急成長を遂げるTikTokの脅威、音楽配信サービスが直面する問題とは?

ロンドン発アーティスト、Ashnikko(アシュニコ)の「STUPID」はSpotifyのグローバル・バイラル50チャートのトップに躍り出る前から、すでにTikTokで話題になっていた。 Richard Nicholson/Shutterstock

音楽の領域を超えて急成長を続けるTikTokをSpotifyなどの音楽配信サービスは警戒するべきなのだろうか?

緑の服の人、死んじゃったの? 確認してみよう。先日、TikTokに投稿され、ネット上であっという間に広がったこの動画を観て、思わずクスッと笑ってしまわないかどうかチェックしてほしい。



動画のリンクをクリックしなかった疑い深いタイプの人のために説明しておこう。動画では、恐竜のコスチュームに身を包んだ人間が次々と一般市民を恐怖のどん底に突き落としている。まあ、使い古されたネタだけど、結構笑える。

では、音楽業界を支配するSpotifyの覇権を脅かすTikTokにフォーカスした今回のビジネスコラムでなぜこんな動画を紹介するのかって? まずは、読者を明るい気分にしてくれると思ったから。でもそれだけじゃない。今回のコラムは、これからお伝えする注意事項を念頭に入れた上で読んでほしい、ということをこの動画が適切に表現しているからだ。その注意事項というのは、もっとも高い人気を誇るTikTokインフルエンサーがリップシンク(口パク)であれ、ダンスであれ、アピールの重要な要素として実際に音楽を使っているなか、最近のTikTokの投稿内容が必ずしも音楽に限定されていない、ということだ。

11月中旬、モバイル活動をモニタリングするサイトSensor Towerは、TikTokがいまや世界中で15億件以上ダウンロードされたことを発表した。スマートフォンのアクティブユーザー数が世界中でわずか33億人という推測を踏まえると、TikTokのダウンロード件数は目を見張るような数値だ。それに加え、TikTokの親会社であるByteDance社がリップシンクアプリMusical.lyを約8億ドルで買収したのに続いて2017年に同アプリがスタートしたことを考えると、これはなかなかの偉業である。

その一方、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)はByteDance社が開始予定のオンデマンド式音楽配信サービス(ローリングストーン誌が10月の記事でも取り上げたように、同サービスはSpotifyの新ライバルでもある)の詳細を同じ週に詳しく報じた。FTによると、TikTokの姉妹品である同サービスは、はやくて2019年12月からインド、ブラジル、インドネシアという3つの新興市場でスタートする予定だ。これに続いて米国でのローンチも控えている。同サービスはSpotifyやApple Musicなどとの差別化を図っており、短い動画の使用はもちろん、「シェアとバイラリティー(ネットなどで瞬く間に人気になること)の推進」に焦点を当てるもようだ。

少なくともSpotifyの上級管理職のひとりはこの新作アプリをすでにチェック、あるいはスクリーンショットをいくつか見ており、驚きを隠さなかった。Spotifyのバリー・マッカーシーCFOは、ByteDance社の新アプリには「かなり気の利いたソーシャル機能がいくつかある」と11月22日に米ニューヨーク州で行われたRBCキャピタルマーケッツ・カンファレンスの際に発言した。

ここでは、Spotifyが近いうちにTikTokとByteDance社の新しい音楽アプリについていまよりも深刻な口調で語ることになるかもしれない理由をいくつか紹介しよう。

Translated by Shoko Natori

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