史上最高の「クリスマス・アルバム」トップ25

15位 ジョニー・キャッシュ『Christmas With Johnny Cash』(2003年)

ジョニー・キャッシュはキャリアを通じてクリスマス・アルバムのレコーディングに取り組み続けた。2003年にキャッシュが他界すると、ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)の子会社のひとつであるレガシー・レコーディングは、1962年から1980年にかけての至極の作品を厳選して発売。キャッシュは「神の神子は今宵しも」や「天には栄え」などの楽曲には深みを与える一方、贖罪的なパワーを持つ楽曲には無骨な誠実さを添えている。キャッシュの最高傑作はどれも胸が張り裂けるようなストレートな歌詞/詩であり、愛、コミュニティ、チャリティにまつわる教訓を与えてくれる。甘やかされたアメリカ国民は、ひとり残らず「Christmas as We Knew It」を聴いてほしい。アメリカ南部のアーカンソー州の田舎に暮らすキャッシュの貧しい家族が手に入れられるものではなく、与えられるものに感謝している歌なのだ。



14位 『A Very Special Christmas』(1987年)

レコード業界の巨匠、ジミー・アイオヴィンの呼びかけによって実現した、1987年のスペシャルオリンピックス(訳注:知的障害のある人々にスポーツのトレーニングをする機会と競技会を提供する国際的活動)のために制作されたコンピレーションアルバム。R&Bのスウィング感が見事なU2の「Christmas Baby, Please Come Home」のカバー、ブルース・スプリングスティーンのならではのリラックス感あふれるしゃがれ声が魅力のライヴ版「Merry Christmas Baby」、プリテンダーズによる感動的な「Have Yourself a Merry Little Christmas」のカバー、ジョン・メレンキャンプによるロックな「I Saw Mommy Kissing Santa Claus」など、1980年代屈指のクリスマス・ソングを集めたアイオヴィンの影響力をここで改めて語る必要はないだろう。『A Very Special Christmas』のハイライトは、Run-DMCの名曲「Christmas in Hollis」だ。シンガーソングライターのクラレンス・カーターの「Back Door Santa」をサンプリングし、さらには誰もが見習いたいくらいかっこいい「マイクを持つ俺の名前はD.M.C./雪だるまみたいいイケてて、クールだ」という声明文がフィーチャーされている。



13位 フランク・シナトラ『A Jolly Christmas From Frank Sinatra』(1957年)

エルヴィス・プレスリーの大ヒットクリスマス・アルバムと同じ1957年に発売されたフランク・シナトラ初のクリスマス・アルバムは、プレスリーの控えめながらも過激な勢いをはらんだアルバムと比較すると、保守的でパーソナルな作品だ。アイゼンハワー大統領時代のアメリカの真髄がきれいにラッピングされ、赤と白のリボンをかけられているような作品なのだ。同作は、シナトラの全盛期にレコーディングされた4作目のアルバムで、シルクハットのつばに全世界をのせながらも楽々と歌っているように聴こえる。時々アレンジやバックコーラスが気になるけど、「クリスマスをわが家で」や「Have Yourself A Merry Little Christmas」などのノスタルジックな楽曲を歌うシナトラは、クリスマスの魔法をかけているようだ。



12位 ザ・ベンチャーズ『ザ・ベンチャーズ・クリスマス・アルバム』(1965年)

サーフ・ミュージックとロックを組み合わせたクリスマス・ソングをジングル・ベルやそのほかの装飾物で唐突にバージョンアップさせた『ザ・ベンチャーズ・クリスマス・アルバム』は、言うならばビーチでの列車事故のような作品。でも、実際にはかなりいいアルバムだ。ザ・ベンチャーズは、クレバーで豊かなロックンロールを通じて誰もが予想できる安心のプレイリストをつくってくれた。ホットな「赤鼻のトナカイ」のカバーにはじまり、ビートルズのことをほのめかした「I Feel Fine」、テキーラのワンショットが効いた「フロスティ・ザ・スノウマン」、オリジナルバージョンの「Walk Don’t Run」、さらには「Sleigh Bells」へと続く。ザ・ベンチャーズが開発したスタイルと無造作な威厳は永遠だ。悲しげに叫ぶ「Sleigh Bells」には、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのような祝福された美しさがある。



11位 ウィリー・ネルソン『Pretty Paper』(1979年)

まだウィリー・ネルソンがシンガーソングライター志望だった1963年、ネルソンは優しくもアイロニーに満ちた「Pretty Paper」を作曲し、ロイ・オービソンによって大ヒットした。それから16年後、ネルソン本人による「Pretty Paper」は、ネルソン初の伝統的なクリスマス・ミュージック・アルバムの前身となった。名曲をカバーした1978年の名盤『スターダスト』同様、『Pretty Paper』を支えているのはネルソンのゆったりとした声とさらに心地よさと洗練さを増した優しいギターワークだ。親戚が帰ったあと、やっとお気に入りの椅子に座ってオールド・オーバーホルトのウイスキーをちびちびやりながら無音でアメフトの試合を観る時にかけたい1枚だ。アルバムの最後を飾るインストゥルメンタル版「Christmas Blues」を聴きながら寝落ちしても、大晦日まで眠り続けることができればラッキーだ。



Translated by Shoko Natori

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