未解決事件から誤認逮捕まで、2010年代の「犯罪ドキュメンタリー」を象徴する5つの事件

その4
2016年:『アマンダ・ノックス』

タブロイド紙の犠牲者から一転、非営利団体イノセンス・プロジェクトの代弁者へ。アマンダ・ノックスの物語は犯罪に固執する我々のダークな一面に鋭いメスを入れた。釈放後、濡れ衣を着せられた人々のために活動したいと思った彼女の熱意は、自分の言い分を主張する新たな方法を編み出した。

2016年のNetflixのドキュメンタリー『アマンダ・ノックス』で描かれている通り、ノックスのルームメイトだったメレディス・カーチャーさんは2007年、イタリア留学中に殺害された。ノックスは恋人のラッファエレ・ソレチトと共に殺人で有罪となり、4年近くイタリアの刑務所に服役した後、2011年に釈放された。再審が行われ(その間ノックスはアメリカ在留が認められた)、2015年に無罪が確定。知人のルディ・ゲーデが真犯人として有罪判決を受け、懲役16年で現在服役中だ。



ジェニファー・レヴィンさん同様――1986年の“プレッピー殺人事件”の被害者――実際にノックスは誰も殺してなどいないにも関わらず、外見と性に奔放な振る舞いゆえに悪者扱いされ、くだらないMySpaceのユーザー名を茶化して“フォクシー・ノクシー”というニックネームで呼ばれた。「あの子は左右別々の靴下を履いちゃうくらい、ちょっと頭が悪いのよ」と、友人のマディソン・パクストンは2011年にローリングストーン誌に語っている。「私だったら、彼女を表現するのにセクシーって言葉は使わないわ」 。『アマンダ・ノックス』では殺人事件そのものよりも、メディアでのノックスの描かれ方に恐怖が潜んでいる。

マスコミでの扱われ方にも関わらず、無罪放免となったノックスはあえて世間の目から逃れることをせず、代わりにイノセント・プロジェクトと一緒に活動する道を選んだ。「信じていただけないかもしれませんが、弁護士さんが大勢いる部屋にいるとすごく安心するんです」と、2017年に行われたウェストサイド弁護士会のセミナーで彼女は言った。「確証バイアスやフェイクニュース、エコーチャンバー現象に世間の目が向けられるようになる以前は、これらは私たちの問題でした。刑事司法制度に携わる皆さんのような方々と、私のような当事者しか問題に思っていなかったのです」

Translated by Akiko Kato

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