未解決事件から誤認逮捕まで、2010年代の「犯罪ドキュメンタリー」を象徴する5つの事件

左から:スティーヴン・エイヴリー、アマンダ・ノックス、アドナン・サイアード 2010年代の犯罪ドキュメンタリーの登場人物(Photo by Netflix; Antonio Calanni/AP/Shutterstock; HBO)

2010年代は、犯罪ドキュメンタリーに対する世間一般の関心が沸点に達し、執着へと変わった10年だった。無実の罪を着せられたケースから、冤罪であってほしいと願いたくなるような心優しき殺人犯まで、ドキュメンタリーであれ、ポッドキャストであれ、書籍であれ、人間の闇に切り込むものに皆が魅了された。

だがこの10年、犯罪事件をどう解釈するか――そして事件の当事者たちが自分自身をどう理解しているか――という点でターニングポイントとなる出来事がいくつかあった。以下、過去10年の事件簿の中から、特に突出した5件を挙げてみよう。

その1
2011年:ウェスト・メンフィス3が釈放

2010年代序盤、ロックスターと殺人容疑者が顔を揃えた。ウェスト・メンフィス3と呼ばれた3人組が、無実の罪で20年間服役した後に釈放されたのだ。3人はメンフィスでエディ・ヴェダー主催のパーティで釈放を祝い、ディキシー・チックスのナタリー・メインズら著名人も駆け付けた。

10代だったダミアン・エコールズ、ジェシー・ミスケリー・ジュニア、ジェイソン・ボールドウィンの3人は、1993年、アーカンソーの小川で死体となって発見された8歳のカブスカウトの男児3人の殺害で有罪となった。検察は、悪魔崇拝の儀式のために殺されたと断定。正当性に疑問が残る12時間の尋問で、精神障害を抱えていたミスケリーが殺人を自供した。一方検察側は、3人がいかがわしい嗜好を持っていた証拠として、メタリカなどのバンドの大ファンだったことを挙げた。ウィッカ(魔女術)に関心を寄せていたこともある――そのため主犯格と見なされた――エコールズには死刑判決が言い渡され、他の2人は終身刑に科せられた。

3人の裁判は90年代に起きた“悪魔的儀式虐待問題の格好の餌食となったが、1996年にHBOで放映された『Paradise Lost: The Child Murders at Robin Hood Hills(原題)』をきっかけに、彼らの無実があらためて取り沙汰された。この作品は、殺人に関するドキュメンタリーや書籍の走りのひとつ。製作者のジョー・バーリンジャー氏とブルース・シノフスキー氏は身の毛もよだつこの事件を公平な視点で描こうとしたが、3人が本当に犯人なのかという点には疑問を抱かざるを得なかった。



「製作にあたり、僕たちは観客を陪審のように扱うよう心がけました」と、放映20年目にあたってバーリンジャー氏はこう述べている。「全ての疑問に答えを提示するのではありません。自分の考え方を他人に納得させるには、こうした公平なやり方で、観客に判断をゆだねるのが一番です。映画には(エコールズの)有罪に疑問を抱かせる場面が多数登場します……映像を見ていただければ、彼らが公正な裁判を受けられなかった、あるいは彼らが無実に違いないという結論に誰もが達するはずです。製作側としても、他の作品よりずっと力強く、説得力のある体験ですよ……感動的で、非常に意欲が湧きました」

Translated by Akiko Kato

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