indigo la End、初の中国公演で学んだ「海外に出ていく意味」

ホーム感に包まれた初日の北京公演

「中国のファン一同より」と書かれたカードが添えられたスタンド花が目に付く入場口には、熱心なファンが列を作り、開場とともに最前列へ。開演時間の20時半前には、ほぼほぼフロアが埋まっていた。客層は10代後半から20代前半の若い女性客が目立ち、開場時間中に何人かに話を聞いてみると(簡単な英語での会話は全く問題ない)、やはりWeiboやストリーミングサービス、ネットで見る音楽番組などを通じて日本の音楽をチェックしているそうで、好きな日本のアーティストを聞くと、RADWIMPS、ONE OK ROCK、King Gnuといった名前が挙がる。初期の重要曲である「素晴らしい世界」をきっかけにインディゴが好きになったという日本語も堪能なコアファンは、開演を待ちきれない様子だった。

一方、楽屋ではメンバーがファストフードで空腹を満たし、現地のプロモーターのリーさんと中国語のレッスンを開始。川谷は持参のポケトークを使ってみるも、思うように使いこなせず、「難し過ぎ! 呪文みたい」と音を上げつつ、リーさんから教わった「盛り上がってますか?」を意味する「ダージャーカイシンマ?」を何度も復唱し、「あとは後鳥さんに任せよう」と笑う。

開演時刻の20時半となり、客電が消え、メンバーがステージに姿を現すと、この日を待ちわびたオーディエンスからの大きな拍手で迎えられ、「花傘」でライブがスタート。2曲目の「想いきり」の前には、後鳥が「ダージャーハオ! ウォシーindigo la End!」と中国語で挨拶をし、その後もイントロの度にワッと歓声が上がる。川谷は曲終わりにボソッと「シェイシェイ」とつぶやく程度で、シャイな性格が見て取れるが、隣の後鳥が序盤から熱っぽい演奏でリードし、彼のアクションにオーディエンスがしっかりリアクションすることで、いいムードが生まれていたように思う。バンドの中では最年長で、取材中は寡黙な印象もあるが、初めてのオーディエンスを前に演奏する、いわゆるアウェイのときに燃えるタイプかもしれない(実際は、アウェイではなくホームと言える空間だったが)。


Photo by Kazushi Toyota


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後鳥:最初は「はじめだけかな?」とも思ったんですよ。みんなはじめは元気なんだけど、だんだん失速していくパターンもあるから(笑)。でもずっと元気で、むしろだんだん盛り上がってくれて、安心しました。

栄太郎:大丈夫だとは思いつつ、盛り上がらない可能性もあるっていう緊張感は持ってたんですけど……必要なかったですね(笑)。客電が消えたときの歓声で、「これはいつもと違うな」って思ったし、ちょっと手を振っただけで、ギャーってなってて、「日本で外タレを見るときの感覚なのかな」って思うと、楽しかったです。あんまりテンション上げ過ぎないようにとも思ってたけど……あれは上がっちゃいますよ。



この日のセットリストは本編17曲中の9曲が『濡れゆく私小説』からの楽曲で、秋のツアーのセットリストにアレンジを加えたもの。東京公演が年明けということもあり、僕は今回のツアーをまだ観れていなかったので、アルバム収録曲の多くを初めて生で体験したのだが、これがすこぶる良い。長田が奇妙なフレーズを聴かせる「秋雨の降り方がいじらしい」は、間奏で狂騒的な盛り上がりを見せ、ベースの歪み、唐突な転調、ヒップホップビート、ラップパート、アウトロのジャズパートと、要素をこれでもかと盛り込みながら、あくまでキャッチーな「ラッパーの涙」もいいし、バラードの「通り恋」はやはり名曲。上海でのリハ後に制作チームに話を聞いたところ、音響面に関しては、ホールツアーでより繊細な音作りができた経験も大きかったという。


Photo by Kazushi Toyota


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オーディエンスの盛り上がりにさらに拍車がかかったのが、ライブ後半の「瞳に映らない」からの流れ。ここまで小声で「シェイシェイ」としか話さなかった川谷が、初めて大きな声で「ダージャーカイシンマ?」と呼びかけると、「イェー!」とこれまで以上の熱狂的なリアクションが起こる。さらに「心の実」を演奏し終えると、「ドラムス、エイタロウサトウ!」と海外仕様のメンバー紹介から、ドラムソロを経て、「名もなきハッピーエンド」へ。サビでは長田と後鳥もステージ前方へと出て、オーディエンスを盛り上げていく。

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