ブリング・ミー・ザ・ホライズンが『デススト』で得た「世界を変えていくためのヒント」

ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Photo by Kana Tarumi)

2019年11月にBABYMETALのツアーにゲスト出演するために来日を果たしたブリング・ミー・ザ・ホライズン。大阪での単独公演も含めて日本のリスナーの熱狂を生み出した彼らに、この5年で飛躍的な進化を果たした要因と、ゲーム、ファッション、アニメとも接続しながらその音楽を拡張し続ける理由についてインタビューする機会に恵まれた。

ジョーダン・フィッシュが加入してソングライティングが変化し、エレクトロニックな要素とメロディを導入することで、ブルータルな要素とオリヴァー・サイクスのリリカルな歌のコントラストが異形かつドラマティックな楽曲に直結した『Sempiternal』。ヘヴィネスよりも、歌と楽曲のダイナミクスと起伏豊かな楽曲展開に重心を置き、そのサウンドの変化に伴って手に入れた伸びやかなメロディで世界のアリーナを掌握するスケール感を鳴らした『That’s The Spirit』。そしてラップミュージック隆盛以降とも言えるリズムと、ミドルレンジを丁寧にトリートメントしたサウンドデザインを消化し、あくまで「個のエモーションを解放する」というロックバンドの本質を維持しながらポップミュージックとしても隙のない刷新を果たした『amo』。ブリング・ミー・ザ・ホライズンはアルバムごとに音楽性を変化させながら、意識的に従来のロックバンドの定型を突き破ってきたバンドだ。メタルコア/デスコアの急先鋒としてシーンに登場した初期だって、たとえばそのブレイクダウンひとつとっても、タイミングや音色が一切セオリーに沿っていない曲ばかりだった。オリヴァーの歌に宿る鬱屈や痛みを解き放つためだった歌はいつしかユース世代の祈りの在処になり、そこに集う世界への絶望や苦しみを真っ向から引き受けることで、楽曲のスケールと「今ここにしかないもの」を生み出すことへの執念を増してきたのが彼らだとも言えるだろう。

そして今回ドロップされた新曲「Ludens」。ハイパーな要素とインダストリアルなサウンドが溶け合い、トラップ以降とも言える、ハーフで跳べるリズムを軸にして、初期を思わせるドラマティックなブレイクダウンがフィジカルな高揚を爆発させていく1曲だ。



これは小島秀夫監督が手掛けたゲーム『Death Stranding』のサウンドトラックに書き下ろされたものだが、『メタルギアソリッド』シリーズからの根強いファンベースがあった上で、初めて小島秀夫監督の名義でリリースされる作品として世界的に待望されていたのが同作である。



オープンワールドの形式をとり、人間が精神的にも物理的にも断絶を深めた世界を描く「ファンタジーというリアル」がそのままメッセージになっているゲーム。世界中のエクストリームなカルチャーと音楽を喰らい尽くしてきたブリング・ミー・ザ・ホライズンがこのゲームに共鳴したのはなぜなのか。そして、ロックのシーン自体が前時代的なものと捉えられる世界的な状況の中で、今彼らがロックバンドとしてこれだけの支持を得ているのはなぜなのか。その最新形を通して、今ロックバンドがサヴァイヴしていくためのヒントと、ブリング・ミーの本質を語り尽くすテキストになった。

ー『That’s The Spirit』から『amo』の過程で、現行のポップミュージックに接近する歌とサウンドデザインを獲得して、活動も地球規模のスケールに広がりましたよね。そして今回はゲーム『Death Stranding』とのコラボレートで新曲「Ludens」がドロップされましたが、様々なカルチャーを越境していった上で小島秀夫監督の『Death Stranding』とコラボレートしたのは、ご自身のどういう部分が共鳴すると思ったからだったんですか。

マット・ニコルス(Dr):元々ゲームは好きだし、『メタルギアソリッド』をはじめとして小島秀夫さんの作品が大好きだったんだよね。日本のゲームのクオリティは昔から非常に高いけど、その中でも注目されているクリエイターだから、『Death Stranding』が待望されているのも知っていたんだ。だから、今回の話をもらったのはまたとないチャンスだったんだよね。ただ、僕らは当時ヨーロッパツアー中で、かなりタイトな状況だったんだ(笑)。その中で作ったのが「Ludens」なんだよね。

ー大規模なツアーも回っていましたし、かなり多忙だったと想像します。

マット・キーン(Ba):そうそう。たしかヨーロッパツアーでイタリアのボローニャにいた時だったかな? 5日間で曲を仕上げなければいけないスケジュールで、しかも曲の形もゼロの状態でさ。ボローニャのスタジオでドラムとベースのリズムトラックを録音して、リー(・マリア/Gt)はその場にいなかったから、そのリズムトラックを聴いてギターを録音して送ってもらったんだ。そこから、オリヴァーとジョーダンにトラックを送って。そういう作業をしながら、ツアーの真っ最中に仕上げていったね。

リー・マリア(Gt):小島さんのゲームに期待しているファンが世界中に多いのもわかっていたからね。タイトな中でもやりがいを感じて、楽しんでやれたと思う。世界に僕らの音楽を改めて届ける機会だと思ったんだよ。


リー・マリア(Photo by Kana Tarumi)

ーその瞬発力で作られたとは思えない曲ですよね。インダストリアルなサウンドに、ラップミュージック隆盛以降のハーフで飛べるリズム。そこからシームレスに雪崩れ込むブレイクダウンも、感情の沸点を落とす形で表現する今のポップミュージック構造をロックバンドにしか表せない形で改めて示していると思っていて。

リー:自分たちとしても、やりたいことと、自分たちの個性をちゃんと入れられた曲だと思う。それが今のところ好評だし、とても嬉しいよ。自分たちでも最高の曲ができたと思ってる。

Translated by Yuriko Banno

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