ザ・クラッシュ、パンクを未来につなげた名盤『ロンドン・コーリング』40年目の再検証

今回リリース40周年を記念したムック『ザ・クラッシュ  ロンドン・コーリング』を作る過程で、どうしても盛り込みたかったのが、リアルタイムで彼らの作品に触れた日本のミュージシャンたちの視点。当時関西ニュー・ウェイヴの雄として活躍した元INUの町田康と、パンクを経由してやがて日本のヒップホップ黎明期に関わる高木完……“クラッシュ直系”のイメージがない2人に、敢えてインタビューをお願いした。言葉の人である町田氏が、歌詞よりむしろメロディの良さに言及している点が面白いし、「自分が面白いと思ったことをその都度瞬間的にやる」という姿勢を彼らから学び、今も持ち続けているという発言も腑に落ちるところだ。

来日公演も体験した高木氏の発言で目から鱗が落ちる思いがしたのは、「ブリストルのポップ・グループやリップ・リグ&パニック……さらにマッシヴ・アタックなどのトリップ・ホップにまでつながるよね。おそらくクラッシュがいなかったら、無かったと思う」という指摘。クラッシュが我流で形成した折衷的なサウンドが、新しいクラブ・ミュージックの起点となったことは、確かに歴史が証明している。その長い旅の始まりこそ、『ロンドン・コーリング』であった。



個人的な経験を振り返ってみても、クラッシュについての会話はヒップホップ勢やレゲエ勢と交わす機会が多かった。日本のクラブ・ミュージック黎明期を知る世代は、始点がいきなりクラブ・ミュージックにあるわけではなく、それ以前にパンク/ニュー・ウェイヴを経由してきた人が大半だから。

ヒップホップ以前にロックンロール、パンクを通過してきた故・MAKI THE MAGICは、「ジョー・ストラマーの発言は矛盾が多かった」と指摘しながら、「その矛盾してしまうところがいいんだよ。人は矛盾した生き物だから」と力説していた。同じくパンク少年だった時期があるKICK THE CAN CREWのLITTLEは、「クラッシュも好き」と前置きした上で、「人として強度の高いジョー・ストラマーが強い音楽をやっているクラッシュより、へなちょこなジョニー・ロットンが精一杯突っ張っているセックス・ピストルズの方にパンクを感じた」と、彼なりの視点で鋭いことを言っていた。

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