「僕らはシーンにすら属せていないんだよ。なぜなら、もうロックのシーンがないんだから」ー端から、単なるメタルコアでもデスコアでもなく、世界中のエクストリームな音楽性を喰らい尽くしていく巨大な生命体のようなバンドだと捉えてブリング・ミー・ザ・ホライズンの音楽を聴いてきたんですね。2000年代EMOのファッションカルチャーとも接続して、ゲームのように物語性のある音楽を構築して、個を解き放つ叫びと衝動性も追求されてきた。そのスタンスがさらに世界規模になってきているのが今だと思うんですね。世界に点在するカルチャーを喰っていくのは、その先に何を見ていて、今の自分たちはどういう時期にいると思うからなんですか。ジョーダン:今も自分たちが変化して進化し続けられていることは自覚しているし、それはまさに、広い規模で活動していくための音楽と作品がもたらしてくれたものなんだ。その中であらゆるカルチャー、世界中にある独自の面白さとどんどんコラボレートしていくことが、僕たちの進化のために一番大事なことなんだよね。ロックバンドとして進んでいくためにも、音楽をやっていくためにも、それを取り巻くものと接続していかなければ進化はできない。同じところに止まっていることなんて、面白くないだろ?
オリヴァー:そもそも、2019年にこうしてロックバンドをやっていること自体がとても厳しくてタフな状況なわけだよね。それはさっきも話してくれたように、音楽的にもメッセージ的にもロックが定型化してしまった今の状況で、僕たちがロックバンドとしてやらなければならないのは、従来の型に止まらないっていうことなんだ。既に名が売れている超大物バンドならいくらでもツアーを回れるし、そのままやっていくことは可能かもしれないけどね。
ーただ、それだけではロックそのものがコンサバ化してしまうだけですからね。オリヴァー:そう。その中で若いバンドがやっていくためには、世界の動向にもしっかりと反応しなければならない。かたやラップミュージックは毎日のようにSoundCloudに曲がアップされて、エキサイティングなものが生まれ続けているよね。その物理的なスピードに対しても、個々が自由に自分を表現できる環境に対しても、そしてロックバンドでありながらも今のポップミュージックを吸収していくことに対しても、貪欲であらねばならないと思ってるんだよね。その意識はどんどん強まっていると思う。かつてはロックバンドが世界を制覇していたはずなのに、いつしかロックは自分を自由に表現できるものではなくなってしまった。それを打破していくためにも、自分たちだけで道を切り開いていく覚悟と、従来の価値観にとらわれず自分たちのやりたいことを貫くことが大事なんだよね。
Photo by Kana Tarumiーそれこそロックバンドの音楽的な型は90年代に一度完成してしまったと言われているし、それをどう刷新していくのかは、90年代の音楽をリアルに体感してきた世代として託されている部分ですよね。音楽の視聴環境の変化にしても、ロックという音楽の定義にしても、ロールモデルは一度なくなったという認識が必要で。ジョーダン:そうだね。今は、そのロックのシーン自体がなくなってしまった状態だと思うんだよ。ならば、なおさら自由にやっていくことが必要だと思うんだよね。どのフェスに出るかの判断ひとつをとってもそうだし、「あいつらがやったことを俺たちもやってみよう」という発想自体がもう存在しないんだよね。
ーその認識が、ブルータルなハードコアから始まりながらも世界中の音楽とカルチャーを喰らい尽くしていく自由さに繋がっているんですか。オリヴァー:そう。ここからは、自分たちのやることすべてが前例のないことだっていう意識でやっていくべきだ。今のラップミュージックの若手なら、新曲をネットにアップして流れに乗ればいい。だけど僕らには、そういうセーフティネットすらないんだよね。僕らはシーンにすら属せていないんだよ。なぜなら、もうロックのシーンがないんだから。そのシビアな認識があるからこそ自由になれるし、クールなものを消化して、自分たちの幅を広げていくことができる。当然、前例のないことをやれるのは大変だしタフだけど、だからこそ楽しいしやりがいがあるんだよね。自分たち自身はロックバンドと呼ばれようが、未だにデスコアと言われようが、構わない。もちろんポップミュージックとして受け入れられていくのも喜ばしいことだよ。それはつまり、自分たちだけでトライしてきたことがちゃんと伝わっているということだから。ひたすら自分たちだけで道を切り開いていくこと、それこそが自分たちのやるべきことだと思っているよ。そのために世界中であらゆるものを吸収して、人とつながっていきたいんだ。
ーこれだけエクストリームな音楽でありながら、それと同時にサウンドとしても楽曲の構造としてもポップミュージックの芯を食っていることの素晴らしさ。それは十分に伝わっていると思います。また進化した姿でお話を伺える次の機会を楽しみにしてます。オリヴァー:ありがとう。僕らも日本を十分エンジョイしようと思うし、また戻ってこられる日を楽しみにしているよ。
Songs for PlayStation selected by Bring Me The HorizonHideo Kojima Select・小島秀夫監督からのスペシャルコメント『DEATH STRANDING』のテーマは「繋がり」です。分断された世界を、点と点を繋いでいくゲームです。目的の地点に到達するためには、ユーザーがどのようなルートを通ってもいい、オープンワールド特有の大きな自由度があります。本作の主人公であるサム・ポーター・ブリッジズは、その広大なオープンワールドをたった一人で配送し続け、疲労したり負傷したり、時にはバランスを崩して転倒することもあります。
プレイヤー(サム)は厳しい自然の中で過酷な配送をしてきているので、プライベートルームではリラックスし、回復してもらうことができます。そのプライベートルーム内のミュージックプレイヤーでは、音楽を楽しむこともでき、このBring Me the Horizonの「Ludens」もお聴きいただけます。
「Ludens」はコジマプロダクションのシンボルキャラクターでもあります。オランダの歴史学者ホイジンガが提唱した「人間の活動本質は遊びであり、それこそが文化を生み出す」というホモ・ルーデンスの概念に共感し、最先端のテクノロジーを使い、未知なる所に遊びを届けに行くというプロダクションのコンセプトが込められています。
Bring Me The Horizonが彼らの解釈でゲームを彩る新しい楽曲を産み出してくれたことに感謝します。
by Hideo Kojima