未解決事件から誤認逮捕まで、2010年代の「犯罪ドキュメンタリー」を象徴する5つの事件

その3
2015年:『殺人者への道』

去る10月、キム・カーダシアン・ウェストによって話題となったのが、Orange Crushとジョン・シナとキャットウーマンをこよなく愛するウィスコンシン州の30歳、男性ブレンダン・ダシーだ――彼は17歳の時に、殺人と性的暴行で有罪判決を受けた。ウェストはウィスコンシン州のトニー・エヴァーズ州知事に手書きのメモをリツイートした。メモにはダシー本人が自分のお気に入りを列挙した上で、恩赦を求めていた。「エヴァーズ州知事、どうかこの手紙を読んでください」と、リアリティ番組のスターはエヴァーズ州知事――そして6220万人のフォロワーに訴えた。

殺人者とセレブの奇妙な取り合わせを生んだのは、2015年のNetflixシリーズ『殺人者への道』。全米1900万人の視聴者が安楽椅子探偵へと化した、犯罪ドキュメンタリー番組だ。



『殺人者への道』は、有罪判決を受けた殺人犯スティーヴン・エイヴリーとブレンダン・ダシーを中心に展開する。エイヴリーは無実の罪で20年間服役した後――テレサ・ハルバックさん殺害で有罪となり、結局塀の中へ逆戻りした。ハルバックさんは自動車専門誌Auto Trader Magazineのカメラマンで、エイヴリーが所有していたビンテージカーの撮影に訪れていた。

エイヴリーの甥であるダシーは、ハルバックさんを襲う叔父に手を貸したとして有罪となった。2シーズンで構成された番組はやや一方的な見方に偏っており、エイヴリーとダシーは卑劣な地元警察の犠牲者として描かれていた。2010年中頃、警察に対する世間の批判が徐々に高まり、視聴者は警察を悪者だと決めてかかろうとしていた。

とはいえ、エイヴリーと彼の仲間は必ずしもドキュメンタリーがほのめかすような悲劇の人物ではない。USAトゥデイ誌によれば、ドキュメンタリーにはエイヴリーの罪を示すいくつかの細かい点が抜け落ちていた。まず、ハルバックさんの車にはエイヴリーの汗が付着していた。ハルバックさんはかねてよりエイヴリーが怖いと上司に語っていたにも関わらず、エイヴリーはハルバックさんが彼の愛車の写真を撮影するよう強く言っていた。さらに彼の自宅付近から、ハルバックさんの所持品が発見された。そして必死の努力にも関わらず、エイヴリーは一度ならず再審請求を却下されている。

ダシーに関しては、事情はやや怪しげだ。自供当時彼は10代――同年代の若者よりもやや精神年齢が低かった。多くの人々が、彼は警察にハルバックさん殺害を幇助したと自供させられたのだと考えた。CNNによると、彼はのちに自供を撤回し、2つの連邦裁判所は釈放または再審を提示した。だが結局裁定は覆され、最高裁判所も審理再開を却下した。

Translated by Akiko Kato

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