宇川直宏らが語る「5G時代の渋谷のあり方」

「未来にも過去の方向にも向かって入って行ける空間がある」

繁田:可能ですね。あとは、基本的には時空を越えるっていうのは、やっていかないといけなくて。未来にも過去の方向にも向かって入って行ける空間っていうのがあるんですよ。

宇川:ある伝説のライブを体験できるっていうこともできますね。『ボヘミアン・ラプソディー』では、フレディ・マーキュリーのそっくりさんとか当時の現場で 鳴っていた音をテクノロジーで具現化していったんだけど、そうじゃなくてドキュメンタリーとしてそれを具現化できるっていうことですよね。すごくない? 空間情報を収録できて、リアルに転送もできるんだよ。空間情報をリアルタイムで反転もできるし共有もできるし、アーカイブ化もできるっていうことですよね。例えば、クラブの体験軸で何を5Gとしてできるかというと、クラブってエンターテインメントと思ってるじゃないですか。そうじゃなくて、生物学的な意味での体験としてクラブをどう感じたのかをどう共有できるのかっていうことなんですよね。

Yako:クラブの体験ってすごい非現実的で特殊な状況なんですよ。で、音楽に没入した時の照明とかを、いかに体験の情報として転換していくのかって思うんですけど。

繁田:自分が思っていることがVJにシンクロするようになるとか、脳内的に何か上がっていくような効果をレイテンシーなくできるようになる。VJがデリバーする情報とそれに対して自分が合わせていく、つまり自分の心拍数とかオーディエンスサイドとシンクロしてよりアップデートされる。オーディエンスの動きっていうのも画像解析をつけるとか、顔のセンサーで脈拍を診ていくインタラクティブを強めて、さらなる高揚感ができていくのかなって。それをデータ化してしまえば再現もできるし。

井口:さっき宇川さんが仰っていた何の拡張なのかっていう話もあるんですけど、ANAアバターっていうのはAIと対抗してるんですって。要するに人間の拡張であるから、AIじゃなくて人間の感覚をどれだけ体験として広げていく可能性があるっていうことで面白いなと思ったんです。AIと技術って科学者の間で大きく分かれていっている。

宇川:そうですね。五感の拡張として捉えるのなら、空間情報を全身で受け止めないといけないと思うんですよね。例えばリズムを刻んでいる自分っていうのは、この空間にある何かを五感で感じているわけじゃん。で、5Gの時代になると、例えばビヨンセがリカルド・ヴィラロボスのプレイを聴いて、どう感じて踊ったのかを世界にリアルタイムで拡散することができる。ディープ・ミニマルを聴いたビヨンセがどう躍動を感じているのかっていうのを寝ながらにして体感できる時代なんだよ。

繁田:それができたら、脳で感じているものを身体で再現できる。感動を身体に伝えることができてしまうわけですよね。

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