未解決事件から誤認逮捕まで、2010年代の「犯罪ドキュメンタリー」を象徴する5つの事件

特に怒りを露わにしたミュージシャンたち

3人の音楽の嗜好が殺人の引き金になったという説に、ミュージシャンたちは特に激しくいきり立った。『Paradise Lost』は本編にメタリカの楽曲を使用し、ラーズ・ウルリッヒはローリングストーン誌にこう語った。「それが俺たちにできるせめてものことだった。彼らは社会の規範から外れたアウトサイダーだったんだ。彼らの気持ちが痛いほどよくわかるよ。俺たちみんながそうさ」

パティ・スミス、ヘンリー・ロリンズ、トム・ウェイツ、オジー・オズボーンらも3人を支援した。ロリンズはチャリティーコンサートを企画したり、2002年にはイギー・ポップとレミー・キルミスターと組んで、コラボレーションアルバム『Rise Above:24 Black Flag Songs to Benefit the West Memphis Three』をリリースした。

「裁判はあまりにひどいものだった」と、ロリンズはローリングストーン誌に語った。「気がつけば明け方3時30分に、ダミアンのことを考えていることがよくあった。ひょっとしたら自分だったかもしれないんだ。彼と同じレコードを持っていたし、俺も不満を抱えたティーンエイジャーだったからね」 。さらにロリンズは2005年までに、DNA検査の資金として10万ドルの募金をかき集めた(明らかに3人を殺人と結びつけるDNAの証拠はなかった――ロイター通信によると、DNAは3つの身元不不明者のものと一致した)。

2010年になる頃には、ジョニー・デップなどさらに大勢のミュージシャンや有名人が活動に加わった。メインズとヴェダーは、スミスやデップと共にリトル・ロックのチャリティコンサートでヘッドライナーを務める一方、ヴェダーは2人の弁護士スティーヴン・ブラガ氏と共に働きかけ、事件の再捜査を求めた。

新たなDNAの証拠が見つかる中、3人の弁護チームは2011年、全員が司法取引に応じることを条件に3人の釈放を勝ち取った――その代わり3人は無罪を主張しつつも、有罪を認めなくてはならなかった。

「決して完全勝利ではありません」と、当時エコールズはこう述べた。「ですが少なくとも、ある部分では踏ん切りをつけることができました。この先、新しい証拠を持ち出すこともできるし、これまで同様に調査を続けることもできる。汚名を晴らすことだってできます。唯一の違いは、刑務所に閉じ込められた状態ではなく、刑務所の外でそれができるということだけです」
3人の釈放は間違いなく、犯罪ドキュメンタリーの次の10年の方向性を定めた――しかるべき組織がいれば、冤罪で有罪となった人々にも希望の道が残っているのだと。映画製作者や著名人、活動家らはみな、次のウェスト・メンフィス3探しに奔走した。運悪く間違った場所にたまたま居合わせたがために、無実の罪を着せられたごく普通の人々を。

Translated by Akiko Kato

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