止まらない違法音源ハッキング、米27歳による巧妙な手口

Matt Rourke/AP/Shutterstock

米27歳のクリスチャン・エラソ被告は、音楽マネージメント会社のSNSならびにクラウドアカウントをハッキングして50ギガバイトもの音源をダウンロードした疑いがかけられている。

音源リークはとどまるところを知らない。今年はビヨンセの偽アルバムのリリースや、レディオヘッドを襲った音源ハッキングによる脅迫などが相次ぐなか、音楽業界幹部のパソコンのオンラインアカウントにログインし、50ギガバイト以上の音源を盗んだ疑いで、27歳の男が逮捕された。

11月下旬に米ニューヨーク州マンハッタンの連邦裁判所で開示された米政府当局の起訴状によるとクリスチャン・エラソ被告は、匿名の音楽マネージメント会社2社のクラウドストレージのアカウントにインターネットを通じてアクセスし、およそ50ギガバイト分の音源をダウンロードした。ダウンロードした音源のなかには、2016年から2017年にかけてレコーディングされたアーティスト20名の未公開音源も含まれていた。さらに起訴状によると、エラソ被告はカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とする音楽プロデューサーのSNSアカウントにアクセスしてはプロデューサー本人になりすまし、ダイレクトメッセージ(DM)を介してアーティストたちに未公開音源を送るよう依頼していた。エラソ被告は加重身元詐称、コンピューター侵入の共謀、有線通信不正行為の共謀などの罪に問われ、有線通信不正行為の共謀で有罪となった場合は最高20年の懲役刑となる。

起訴状によると、エラソ被告と共謀者はある音楽マネージメント会社のクラウドストレージアカウントにログインするための情報を入手し、少なくとも2300回はアクセスした。さらにエラソ被告のパソコンを調べたところ、さまざまな団体から850以上の音源ファイルを盗んでいたことも判明した。「アーティストへの詐欺行為」を通じてエラソ被告は、音楽プロデューサーの“ミニブログ”のアカウントからアーティストにDMを送っては、被告が立ち上げた偽のメールアドレスに特別な未公開音源を送るよう依頼していたのだ。「マジで笑いが止まんねぇ」とエラソ被告と匿名の共謀者はオンラインで連絡を取り合っては、「これまでやってきたことのなかでも一番笑える」と今回の詐欺行為について語っていた。起訴内容によると被告は、音源流出に悩む音楽会社の調査を装っては従業員に罪をなすりつけ、「これで完璧に隠ぺいできる」と共謀者に話していたそうだ。

警察の質問に対し、エラソ被告は「およそ50ギガバイト、あるいは約100曲相当の高音質音源」をクラウドストレージのアカウントから盗んだことを認めた。

「エラソ被告の行為は音楽会社、プロデューサー、アーティストに経済的被害を及ぼしただけでなく、自由な裁量によって作品を発表する権限をアーティストから奪いました」とジェフリー・S・バーマン連邦検事は声明を発表した。今回の事件は、ニューヨーク州南部地区連邦地検の特殊詐欺・サイバー犯罪対策課が担当する。


Translated by Shoko Natori

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