鮎川誠が語ったシナロケの矜持「ロックの世界はタイムレス、エイジレス」

シーナの歌は唯一無二

―シーナさんの歌は完全オリジナルな故に唯一無二なんでしょうね。

自分の中で、もう自分の歌と思っているのよね。憧れのスターの歌をカバーではあるけれど歌う、その曲をどう作るかっちゅうよりも、その中に飛び込んで歌いよる自分が嬉しくてたまらないっちゅう。僕もそうです。こんな曲やれるわけないやんっちゅうような下手くそでも、その中に飛び込んでやる喜びの中で有頂天になってしまうっちゅうような、そんなものが感じられる気がします。

―シーナさんは歌うことに関して自分はちゃんと勉強してきてないからって、ちょっと負い目みたいのを感じていとところはあったんですか?

ちょっとあったね。偉大な先輩、カルメンマキとか女性ボーカル女性ロッカー金子マリちゃん……いろんな人たちが活躍しよるのを、僕ら福岡でずっと見よったけんね。ユーミン、吉田美奈子、女性が素晴らしい歌を歌う。ロッカーやらシティミュージックやら作りよる偉大な人たちがいっぱいおる。そういう人たちとは全然違うっちゅうようなことを思っとったんやない?突然私が歌うっちゅうだけの世界。もう自分で決めるっちゅう。ただそれだけで、人から頼まれた訳でも選ばれた訳でもないし。やけそういう意味でもパンク的やね。

―アルバムの資料によれば、実はシーナさん、グループサウンズが好きだったんですね。少し意外ではありました。

意外ではなく、ある意味グループサウンズが本当の日本のロックの始まりやったと思う。バンドの喜びやら楽しみ、憧れを教えてくれたのは、それはジミヘンやらツェッペリンやらオーティスレディングかもしらんけど、日本におったあのグループの人たちが僕らは憧れやったちゅうのはもう当然やし。で、シーナは女学生たちの間で、ショーケンだジュリーだってキャーキャー言いよったのは当然のことやしさ。でもそれだけやないで、彼女はそれこそ今言うたオーティスレディングやらツェッペリンやらをボンボン家で聴きよったって言いよるけど。まぁ寺内タケシ、など偉大な師匠がいっぱいおるわね、GSの世界は。

―その中で今回のアルバムにはテンプターズの「今日を生きよう」が収録されていますね。

うん。GSの「僕のマリー」っちゅうのを親戚の集まりごとでシーナがカラオケで歌いよるのを聴いた時、ちょっとびっくりして。上手で。上手っちゅうのじゃないけど感情が、歌いっぷりがさ、ジュリーのようでありジュリーとは全然違う、もうシーナ流の歌い方しよって。あぁ、いいなぁとか思って、いつかそういうGSの大好きな曲を純粋な気持ちで歌いたいなぁとか思いよる時の候補曲の一つやったんよね。この「今日を生きよう」を歌ってって頼んだのは俺と思う。

―そうなんですか。シーナさんから言ったんじゃなくて鮎川さんが?てっきりシーナさんが歌いたいっておっしゃったと思っていたんですが。

ただ僕たちもやっぱりパンクバンドのアティチュードっちゅう大切にしてるので、ファンの人たちにもあんまりGSにおもねいたような風になるのもちょっと違う感んじがするかなと思って、慎重になってたんですよ。なんちゅうか、すぐ色付けで、GS専門のバンドもおるし、それとかテケテケ、サーフロック専門もおるし。僕らそういう風なアプローチじゃ元々ないからね。全部もう面白いと思ったやつをロケッツのフィルターの中にバンっと入れて、グルグル回してバンって出す感じやけ。でも「今日を生きよう」は、すごい思い出の曲やし。

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