INORANとスティーヴ・リリーホワイトが語る、LUNA SEAの「多様性」と「バンド力学」

スティーヴから見たLUNA SEAの5人

―具体的にレコーディングはどんな風にしたんですか?

INORAN:レコーディングする前にスティーヴとスカイプしたりとかしましたね。で、ファイルをスティーヴに送って、アイデアが浮かんだら「こうした方がいい」とか「これはどうしようか?」とか。SUGIZOがそこは本当にマメにやってた。俺はたまにイエ〜イって(笑)。

スティーヴ:(笑)。今風のやり方で同じ場所にいる必要はないわけで。でもさっきも言ったようにライブを観るというのは重要だったんで日本に来て、その時にみんなと一つテーブルを囲んで話すことが出来て、それが非常に重要だった。その時に一曲一曲ずつについて話したんだ。例えば11曲目の「so tender…」は「そこはもうちょっとフックが……」っていう話をしたし、2曲目の「PHILIA」では、SUGIZOのギターよりINORANのギターの方がいいとかね、本当にざっくばらんに、ファミリーの立場で話しをしたよね。ファミリーっていうのはダメだよってことも言える。そういう関係がちゃんと築き上げられたと思っているよ。


Photo by Azusa Takada

―先ほどコンポーザーとしてJさん、SUGIZOさん、そしてINORANさんのことを聞きましたが、プレイヤーとしての5人をどんな風に感じていますか?

スティーヴ:まず真矢は本当に素晴らしくて、もしかしたらこのアルバムで最重要人物かもしれない。本当にエネルギッシュで素晴らしいし、各パートで創意工夫がなされていて上手いなって思いましたね。それと、スネアが非常に日本人っぽい。Jはベーシスト以外の何者でもない、本当に歩くベースって感じ。ベースを擬人化したような、そういう存在だ。で、面白い話があるんだけど、曲にはだいたい最初は仮タイトルがついてくる。INORANの仮タイトルは「NapaValley」と言った感じで地名からとってあって素晴らしいんだ。SUGIZOはSUGIZOらしい「Beyond」とか「ETERNAL」とか。Jの仮タイトルは酷いんだ(笑)。「ベースイントロ」とかそういう感じでロマンチック度がゼロ(笑)。そこにも明確な差があったね。RYUICHIのことはフランク・シナトラと呼んでいるんだけど、本当に素晴らしいヴォーカリストだ。ただ正直に言うと、ライブを観る前に最初にLUNA SEAの音源が送られて聴いた時には、RYUICHIのビブラートが僕の好みではなかったんだ。だから「うーん……どうかな」って半信半疑で、ライブでちゃんといいものが見られるかな?ってちょっと不安ではあったんだけども、実際にライブを観たら「あっ、RYUICHIは本当に素晴らしいシンガーだ」ってことがそこでわかったんだ。その時に僕が気づいたのは、僕が感じた気持ちはバンドが悪かったわけではなくて自分の捉え方に問題があったっていうこと。RYUICHIの歌をいかに自分の力で活かすことができるが逆に自分の課題なんだってことはわかった。だから音楽とRYUICHのヴォーカルをいかにうまくミックスさせられるかも僕の課題だった。でもこのニューアルバムで自分なりにそれは出来たなと思っているよ。

INORAN:僕もそう思います。

スティーヴ:サンキュー! 続けると、SUGIZOはMr.ディテール。すべてがきちんとしている。彼のギタートーンの素晴らしいところは、聴いてSUGIZOのギターだとわかることだよ。それって大事なことなんだ。独特のサウンドがある。ちょっとブライアン・メイが入ってるかなと思うけど……。

INORAN:顔が?

スティーヴ:ハハハハ(笑)。独自のサウンドを持っていて素晴らしいと思う。そして本当にきちんとしてる。まあ行ったことないからわからないけど、想像するにSUGIZOの家に行ったらすべてきちっ、きちっと置いてあるんじゃないかなって思うなぁ。

INORAN:俺行ったことあるけど、CDがちゃんとアルファベット順に置いてある!

スティーヴ:やっぱり!!  えーと……誰か他にいたっけ? LUNA SEAって4ピースバンドでしょ?

INORAN:おーい(笑)!!

スティーヴ:ハハハ!!  INORANはMr.ロックンロール。ジョニー・マーが好きで、ちょっとキース・リチャーズみたいな感じのリズムギターだね。常にベースとドラムとかっちりあったリズムギターを弾いている。そしてINORAN自身も女の子みたいなお顔なのに女の子にモテモテだね。

INORAN:コメントしようがない(笑)。

スティーヴ:ハハハハ(笑)。本当にこのバンドは各メンバーがすごく強い個性の持ち主でね、それが素晴らしいと思っているんだ。こんな方々と仕事できて光栄だよ。


Photo by Azusa Takada

INORAN:こちらこそ光栄です。やっぱりスティーヴと一緒に作れたおかげで、メンバー個人個人も今までよりも、今までにないくらい自分を客観的に見れたと思う。お題をくれたりとかお題を一緒に作ったりすると今までのルーティーンを変えなきゃいけないでしょ。そういう時に例えばドラムの録り方とか、言われたときは多少は「え?」って思ったとこもあるんだろうけど、やってみたら「あっ」って自分を客観的に見ることができたと思うんだよね。それはすごく感謝してる。

スティーヴ:僕のやることはほんのちょっとで、実際の作業はバンドがやったんだよ。

INORAN:でもやっぱり、スティーヴと一緒にやって教わったことは、音楽制作だけじゃなくて人生にとっても大事なことだったと思うんだよね。自分を客観視してくれる出来事があったり、人が関与することで自分を客観視することで、成長が出来ると思うだよね。例えば自分が悩んでたりする時に、自分を愛さないと結局問題は解決しないわけで。結局自分次第じゃないですか。その自分を客観視できることの大切さを音楽を通して、学んだんだよね。で、それは人生にとってもすごく大事なことだから人生についても学んだ感じですね。

スティーヴ:それがまさに僕がやろうとしていたことなので、そう思っていただけて本当にありがたいです。確かに僕が手がけたのはアルバムですけども、それだけじゃなくてその後のバンドというか人間としてのみんなの未来、それの役にも立ってくれたらすごくいいなと思ってやってるんで、そういう風に伝わったのなら本当に嬉しい。サンキュー!

INORAN:本当にそれは5人それぞれがみんな学んだと思う。

スティーヴ:OK.Good!!

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