石若駿はさらなる地平へ、新世代のリーダーを引き受ける覚悟と今思うこと

「日本のジャズ」って何だろう?

―たしかにAnswer to Rememberは、アートワークも含めて「日本の音楽」って感じを打ち出しているのは感じるかも。

石若:あと最近、オーストラリア人のミュージシャンが日本によく来ているじゃないですか。(Answer to Rememberに参加している)ベースのマーティ・ホロベックとか。彼らにとって日本のジャズはすごく面白いっぽくて、「いったい何なんだ?」みたいな話になるんですよ。でも、それに上手く答えられない。逆に「オーストラリアのジャズって何なんだ?」って聞いたら、彼らは全部説明できるんですよ。

その一つに、オーストラリア(メルボルン)は歴史的に1920年代のトラッド・ジャズの流れが大きくて。そのあと、50〜60年代にマイルスやコルトレーンがやってこなかったかわりに、オーネット・コールマンが頻繁に演奏していたから、トラッド・ジャズからいきなりオーネットに飛ぶんですよ。それでトラッドとフリージャズのミックスだったり、どちらも頻繁に演奏するミュージシャンが多い。

―そうだよね。

石若:日本はジャズ・ジャイアンツがみんな来ていて、マイルスやコルトレーンの影響が強かったりするけど、山下洋輔トリオみたいな例を除けば、日本人が作ったジャズって世界的にそこまで知られてないと思うんですよね。そこからマーティなどと話すうちに、もっとワールドワイドに説明できるような「日本のジャズ」って何だろうと考えるようになりました。もっと言えば、コンテンポラリージャズですね。2000年代以降の日本で、コンテンポラリージャズと言えそうなものは生まれてないなと思って。


石若が率いるジャズバンド、Shun Ishiwaka CLNUP4の2019年作『CLNUP4』収録曲「Playgroundz」

―たしかに日本のシーンと言うよりは、アメリカを出入りしている人たちが作ってきた印象がありますね。その後、「日本人のジャズって何なんだ?」っていうのは説明できるようになったんですか?

石若:したいところですよね。今回のレコーディングに参加してくれた人たちは、その答えになるようなことができそうな人たちだと思いますし、これをきっかけに面白くなればいいなって。日本だと同世代のジャズミュージシャンがコンテンポラリージャズに向かう前に、みんなポップスとかヒップホップに散らばったのもありますよね。

―石若自身の仕事もそういうのが多かったですよね。

石若:でも、俺の考えていることにみんなが集まることで、その先に進められたらいいかなって。みんなジャズ好きなのにね。

―たしかに今の石若には、「もう一回ジャズやろうぜ」って声かけて集められる求心力もあるし、ヒップホップやポップスを通じて培ってきたものを持ち込める場所を作ることが役割のような気がするね。みんなが戻ってこれるジャズの場所っていうか。ところで、海外に日本のジャズを持っていくという話で、日野さんから何か言われたことってありますか?

石若:たくさんありすぎて思い出すのが難しいけど、日本人のアイデンティティの話はよくしている気がします。お寺の屋根を見ながら「日本人にはこの反りのカッコ良さがわかるもんな。俺はその美しさをやりたいんだよ」って話をしたりとか。あと、日野さんはトランペットのピストンの動きで、ぶわーって次の音にしゃくりあげるみたいなプレイをしていて、あれは日野さんしかやっていないと思うんですけど、本人は「それって笙からきているんじゃないかな」と話していました。日野さんはアメリカに長く住んだあと、帰ってきてからアジアのジャズのプロジェクトをやったりもしてましたし、そういう姿勢から学んだこともあると思いますね。

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