鮎川誠が語ったシナロケの矜持「ロックの世界はタイムレス、エイジレス」

カバーではなく「身近であった曲」を自分らのフィルターに通す

―この7曲の選曲は、シーナさんとお二人で?

うん。その日だけの、パッと集まってあれやろうっちゅう時には、やっぱ共通言語やないけど、ブルースやったりロックのスタンダードやったり。それとか、変わった曲ではあるけれど、すぐにみんながやれる曲っちゅうのがいつもパッと頭にあるやろ? そう言う中で「I Put A Spell On You」やら「Baby I’m Yours」やら選んどったからね。俺たちロケッツはジェームズ・ブラウンの「I Got You」をやろうぜとか、「You Really Got Me」を入れようとか、いつも言ってたんだけど、カバーっちゅう感じよりも、もう身に入ってきとるもの。せやけん、自分たちがそれをぐしゃぐしゃっと自分らのフィルターを通してまたバンっと出すっちゅう。だから、シーナ&ロケッツはカバーっちゅう言い方ではあんまりしてこなかったし、今までも言うてない。本当に身近にあった曲だし、俺たちはそういうガキの頃から憧れて聴いてきた曲を自分らがまたやりよるっちゅうのは、もう喜び以外の何物でもないんよ。新曲作るのも最高に楽しいけど、もう大好きな曲を自分らのできる範囲で、もう限界があるからね、でも演奏するっちゅうのはまぁバンドやからできるっちゅうか、いつも一緒のメンバーやけ。いつも同じ曲をみんなで聴いたりしよるからそういうのができるっちゅうのは、まぁ特権みたいな。寄せ集めのメンバーでしても大変やろ。一つの曲を一緒にやるっちゅうのは、とてもエネルギーいるけど、ロケッツは42年も一緒にやってきて、まぁメンバーが出たり入ったりもあったにしても、奈良君、川嶋君、シーナ、俺っちゅうのは、もう本当にデビューの時のメンバーであるし。博多時代もそれより前もずっと一緒だから。そういう中でやった音だね。

―アルバム最初の7曲、ビクタースタジオでのセッションで言うと、やっぱりクライマックスが「レモンティー」だと思います。

結果的にはシーナが歌った最後の「レモンティー」なんよ。でも、さっきも言ったけど、今日の「レモンティー」と言うぐらいの軽い気持ちで、軽い気持ちっていうか、いつもこの曲は大切な曲やし。一応黄金のフォームがあるんだけど、イントロでちょっとガチャガチャ遊んで、もうあとは突っ走って、ジャンジャンジャン、ヘーイで終わるだけ。まぁなんちゅうか、日常の「レモンティー」って感じではあった。特にすごい演奏を入れようとか、僕らも思いもないし、ただ愛情だけやね。僕らと同じように年を重ねてきた可愛い曲ですね。まぁせいのでやって、いつも通りの「レモンティー」。

―聴き返してみて感じたことは?

一番感じたことは、シーナの歌すごいなって思った(笑)。すごいっちゅうのは歌いぷりっていうか、今度のアルバムでも青臭いところあるんですけど、なんちゅうか雑なところとかね。せいので録って。でもその全てが愛おしいんですよね。まぁ元々シーナが『私が歌っちゃやろうか』って言ってボーカルになってくれたんよ。僕は別にボーカルを探していたわけでもなんでもない、俺が歌おうと思って東京に出てきて、バンドの動きをしよった時に、「ボーカルがいるなら私が歌ってあげるよ」っていうような上から目線で言われて。博多時代もずっと一緒に住んどったし、同じレコードを聴いて。新譜を買ってくれば封を開けて、まず聴く時にはいつも俺とシーナで聴きよった。こんなに気心が分かりおうたボーカルはおらんから、頼むねって感じでシーナは歌を歌い出したんだけど。多分シーナ自身も、いわゆるキャリアが全然ないこと、突然歌うっちゅうことに……うーん、言葉がちょっと見つからんな。下積みをずっと続けてきたり、ボーカリストを目指して、いろんな場数を踏んだりやってない。突然歌おうかってなったら、いきなりエルヴィス・コステロのライブ前座に俺らが出ることになって、それで初めて人前で歌い出したっていうような。突然歌い出した人やったから。俺はそれでいいと思うんだけど、一応歌を歌う人っちゅうのはそれなりにいろんな勉強をするやん。発声とか。でもそういうのとか、人前に立つっちゅう場馴れとか、そういうのを飛び越して一気にバーンと歌い出した人ならではの、無手勝流の自由さと、ロックが好きやけぇやりよるっちゅう、そのロック愛みたいのがアルバム最初の7曲、それからそれまでやってきた18曲を入れたけど、もうどの歌もやっぱシーナの歌が面白いと思って聴いています。

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