『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』共同脚本家が語る、最終章製作の内幕

ー最初に監督と『フォースの覚醒』についてインタビューした時、監督はラリー・カスダンがそばにいたおかげで大いに助けられたと言っていました。ファンフィクションを書いている気持ちにならずに済んだ、というのが理由のひとつですが、長年スター・ウォーズの大ファンだったあなたご自身はいかがでしたか? 自分が本当にスター・ウォーズの脚本を書いているんだ、と実感することはできましたか?

いまも自分に言い聞かせている最中だよ。僕らは銀河系で実際に起きた出来事を書き留め、銀河系の系譜をまとめるような形で進めていかなくてはならなかった。なにかひとつストーリーを決めたら、それが先々規範になることは十分分かっていたからね。本当にこの決断で正しいだろうか?登場人物的には正しいだろうか?テーマ的にはどうだろう? エピソード4のジョージの原案に合致しているだろうか? 前日譚や後日譚で語られた内容とかみ合っているだろうか? そんな風にして全部決めていった。もちろん自分の勘を信じなきゃいけないときもあるよ。「うん、これは正しい気がする。この人物はきっとこういう行動をするはずだ。これこそスター・ウォーズらしい」ってね。

それから先は、正しい方向へ導けるよう、自分のDNAにスター・ウォーズのエッセンスが十分流れていることを祈る。ストーリーは僕たちの人生全体に深く浸透しているから、どれが正しい決断でどれがそうでないかを判断する物差しができているんだ。時には間違うこともあるから、その時は調整しないとね。僕もJ・Jと意見が合わなくて、言い合いになることもあるけど、最終的には2人で最善の解決策にたどりつく。この方向性はありだけどこれは絶対なし、という風にね。まったくもって非科学的、統制の取れたカオス状態さ。それに、頭の片隅にはラリー・カスダンやジョージといった人々の意見があった。ラリー・カスダンは僕にとってヒーローだね。ラリー・カスダンのような素晴らしい会話や人物描写が書ける人はいないよ。時々ヒントを求めて、彼が昔書いた脚本を――ボツになったのも含めて――見直すんだ。『帝国の逆襲』の脚本がこのタイミングで変更されたのはなぜなんだろう?とかね。エンジンが動く仕組みをみると、よく理解できるんだ。『帝国の逆襲』でこのシーンがカットされたのはなぜだろう? ああそうか、物語がもたつくからか。なぜ『ジェダイの帰還』では、こっちじゃなく、あっちのシーンを採用したんだろう? なるほど、ルークと父親の関係に焦点を当てるためか。マシンが実際にどう動いたかを見るだけで、物語の選択に自信が持てるようになるんだ。

ー今作で監督がジョージ・ルーカスに会いに行ったとき、あなたもご一緒でしたか?

ああ。特定のストーリーについて話し合う、というんじゃなく、むしろジョージの話を聞きにいったという感じだった。なんとなく哲学的な会話だったな、ジェダイの資質とかフォースの特性とか、彼が第1作を書いたときの意図とかね。偉大な師匠と向き合って、彼の英知を授かるという感じだった。ジョージがどの程度知っているか分からないけど、僕らは彼の言葉を書き留めて、協議を重ねて、彼の真意を理解しようとした。特定のストーリーに関して、ジョージが賛成してくれるかどうかは分からない。でも概念として、僕らが彼の真意をくみ取ったことを感じ取ってくれるんじゃないかな。

ーオリジナル三部作でルーカスがボツにした箇所もご覧になりましたか?

(笑)それは答えられないな。手元に来たものは全部目を通すようにはしているよ。インターネットには、オリジナル三部作の脚本のいろんなバージョンの草稿を掲載しているサイトがあるよね。僕も(そういうサイトのひとつを)読み漁った。カリフォルニア州サンタモニカの某所で、僕があのサイトを閲覧した回数を見たら、きっと冷や汗ものだね。とにかく僕は、ジョージがどんなふうに考えていたのか、ヒントが欲しかったんだ。あるいは『帝国の逆襲』のリイ・ブラケットの考え方をね。あの経験は僕にはものすごくためになったよ。

『帝国の逆襲』の奇妙奇天烈な感じは、彼女の第1稿からすでに存在していた。彼女が危険を恐れずに冒険したことを知って、すごく嬉しかったよ。もちろん『スター・ウォーズ』自体少々変わっているよね――銀河の遥か彼方の物語なんだから。でもリイ・ブラケットは以前にも多くのSFものを手がけていたから、様々な危険を冒した。今回こうして彼女の脚本を読めるだけ読むまで、僕自身リイ・ブラケットのことはよく知らなかった。『スター・ウォーズ』の脚本家が女性だったってことを知らない人も多い――すぐに女性だとは気づかない名前だからね。そこへラリー(・カスダン)が加わって、今日我々が知る『帝国の逆襲』のセリフが完成した。ラリーは持ち前のヒューマニスト精神を発揮して、独自のリズム感と会話感、ウィットを盛り込んだ。たくさんのシーンが、草稿の段階ですでに存在していたんだ。

Translated by Akiko Kato

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