誰もがレコードレーベルになれる時代、米マスターカードが楽曲をリリース

お金で買えるすべてのもの——音楽も——はマスターカードで。(Photo by Alastair Grant/AP/Shutterstock)

あのクレジットカードの国際ブランドがシングルをリリースするという。

2020年を迎えたいま、本当に誰もがレコードレーベルになれる時代がやってきた。これまでオリジナル楽曲をリリースしたホテル会社、航空会社、大手小売店チェーン、さらにはカスタムメイドのぬいぐるみで有名なBuild-A-Bearなどの企業にならい、クレジット&デビットカード大手の米マスターカードが米現地時間1月7日に初シングル「Merry Go Round」のリリースを発表した。

「Merry Go Round」は、年内にマスターカードがリリース予定のフルアルバムからの1stシングルであり、米現地時間1月8日からネバダ州ラスベガスで行われる世界最大規模のエレクトロニクス展示会CES 2020のiHeartRadioのイベントで正式にお披露目となる。同社が公表したプレスリリースによると、「“プライスレス”な可能性によって実現した新たな始まりと、フレッシュなスタート」が同楽曲のテーマになっている。同社はスウェーデン出身のアーティスト、ネイディーン・ランドルとタッグを組み、「マスターカードのブランドバリューと音によるアイデンティティを有機的かつ巧みに融合する」ことで初シングルを生み出した。同社のマーケティング部門のトップを務めるラジャ・ラジャマナール氏は、「音がブランドを表現するための未来の領域であること」を認識する取り組みとして同楽曲が生まれたと語った。1月8日の正式リリース後、「Merry Go Round」は大手音楽ストリーミングサービスでダウンロード可能となる。

マスターカードによる今回のプロジェクトは、決して思いつきによるものではない。ここ数年、さまざまな分野で活躍する十数社ほどの企業がレコード音楽への参入を果たした。そこには、音楽ストリーミングサービスやスマートスピーカーに高音質ヘッドホンといった新しいデジタル家電が牽引する音楽ビジネスの成長と、デジタルプラットフォームにおいて存在感を増すオーディオ広告に賭けたい、という思いがある。企業がシングルやアルバムをリリースすることで、人気アーティストや作曲家の擁護者というイメージを押し出すことも可能だ。相次ぐオリジナル楽曲の数々は、長年ラジオなどで流れてきた企業のCMソングの進化系でもあるのだ。

「Merry Go Round」には、ネイディーン・ランドルとともにスウェーデン出身の作曲家・プロデューサーのニクラス・モリンダーも参加。モリンダーはプレスリリースで以下のコメントを発表した。「音の融合である今回のソングプロジェクトは、唯一無二のものであり、音楽と人間の消費活動の変化を象徴するものだ。耳に残る音の構造には、ジャンルや場所を超越するすばらしい側面がある一方、情感豊かなメロディーが絶え間なくワクワク感を生み出している。今回の刺激的なプロジェクトを通じてマスターカードと一緒に仕事ができて楽しかった。今後のさらなる楽曲のリリースを楽しみにしている」

Translated by Shoko Natori

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