ワインスタイン裁判、やつれた被告が頼る歩行器と女性弁護士

自身の性的暴行裁判の陪審員選任後、ドナ・ロトゥンノ弁護士(右)に伴われて退廷するハーヴェイ・ワインスタイン被告。ニューヨークにて(Photo by Richard Drew/AP/Shutterstock)

米ハリウッドの元大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン被告の性犯罪疑惑をめぐる公判が始まった。歩行器を伴って出廷し、法廷内で携帯電話を使用して判事から叱責を受けた。その上、ロサンゼルスを舞台にした裁判劇の第2章の準備もすでに動き始めている。いったい何が起きているのか?

・ワインスタイン被告の歩行器:本当に必要なのか、それとも同情を誘う小道具か?

何十年もでっぷりした体格が目印で、レッドカーペットや授賞式では周囲を威圧する存在だったワインスタイン被告だが、12月の事前審理に現れた姿は弱々しく、やつれていた。特に驚かされたのは、歩行器に頼っていたことだ。杖ではなく、今にも老人ホーム行きかと思わせるような、後ろ脚にテニスボールを固定した四脚歩行器だ。

ワインスタイン被告が歩行器で法廷に姿を現した瞬間、疑問が駆け巡った。ワインスタイン被告は本当にあれが必要なのか? それとも、今や悪名高きプロデューサーへの同情を集めようという被告側弁護士の常套手段か? アトランティック誌からタブロイド紙までみんなが憶測を巡らせた結果、答えは恐らくどちらも正解。

噂によると、ワインスタイン被告は8月に交通事故に遭い、その後何らかの背骨の手術を受けたらしい。歩行器姿のプロデューサーの写真が最初に世に出たのは昨年10月。その後、12月の事前公聴会でも何度か登場した。だが同じ月にスーパーマーケットのTargetを訪れた際には、歩行器無しで買い物している姿を激写されている。

統一見解としては、ワインスタイン被告が必ずしも歩行器が必要なわけではない――事故からだいぶ経つのだから当然だが――としても、彼が歩行器を持っていてもおかしくはない、というところで落ち着いている。だが、一生を塀の中で過ごすことになるような性犯罪裁判の重みは、彼の背中に良い効果はもたらしていないだろう。

・4台ある携帯電話のうち1台を法廷で使用した被告に、刑務所に放り込むと判事が警告

陪審員選任の2日目、法廷内は一時騒然となった。ワインスタイン被告の弁護団が、公判開始からわずか数日間のジェームズ・バーク判事の「不当な対応」を列挙した7ページに渡る書簡を提出し、裁判官忌避を請求したのだ。ここで問題となっているのは、元映画業界のドンが審理中に所有する4台の携帯電話のうち1台で携帯メールを送ったため、バーク判事が警告を出したことだ。

バーク判事は先の公聴会で、公判中に携帯電話を使用した場合は被告人の保釈条件を変更することにもなりかねない、と被告側弁護団に警告していた。ワインスタイン被告は現在500万ドルで保釈中の身だ。だが被告がこの警告を無視したため、バーク判事はワインスタイン氏を法廷で叱責した。「あなたはこのような形で、残りの人生を刑務所で過ごしたいのですか? 法廷規則に違反して、メールを打ってまで?」

ワインスタイン被告の弁護団は、バーク判事の叱責は「感情を逆なで」するもので、偏見の現れだと捉えたが、判事は請求を却下した。「私は断じて、あなた方の依頼人を終身刑にするぞと言ったつもりはありません。有罪か、無罪か、起訴内容に関して無実か、先入観を抱いているわけでもありません」と、バーク判事は書面で反論した。「私はただ、被告が今後は携帯電話の使用を止めるよう、しっかり釘を刺しておきたかったのです」

ワインスタイン被告の弁護士アーサー・エイダラ氏が後に明らかにしたところでは、携帯電話の一件はロサンゼルスでも性犯罪で起訴されたという第一報のせいだったそうだ。

Translated by Akiko Kato

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