バンド・ブランド戦略で永遠に生き続けるクラシック・ロック

ホログラムのおかげで生き返り、ツアーを続けるレジェンド(フランク・ザッパ、ロイ・オービソン)もいれば、生き残ったメンバー同士で再結成したバンド(デッド・アンド・カンパニー)もある。さらにブロードウェイのミュージカルとなったミュージシャン(ティナ・ターナー、ザ・テンプテーションズ)など、さまざまな形で生き続けている。バイタリティ溢れるミュージシャンたちは、自叙伝を書いたり、ウィスキーのブランドを立ち上げたりしている。また映画のサウンドトラック向けにリミックスした楽曲をライセンス提供したり、昔の作品をリイシューして復活させたりもしている。さらに、自分よりも若いヒットメーカーと手を組むミュージシャンもいる。そしておそらく最も驚くべき事実は、ガンズ・アンド・ローゼズやエアロスミスらを見ればわかる通り、「ラスベガス・レジデンシー(ラスベガスでの長期公演)」という言葉がもはや「ミュージシャンの終焉」を意味する訳ではないということだ。この10年で映画『ボヘミアン・ラプソディ』のほかにも、ブライアン・ウィルソン、ザ・ランナウェイズ、ジェームズ・ブラウン、N.W.A.ら多くのミュージシャンの伝記映画が成功している。エルトン・ジョンは引退ツアーに合わせて伝記映画『ロケットマン』を公開し、全世界合計で2億ドル(約220億円)の興行収入を上げた。

時は刻々と進み、クラシックロックはどんどん古くなっていくかもしれない。しかしバンドをブランド化することで、クラシックロックのミュージシャンが永遠に生き続ける道を見出したのだ。

「劇的な変化は、メディアの集中化が進行していることだ」と、Umeの社長兼CEOのブルース・レスニコフは言う。「アーティストのレコーディングやライヴのキャリアとストーリーテリングとの新たな関係性が生まれている。彼らの映画やドキュメンタリーがそれを物語っている。戦略的に言えば、我々が行なっているのは作品を売り出すことではなく、ブランドとの提携やブランド・マネジメントだ。ビッグなアーティストほどフランチャイズやブランドを持っている。だから我々もただレコード製作に関わるだけでなく、今ではメジャーなアーティストにフランチャイズ専門チームを付けている。だからクイーンでもエルトン・ジョンでも、或いはザ・ビートルズだろうがザ・ローリング・ストーンズだろうが、我々はフランチャイズ権を得てビジネスパートナーとして提携しているのだ。このやり方は第一線のレーベルと現代のアーティストとの関係に酷似している。」

「だから我々はアーティストのマネジメントと共に、全てのメディアを一点に集中させる戦略を綿密に計画している」とレスニコフは続ける。「ツアー、映画、本、音楽、ストリーミングなど、戦略はアーティストによってさまざまだ。その中で際立つために一役買っているのが流行りのデジタルテクノロジーで、今ではファンやオーディエンスに直接働きかけ、以前よりも幅広く若い世代に広めることができる。特に広く若い世代へという点では、この10年で大きく変わったと思う」。

クイーンが(アダム)ランバートと共演したのが2009年のことで、その後2014年に本格的なツアーをスタートさせ、年間数十回のコンサートをこなした。ランバートはフレディ・マーキュリーの単なるモノマネでなくバンドのプレイも素晴らしいという評判が広まると、マディソン・スクエア・ガーデンでツアーを締めくくるようなバンドになった。同じように他のクラシックロックのバンドも、主要メンバー抜きで新たな足掛かりを見出した。フリートウッド・マックは、2018年にリンジー・バッキンガムが脱退したものの道を踏み誤ることなく、元トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのマイク・キャンベルと元クラウデッド・ハウスのニール・フィンを加入させて、アリーナツアーを続けた。またイーグルスは、2016年にグレン・フライが亡くなって間もなく彼の息子ディーコン・フライとヴィンス・ギルを迎えてライヴ活動を再開し、ホテル・カリフォルニア・ツアーを成功させた。フリートウッド・マックとイーグルスのファンはどちらもライヴで彼らのプレイが観られることを歓迎し、1枚100ドル(約1万1000円)の高額なチケット料金にも文句を言う者はいなかった。

Translated by Smokva Tokyo

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