ローリングストーン誌が選ぶ「2019年ベスト・ムービー」トップ10

7.『ジョジョ・ラビット』

ニュージーランドのフィルムメーカー、タイカ・ワイティティはワイルドな男であり(『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』や『マイティ・ソー バトルロイヤル』を見てほしい)、簡単には怖がらせてくれない。そして、賛否両論の『ジョジョ・ラビット』は彼の最大のヒット作であり、悲劇を絡めたコメディ作で、ワイティティが面白半分にヒトラーを演じている。10歳のジョジョ(素晴らしいローマン・グリフィン・デイビス)はヒトラーユーゲントの一員であるが、母親(スカーレット・ヨハンソン)によって家にかくまわれていたユダヤ人の少女(『足跡はかき消して』に出演したトーマシン・マッケンジー)を見つけたことで、その状況に折り合いをつけようとするが、そこから何が起きるのか? ワイティティは、相手を理解していくことになるこの若きヒーローの旅が私たちの旅でもあると確信している。そして、対立とヘイトクライムに今も飲み込まれている世界では、彼が正しいことを望みたい。(※2020年1月17日公開予定)



8.『アンカット・ダイヤモンド』

A24

ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟の映画は常に情熱を持って作られている。さらにこの作品では、自らの命を危険にさらしてまで珍しいオパールを求めたり、一か八かのバスケットボールに賭けたりするニューヨークの宝石商をアダム・サンドラーが演じ、このタッグは猛烈なまでに最高な組み合わせだ。サンドラは間抜けではない役を演じると、真剣に演技に取り組める。サフディ兄弟のために総動員した今作での演技は、名刺代わりになるものだ。(※日本では、Netflixで2020年1月31日からNetflixにて配信)

9.『フェアウェル』

A24

知性と機知からなる力強い核が、脚本家兼監督のルル・ワンの描く文化間の対立の物語を特徴付けている。主人公のビリーは、余命いくばくもない祖母のナイナイ(崇高なチャオ・シューチェン)と会うために中国へ帰郷するニューヨーク在住の作家。その役を演じたオークワフィナは重厚な演技で観客の心を動かす。中国の習慣から、ナイナイには癌と診断されたことは伝えられていない。だが、ビリーは真実を話すべきだと思う。そこが映画の中心で議論されるもので、この作品の品性を揺るぎないものにしているのは、映画の持つ気骨だけだ。(※2020年春日本公開予定)



10.『ジョーカー』

Niko Tavernise/Warner Bros.

ホアンキン・フェニックスが観客を仰天させた演技は、これから何年にもわたって解読されることになるだろう。フェニックス演じるアーサー・フレックは、道化師の仕事をしながらスタンドアップコメディアンを目指すが、残忍な復讐者に変身してしまう。フェニックスと監督のトッド・フィリップスは、ジョーカーの独自のオリジン・ストーリーを作り出した結果、映画の中の暴力に関して大きな論争を巻き起こし、この映画はR指定映画の中で歴史上最も成功したものとなった。彼らはインスピレーションの拠り所として、このリストのトップにいるレジェンドのマーティン・スコセッシに目を向けた。その結果として、フレックの中に、スコセッシの『タクシードライバー』のトラビス・ビックルや『キング・オブ・コメディ』でのルパート・パプキンの苦しめられた形跡が見られる。幸せを手に入れようともがく人物の姿を数々の傑作映画が映し出してきたこの1年を締めくくるのは、『アイリッシュマン』と『ジョーカー』の2作品だ。人生を模した芸術作品について話し合ってほしい。




Translated by Koh Riverfield

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