性別の枠を超えた「人間」という単位の捉え方、LGBTQへの理解

1960年代のアメリカは、LGBTQにとって暮らしやすい国ではなく、同性間の性交渉を禁止する「ソドミー法」が施行されているなど、根強い偏見がありました。そんな中、比較的自由な空気のあったニューヨークにストーン・ウォール・インというゲイバーがありました。そうしたゲイバーはしばしば警察の理不尽な介入が行なわれていましたが、1969年にその店の客たちが警官に対して抵抗し、そこに差別撤廃と解放を求める人々も加わり「ストーンウォールの反乱」と呼ばれる抵抗運動が起きます。これをきっかけのひとつとして、70年代以降、差別撤廃運動が加速していきます。

そうした背景があった中、70年代の初頭には、アフリカ系アメリカ人、ラテン・カリビアン、LGBTQなどが集まる空間が形成され、そこで「ディスコ」と呼ばれるダンス・ミュージックが誕生し、ドナ・サマー、シック、ビージーズなどが世界を席巻します。

80年代になるとディスコ・ミュージックは様々な理由から低迷しますが、そんな中でニューヨークのパラダイス・ガレージなどのクラブでは、自らゲイであることを公表していたラリー・レヴァンのような人気DJが登場します。彼の音楽はガラージと呼ばれるようになり、後のハウス・ミュージックの源流にもなります。そして、同じくゲイであることを公表していたフランキー・ナックルズはシカゴを拠点にシカゴ・ハウスを生み出します。

80年代後半には、サイケデリックな要素も持つアシッド・ハウスが誕生し、イギリスでも流行。「レイブパーティ」が行なわれるようになり、やがて「セカンド・サマー・オブ・ラブ」という大きなムーブメントに発展し、ストーン・ローゼス、ハッピー・マンデーズ、808 stateなど、多数のアーティストたちが登場しました。その後この流れは現代のEDMカルチャーにまで地続きで繋がっています。

ごく一部ですが、LGBTQと音楽の関わりを見てみました。こうした素晴らしい側面とともに、気をつけたいのは「何かの役に立つから尊重されるわけではない」ということです。いかなる性的指向や性自認であっても、人間として尊重されるということが大切なのです。

参照
氷川きよしさんの紅白に注目 「自分らしく輝くことが一番大切」メッセージに多くの共感集まる
https://m.huffingtonpost.jp/entry/kiyoshi-hikawa_jp_5e0ae6fde4b0b2520d1a5f8d

Ezra Miller opens up about queer identity and #MeToo 8 NOV 2018 - 11:04AM
https://www.sbs.com.au/topics/pride/fast-lane/article/2018/11/08/ezra-miller-opens-about-queer-identity-and-metoo

『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』石田仁著 ナツメ社




<書籍情報>



手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/

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