中島みゆきを手がけるプロデューサー、瀬尾一三が語る『CONTRALTO』

収録後の瀬尾一三氏(左)とDJの田家秀樹。田家が手にしているのは、中島みゆきの新作『CONTRALTO』のプレスリリース。(Courtesy of FM COCOLO)

音楽評論家・田家秀樹がDJを務め、FM COCOLOにて毎週月曜日21時より1時間に渡り放送されているラジオ番組「J-POP LEGEND FORUM」。

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2020年1月の特集は、「瀬尾一三2020」。去年、音楽活動50周年を迎えた70年代以降の日本の新しい音楽のプロデューサー、アレンジャーの先駆けである彼の作品集の全曲紹介と中島みゆき43枚目のアルバム『CONTRALTO』を特集していく。1週目の今回と来週は、中島みゆきのアルバムをピックアップ。

田家秀樹(以下、田家):あけましておめでとうございます。新年いかがお過ごしでしょうか。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人、田家秀樹です。今流れているのは、中島みゆきさんの「終り初物」(TV-MIX)。Instrumentalですね。1月8日(水)に発売になります43枚目のアルバム『CONTRALTO』からお聴きいただいております。今日の前テーマはこの曲です。Instrumentalで始めたのは過去何回あったかな。ほとんどないですよね。でも、新年ですからね。こういう方が気持ちが改まるので、この曲から始めております。

今月2020年1月の特集は、「瀬尾一三2020」。プロデューサー、アレンジャー、作曲家、音楽監督、シンガーソングライター。中島みゆきさんを手掛けるようになって32年です。それ以前、70年代に彼にお世話になっていないアーティストはいないでしょう。アレンジャー、プロデューサーのパイオニア。去年、音楽活動50周年を迎えました。そして、1月8日(水)に中島みゆきさんの最新アルバム『CONTRALTO』が出ます。さらに、同じ日に瀬尾さんが手掛けた曲を集めたコンピレーションアルバム『時代を作った名曲たち〜瀬尾一三作品集3 SUPER digest〜』が出ます。シリーズ3作目ですよ。こういうコンピレーションが3作出るのは、本当に異例です。中でもアーティスト本人ではないアレンジャー、プロデューサーの作品集はレアということで。今月は、中島みゆきさんのアルバムと、この瀬尾さんの作品集の全曲をご紹介しようと思っております。今週と来週は、中島みゆきさんのアルバムの特集です。

田家:こんばんは。

瀬尾一三(以下、瀬尾):こんばんは、瀬尾一三です。皆さん、あけましておめでとうございます。

田家:1月12日(日)からみゆきさんのツアーも始まります。〈結果オーライ〉。年末年始はその関係のお仕事で一杯ですか。

瀬尾:そうですね。12月26日(木)、27日(金)までリハーサルを行って、2、3日後にはゲネプロが始まりましたので。ゲネプロは、会場でやる最初のリハーサルですね。それに向かって体調とか気をつけていて、お正月どころじゃなかったんですよ(笑)。

田家:今回のツアーはみゆきさんが、最後のツアーだとはっきり明言されていらっしゃってしますが、やはり特別なツアーになりそうですか?

瀬尾:そうですね。内容は盛り沢山なので、皆さん期待していただきたいです。

田家:そんな話も後ほど探りながら進めさせてもらえればと思います。その前に、新作アルバム『CONTRALTO』が発売になっております。全10曲で、TV-MIXが2曲入っている。10曲の中には、テレビドラマ『やすらぎの刻~道』の主題歌も入っております。前作のアルバム『相聞』は、前のテレビドラマ『やすらぎの郷』と切っては切り離せないようなアルバムでしたが、今回はどうなのでしょう?

瀬尾:今回も、4曲が『やすらぎの刻~道』で使ってもらっている曲なので、あとの6曲をあまりかけ離れたものではなく、かといって彼女のオリジナルアルバムにはしたいので。その辺のところを彼女は作品を作る上で考えたと思います。だから、全体として1つのアルバムを通すようには意識しました。

田家:それでは、『CONTRALTO』に入る前にですね、やはりこの曲から始めたいと思います。前作のアルバム『相聞』から「慕情」です。

・「慕情」


田家:これは2017年にシングルとして発売されまして、そして去年2019年の4月から始まった『やすらぎの刻~道』の主題歌にも使われていました。

瀬尾:そうですね。そのために作った曲です。

田家:『やすらぎの郷』と『やすらぎの刻~道』の両方の主題歌になっているわけですが。

瀬尾:前のシリーズと今回のシリーズを繋ぐ連続性が脚本の倉本聰先生の中であったみたいで。また、<尽くしたい>なんて言葉が彼女から出てくるなんて思ってもいなかったので、少し驚きましたね。だから、大きな愛のテーマだなと思って。

田家:ドラマがそう書かせたっておっしゃっていましたよね。お聴きいただいただいたのは、前作のアルバム『相聞』から「慕情」でした。

・「終(おわ)り初物(はつもの)」
中島みゆきアルバム『CONTRALTO』全曲トレーラー


田家:とても柔らかく始まりました。

瀬尾:そうですね。これも、『やすらぎの刻~道』の主題歌としての曲ですね。本は倉本先生の方からいただいていたので、それに合わせて彼女の中で倉本先生の世界観を広げたという感じで作ったと思うのですが、何でしょうね。皆さん分からないと思うのですが、「終り初物」という言葉を(笑)。初物が出た時には、「これが初物です」と言って贈ることがあると思うのですが、初物がギリギリ最後の頃、季節が次のものが出てくる時に、「これが終り初物です」と言って渡すと。これが初物としての最後の終わりで、次の季節になるということですね。

田家:なるほど。今回のアルバムの先行シングルは『離郷の歌/進化樹』でしたが、これもドラマの主題歌になっていて。「終(おわ)り初物(はつもの)」も主題歌になっているわけですよね。やはりドラマを意識しつつ、アルバムを制作されていたのでしょうか?

瀬尾:そうですね。今回のドラマが長いスパンでやっていることと、時代背景も主人公も時代が変わっていく世界観が変わるので、それに合わせて作って欲しいということが倉本先生からの話でした。なので、最終的に4曲にもなってしまったということですね。

田家:1枚のアルバムで4曲がドラマの主題歌というのは今まであまり例がないですよね。

瀬尾:そうですね。僕の個人的な意見で言えば前の「慕情」だけでいいじゃないかと思っていたのですけれど(笑)。時代の場面が変わることによって、主人公の心情も変化するだろうということで、それに沿った曲が欲しいとのことなのだろうと思います。アルバムの制作は、主題歌とアルバムの曲の制作が同時に進みました。その上で、この曲とこの曲が主題歌になったらいいねという話はしていました。なので、「離郷の歌」と「進化樹」はテーマとして作っていましたが、あとの2曲はアルバムの中の曲として仕事をしたので、その時僕はそれが主題歌になるとは知らなかったです。

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