松田聖子や吉沢秋絵の曲を手がけた理由 プロデューサー/アレンジャーの瀬尾一三が語る

強く印象に残った女性シンガー・ソングライター、稲葉喜美子

田家:稲葉喜美子さんは横浜出身で、日本放送のフォーク番組『フォーク・ビレッジ』の出身だったと。

瀬尾:この人は気性の激しい人なんですけど、強い気性じゃなくて。感受性が強い人で、この時も曲が終わってから出てこないから気になって見たら泣いていて。

田家:なんとなくイメージはお酒とタバコって感じでしたけどね。

瀬尾:そうですね、とてもナイーブな人で。女性のシンガー・ソングライターの中でも好きなタイプですね。

田家:この曲はスタッフさんが選んだと思うんですけど、これが選ばれると嬉しいでしょう?

瀬尾:そうですね、「おっ、これ選んだか」って思いましたね。

田家:あまりヒットしたわけじゃなくて、でも個性的な人でしたよね。

瀬尾:やっぱり知って欲しかったし、こういう人もいるって知って欲しかったので。これを選んだ人には心で拍手しました(笑)。嬉しくて。

田家:でもこれ1983年ですよね。中島みゆきさんと出会う5年前。当時って稲葉喜美子と中島みゆきさんって当時のシーンでは重なるところがあったようにも思います。

瀬尾:そうですねえ。内情は違うところがありましたが、もしかしたら女性のシンガー・ソングライターへの、僕の耐性というか。順応できるようになったなと思いますね。

田家:それまでは男性が多くて女性シンガー・ソングライターはあまり手掛けてらっしゃらなかった?

瀬尾:アーティストの中でこういうタイプの人が初めてだったんです。強い人はたくさんいたんですけどね、誰とは言いませんが(笑)。

田家:その中でもこの方は強く印象に残ったと。お聴きいただいたのは稲葉喜美子さんで「ゆりこ」でした。続いて9曲目、吉沢秋絵 with おニャン子クラブで「なぜ? の嵐 」。

吉沢秋絵 with おニャン子クラブ「なぜ? の嵐 」


田家:いやーこの曲の流れが面白いですね。

瀬尾:そうですね。人間って本当に勝手だと思いますよ、そんなのは嫌だとか言いながらこういうのも時々やってみたくなるっていう人間の性(笑)。

田家:いろいろな曲を手掛けましたという例としては、これほど分かりやすい曲はないですね(笑)。『スケバン刑事Ⅱ-少女鉄仮面伝説-』の主題歌で、作詞が秋元康さん、作曲が山梨鐐平さん。藤岡孝章(元・まりちゃんズ)、板垣秀雄(元・ウィークエンド)と組んだ男性グループ「Do!」の山梨鐐平さんです。長渕さんの曲を書いたことありますもんね。そういうので選んだのかと思いました。

瀬尾:僕は選んでないからね(笑)。でも、それにしてもの並びは面白いですよね。

田家:そうですよね(笑)。河合奈保子さんとか中森明菜さんとか、富田靖子さん、工藤静香さんなども手掛けていたと。

瀬尾:さっきまでの話はなんだったんだってことですよね(笑)。

田家:さっきの話でいくと、この人たちはレコーディングに来てないってことですよね。

瀬尾:河合奈保子さんは来たかな、他は来てないですね(笑)。

田家:言っちゃった(笑)。9曲目は吉沢秋絵 with おニャン子クラブで「なぜ? の嵐 」でした。

田家:J-POP瀬尾一三2020年part2、70年代以降の日本の新しい音楽のアレンジャー・プロデューサーの先駆け瀬尾一三さんに特集する1カ月。今週はPart3『時代を創った名曲たち 3~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』前編でした。今流れているのは竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」。今週は前編でしたが、まだ中島みゆきさんが出てきませんでしたね。1作目の時はアイドルとか全然出てこなかったでしょう。それはちょっと、入れないようにしてたっていう……?

瀬尾:まあ僕は選んでないですけどね、でも他に入れたいのがあったんじゃないですかね。別に避けてた訳ではないと思いますね。

田家:この3作目によって全貌が見えてくるっていう(笑)。全貌ということで言うとですね、2月10日に瀬尾さんの本が出版されます。『音楽と契約した男 瀬尾一三』瀬尾一三を知らずに日本の音楽は語れないですね。

瀬尾:そんなことないですよ、宣伝の方が選んでくれたので。

田家:スペシャル対談も4組ありまして、萩田光雄さん、松任谷正隆さん、山下達郎さん、亀田誠治さん。どんなお話をされました?

瀬尾:楽しかったですよ。全員バラバラでやって、彼らもお互いを知ってないから、僕だけが各々を知っているので、各々にコンタクトを取ってOKもらって3時間くらいそれぞれ喋ってましたね。皆やっぱり同じ業種で喋るってことがないみたいで、お互いのあるある話とか、4人ともいろいろなことを結構喋ってくれました。

田家:へえ〜。来週はこの本についても深く掘り下げたいと思います。今週はこの辺りで。


<INFORMATION>

瀬尾一三
1969年フォークグループ「愚」として活動。1973年ソロシンガーとしてアルバム『獏』を発売。同年に『LIVE`73』を吉田拓郎と共同プロデュース。その後、中島みゆきをはじめ、吉田拓郎、長渕剛、德永英明 他、今作品に収録された日本のポップス、ロックシーンの黎明期から現在まで燦然と光輝くアーティストたちの作品のアレンジ(編曲)やプロデュースを手掛け、中島みゆきにおいてはコンサート、『夜会』『夜会工場』の音楽プロデュースも務めている。2017年、自身の作品集第1弾『「時代を創った名曲たち」~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』を発売し、好評を博した。2019年に第2弾、2020年1月に第3弾の発売が決定。その同時期に音楽活動50周年のアーカイブ書籍の発売も予定されている。
https://www.yamahamusic.co.jp/files/34/ymc/seo_superdigest3/?ima=0928#responsive

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソナリティとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
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音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
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