マイケル・ブルームバーグの米大統領選立候補、通信社ブルームバーグに与えた悪影響とは?

コーヒーショップで大統領選のヴァージニア州代議員候補のナンシー・ガイと面談する、出馬表明した前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ(ヴァージニア州ノーフォーク 2019年11月25日)。Drew Angerer/Getty Images

米大手通信社ブルームバーグ創業者でありビリオネアのマイケル・ブルームバーグが正式に大統領選への立候補を表明した。偏った方針に基づく報道は、ニュース報道とはいえない? ブルームバーグの立候補による悪影響はあるのか?

77歳のブルームバーグは、混戦の民主党候補に名乗りを上げた。より左傾化する民主党に対し、彼は中道現実路線を打ち出している。ここ数年ブルームバーグは巨額の私財を投じ、銃器の安全な取り扱いに関する規制強化や気候変動対策を推進するよう強く求めている。

2019年11月後半の週末、ブルームバーグ・ニュースは大きな打撃を受けた。本記事は、ニュースビジネスの将来とニュースビジネスの終焉を予言するものだ。

11月24日、前ニューヨーク市長でビリオネアのマイク・ブルームバーグは正式に民主党の大統領候補指名争いへの参戦を表明した。ブルームバーグ・ニュース編集長のジョン・ミクルスウェイトは、編集・調査担当者へ送ったメモの中で、上司であるマイク・ブルームバーグと他の民主党候補者の何れに対する「調査」も行わない方針を示している。

候補者への調査を行わないという我が社の慣習に従い、マイク(及び家族や財団)に対する調査は行わない。同様の方針は、他の民主党候補者に対しても適用する。マイクだけを他の候補者と別格に扱うことはできない。

マイク・ブルームバーグにニュースビジネスを尊重する気持ちがあるのなら、自社の編集者であっても自身について事細かに取材されるのを厭わないはずだ。または、自分のメディアビジネスを手放すかのどちらかだろう。或いは、大統領選への立候補などしないか…

ところがマイク・ブルームバーグはいかにも彼らしく、最も軽蔑すべき破滅的な方法を選択した。彼は(言ってしまえば、馬鹿げた)選挙期間中だけは通信社における職を停止するものの、世界最大級の報道機関のオーナーには留まるという。

マイク・ブルームバーグによる決断は、同社に所属する約2700人のジャーナリストを酷い倫理で縛ることとなる。命令によって記者らによる政治報道の大部分が遮断されてしまうとなれば、当然彼らによる他のいかなる報道の正当性も失われてしまう。

一方で、ドナルド・トランプ大統領に関する調査報道の方に偏る可能性もある。しかし一本道しか進むことを許されないとすれば、それはニュース報道とはいえず、記者らもそのような状況を我慢している場合ではない。結局、編集者に政治的な方針を押し付けるのと同じだ。

ブルームバーグの読者と視聴者は、いったいどのような事実やストーリーが伏せられて報道されているか知る由もない。これは冗談のような話だ。

大手報道機関が自らの政治的指針を公然と示したのは、ブルームバーグが初めてだ。報道機関による指針表明については、筆者の著書『Hate Inc.』でも触れている。ニュース報道は既に二元化し、営利を目的としたメディア企業は自らの「政治思想」に反するニュースを報道しなくなっている。

このようなやり方は、1990年代にFOXニュースから始まった。当時CEOだったロジャー・エイルズは、保守系思想を持つ白人を中心とした「55歳以上」向けの偏った報道が大きな広告収入につながることに気づいた。

FOXは自己の利益のためにフェイクニュースを流すことも厭わなかったが(トランプによるオバマの出生に関わる悪名高い誹謗中傷が最も典型的な例)、同社による最も酷い詐欺行為は、共和党員や保守系に対する調査報道を行わない姿勢にある。

FOXは嘘をつく必要がなかった。ただ特定の政治家に対する敵対的なニュースをほとんど流さないことで、視聴者が彼らを支援するように仕向けるだけでよかったのだ。例えばイラク戦争中に視聴率が高まる中で、FOXは大量破壊兵器の捜索に対する懐疑論ですら報道を控えた。そしてアブグレイブ刑務所における捕虜虐待の報道を、まるでリベラル主義者による陰謀であるかのように報じた。敢えて伏せられたストーリーの中に最も大きな嘘が隠れていたのだ。

Translated by Smokva Tokyo

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