではなく、世界の中で自分の居場所に苦しみ、あらゆる方法を使って自力で生きていかなくてはならないキャラクターなんだ。『スター・ウォーズ』の世界観で楽しめる仕事のチャンスを得た時と同じくらいエキサイティングなことは、私が“知りたい”という不思議な衝動に駆られたこの若い女性の存在なんだ。キャスリーン・ケネディとの最初の会議でさえも、物語の中心に女性を置くというアイディアは浮かんだ。「若いヒーローの物語はこれまでに見てきた」という考えは避けられない。でも、レイのような女性の目を通して物語を見たことはなかったので、それは僕にとって1番エキサイティングなことだったね。

―『フォースの覚醒』に対する批判の1つには、最初の3部作の要素に忠実になぞっているということがありますが、それがある意味では狙いのようなことだったでしょうか?

その批判をしっかりと受け入れるよ。重複しすぎていると思った人には、「君の話をしっかりと聞き、その評価を尊重する」と言いたい。でも、狙いは物語を進めて、ルーク・スカイウォーカーの存在は神話だと思っている若い女性から始めることだった。さらに、歴史が繰り返されるだけの物語ではなく、僕らの知っている過去の映画を歴史として内包した物語を語ることなんだ。だから、僕らの映画のキャラクターは、今でも善と悪が対立している場所に住んでいて、過去に起きたことの陰に怯えながら暮らしているし、父や先人たちの罪にいまだに立ち向かっているんだ。これは郷愁を誘う内容ではない。僕には、次のような言い方できると思った。「僕らが知っているスターウォーズに戻ろう。そうすれば、新たな話を語ることができる」と。

Translated by Koh Riverfield

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE