心が弱いからうつになるのか? 「自虐的世話役」を美化する日本社会

■うつ病

アメリカ精神医学会による『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』によれば「抑うつ障害群」という病気の一つに分類されていて、「大うつ病性障害(major depressive disorder)」とも呼ばれます。下記の9つの症状のうち1または2を含む5つ以上の症状があり、それが2週間以上続いている場合に「うつ病」と診断されることになります。

1. ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の活動における興味または喜びの著しい減退
3. 食事療法をしていないのに、体重の減少または増加(1ヶ月で体重の5%以上の変化)または、ほとんど毎日の食欲の減退または増加
4. ほとんど毎日の不眠または過眠
5. ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止
6. ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退
7. ほとんど毎日の無価値観、または過剰か不適切な罪悪感
8. 思考力や集中力の減退
9. 死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図

うつ病の治療は「休養」「環境調整」「薬物治療」「精神療法」などが中心になります。うつ状態のときは心と体を休めることがまず重要です。そして、医師による適切な薬物治療を行ないます。また、認知行動療法や対人関係療法などによる精神療法で、ストレスに対する対処法を学び、良い状態を維持し、再発を防ぐようにします。

■ 双極性障害

うつ病が「うつ症状だけ」がみられるのに対し、双極性障害はうつ状態と躁状態または軽躁状態を繰り返す病気です。躁状態のときは気分が良く感じられるため本人に病気の自覚がなく、そのため躁のときには治療を受けないケースが多くなってしまいます。そして、うつ状態のときに診察を受けに行き、うつ病と診断されてしまい、うつ病だけの治療をすることで、双極性障害を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。先述したとおり、うつ病とはまったく違う病気ですので、治療法も違ってくるのです。躁状態のサインとしては

1. 睡眠時間が少なくても元気で活動が続けられる
2. 人の意見に耳を貸さない
3. 話し続ける
4. 次々とアイデアが出てくるが最後までやり遂げられない
5. 根拠のない自信に満ちあふれる
6. 買い物やギャンブルに莫大な金額をつぎ込む
7. 性的に奔放になる

などがあります。いずれの疾患にせよ、うつ状態のときには体を動かすことも非常につらく「そんなの誰にでもあることだ」というレベルではありません。「怠け者」「甘えるな」と非難したり、「頑張れ」「元気を出せ」と言ってはなりません。また、これは落ち込んでいる友人等に対してはよくやることでもあるかもしれませんが、うつの人を「気晴らしに誘う」ことも避けた方が良いでしょう。家族や友人から気晴らしに誘われると、断っては悪いと考えたり、「せっかく誘ってくれているのだから楽しまねば」と義務的に考えたりして、結果的に疲労が嵩むことになります。また、安易に「薬に頼るな」と言うことも良くありません。

Rolling Stone Japan 編集部

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