J-POPの歴史「1982年と1983年、70年代のムードを断ち切った転換点」

1983年7月15日にはファミリーコンピューターが発売された (Photo Illustration by Guillaume Payen/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

音楽評論家・田家秀樹がDJを務め、FM COCOLOにて毎週月曜日21時より1時間に渡り放送されているラジオ番組「J-POP LEGEND FORUM」。

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2019年12月は「80年代ノート」というテーマで、1980年から89年までの10年間を毎週2年ごと語るスペシャルマンス。様々な音楽が生まれていった80年代に何があったのかを語った本特集を、5週にわたり記事にまとめてお届け。第2回目となる今回は、「70年代は終わった」ということがはっきり感じられる時代の転換ポイント、1982年と1983年。

サザンオールスターズ / Ya Ya ~あの時代を忘れない~

こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人、田家秀樹です。今流れているのは、サザンオールスターズ「Ya Ya (あの時代(とき)を忘れない)」。1982年10月のシングルです。70年代に蒔かれたいくつもの新しい種が、1980年から89年までに一斉に花開いた。そんな10年間でした。

サザンオールスターズは78年に「勝手にシンドバッド」でデビュー、コミックバンドというメディアのイメージと戦いながら80年代に突入し、こういうバラードが似合うバンドになりました。70年代に登場したいろいろなバンドとサザンオールスターズが決定的に違っていたのは、それまでのバンドにあった「あっち側」「こっち側」という区分けがなかったことでしょう。それまでのバンドが避けていたメディアとの戦い方、肉を切らせて骨を断つみたいな肉弾戦をやっている時期がしばらく続いていましたが、80年代に入り、TV出演を控えて楽曲制作に重きを置くようになって、少しずつスタンスを変えながら、82年2月に桑田さんと原さんが結婚。2人が出会った学生時代への想いを感じさせるのがこの曲ですね。

70年代のロックが少しずつ成熟していった80年代。「あっち側」とか「こっち側」とか単純に分けられない、ジャンルを超えたいい曲がたくさん誕生していった10年間でもありました。来年は2020年。次の人も来年デビュー40周年です。82年1月発売。松田聖子さん「赤いスイートピー」。イントロは松任谷正隆さんです。

松田聖子 / 赤いスイートピー


松田聖子さん、今年はプレ40周年イヤーということでツアーをやっていました。この前、帰って何気なくテレビをつけたら、そのライブが放送されていたんです。ビールも入っていたんですけど、「赤いスイートピー」のイントロが流れたときに思わず涙ぐみたくなってしまって、いや~いい曲だなと思ったことがありました。82年1月発売。作詞が松本隆さんで、作曲が呉田軽穂さん = ユーミンですね。「歌謡曲を変えるんだ」という松本さんの野望が形になっています。この曲に関して松本さんは、「女の子の初体験の年齢が低下していると週刊誌などで言われていることに対しての反発で、わざと純情な2人の話を書いた」と言っていました。松本さんはいろんなことに対して反発しながら自分の生き方を貫いた人です。「赤いスイートピー」で、聖子さんは「あなたの生き方が好き」と歌っているんですね。松田聖子は生き方を歌ったアイドルだったなと改めて思ったりしました。

続いてはもう1人、アイドルシーンのヒロイン。中森明菜さん、82年11月発売「セカンド・ラブ」です。

中森明菜 / セカンド・ラブ


1982年11月に発売になった3枚目のシングル「セカンド・ラブ」。大人っぽい歌ですね。作詞が来生えつこさんで、作曲が来生たかおさん。82年5月に出たデビュー曲「スローモーション」もこのコンビですね。明菜さんのイメージは2枚目の「少女A」が強い。こちらは売野雅勇作詞・芹澤廣明作曲、チェッカーズのコンビです。そのイメージが強かったからか、ぶりっ子・聖子と本音派・明菜みたいに見られていた。中森明菜に、ある種反抗的と言いますか、言うことを聞かないアイドルみたいなイメージができてしまったのは「少女A」があったからかなと改めて思いましたね。「セカンド・ラブ」は、アイドルでなくても、女性アーティスト、女性歌手が歌っても、いい曲だと言われる曲です。これも時代の巡り合わせ。そのときの世の中の流れやいろんなことが中森さんそのものの生き方を、そうさせていったんでしょう。

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