急成長を遂げるTikTokの脅威、音楽配信サービスが直面する問題とは?

2. TikTokと新しい音楽との出会い

ここ数カ月でSpotifyが掲げる将来的発展のビジョンが明確になってきた。同社の計画のひとつはシンプルにポッドキャストであると同時に、コンテンツの総コストを減らしながらもいかにして広告収入をアップさせるか、というものだ。だがSpotifyは、ユーザーと新しい音楽の出会いと、エクCEOがかつて豪語したように、音楽配信業界最大手として「需要曲線を支配」するにはどうしたらいいか、という同社の戦略において欠かせない課題も抱えている。

AppleやAmazonに対するSpotifyの市場リーダーとしての立ち位置を強調するため、同社のポール・ヴォーゲルCFOは先週「(売れるための)ルールその1、まずはSpotifyでブレイクすること」と自慢げに語った。これに対し、ByteDance社は異を唱えるかもしれない。

リル・ナズ・Xの「Old Town Road」、ブランコ・ブラウンの「The Git Up」、Regardの「Ride It」などのグローバルヒットの推進力となったのに加え、TikTokはここ数カ月間で人気に火がついたロンドン発アーティスト、Ashnikko(アシュニコ)の「STUPID」などの楽曲のブレイクの火付け役となってきた。アシュニコの「STUPID」は最終的にはSpotifyで2600万回再生され、同社のグローバル・バイラル50チャートの1位を獲得した。TikTokが楽曲の人気の火付け役となり、それがSpotifyのプレイリストに反映されるという図式は、短い目で見れば、Spotifyにとってグッドニュースだ。だがこれは、TikTokという新ライバルの出現に際し、Spotifyが新しい音楽の「需要曲線」を支配する力を失っている裏づけでもある。

ここでFTが取り上げた、「シェアとバイラリティーの推進」を目的としたByteDance社の新しい音楽アプリのことを思い出してほしい。これは、昨今のエンターテイメントのトレンドに多大なるインパクトを与えてきたTikTokが過去の教訓を聞き入れたことを示唆している。

3. (Facebookいはく)TikTokは音楽の未来である

Facebookの音楽開発&パートナーシップ部門のトップを務めるタマラ・ハービナック氏は、非常に聡明な管理職だ。今月初頭に米ニューヨーク州のペーリー・メディアセンターで行われたイベントで、ローリングストーン誌の11月18日の記事でも取り上げたように、ハービナック氏はデジタルメディアの未来が「動画ファーストであり、インタラクティブなものになる」と予測した。さらに同氏は、「Facebookが音楽と一緒にそのような未来をつくるのは、極めて理にかなったこと」と発言した。

毎月24億7000万人ものアクティブユーザーを抱えるFacebookが未来の音楽ビジネスを形作るうえで極めて重要な役割を担っていることは疑いようもない。だが、ハービナック氏の発言によれば、TikTokも同様にそのような役割を担っているのだ。

今日までのTikTok人気の推進力は、新しい音楽に出会うワクワク感とインタラクティビティ(双方向性)、参加、コミュニティに拠るところが大きかった。Spotifyのライバルとなる新しい音楽アプリでも、ByteDance社はこれらの優れた組み合わせが実現するよう、着々と準備を進めているもようだ。

さらに、ByteDance社がインタラクティビティなどの要素を実現したいと考えているさらなる証拠も出てきた。タイの英語日刊紙バンコック・ポストが現地時間11月21日に報じたところによると、TikTokは地元のライブイベントのプロモーションのみならず、事業を拡大してタイのファンに直接ライブのチケットを売りはじめたのだ。

来るByteDance社の音楽アプリの機能を見た音楽業界のとある上級管理職は先日、筆者にこのようなことを言っていた。「ストリーミング2.0と言えるほどのまったく新しいアプリではありませんが、ストリーミング1.5と表現できるほど斬新なものではあります。ByteDance社の戦略がうまく運べば、Spotifyのサブスクリプションをキャンセルして別のサービスに切り替えるユーザーが出てくるかもしれない、という印象を初めて抱きました」

Translated by Shoko Natori

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE