鮎川誠が語ったシナロケの矜持「ロックの世界はタイムレス、エイジレス」

アルバム・タイトル「LIVE FOR TODAY!」の由来

―その「今日を生きよう」が今回のアルバム・タイトル『LIVE FOR TODAY!』になってるんですね。

うん、タイトルに頂いたのね。やっぱし今日しかないっちゅうのは、僕らはずっとそれを思って二度とできないことを、今日っていう一日はもう二度とできん、そういう40年やったと思うし、自分らのバンドも。なんの保証もないまま東京へ飛び出してきた、それで当たり前と思っとるし。お膳をされながら東京へ出て行ってもロックはやれんやったろうと思う。今日やらんやったら明日は僕らはもう九州に吹き飛ばされとるっちゅう、いつも背中合わせでやってきたバンドやから。招聘された訳でもなんでもないし、契約金を積まれてレコード会社から来なさいって言われた訳でもないし。もうただ飛び出してきて、貯金を握りしめて、これのうなるまでは頑張ろうって。

―ちなみにいくら貯金を握りしめてきたんですか?

貯金ではなかったんですよ。うちの母が亡くなった時に貯金通帳に入っとった50万ぐらいを、僕はそれを「母ちゃんもろうて行くぜ」ちゅうて東京に来たの。

―それで住まいやら全てをなんとかしたんですか?

うん。へへ。

―アルバムの話からずれまずが、40年間で心折れて辞めようと思ったことは一度もなかったんですか?

もう全然ない。「今日を生きよう」、まさにそうですね。今日ロケッツで生きられたっちゅう喜びばっかり。明日も生かしときたい。吹き飛ばされるのは簡単やけど、辞めるっちゅうたらもっと簡単よね。自分が辞めればもう全部終わりやし。そやけ、やるかやらんか、やる!もうそれをいつも口癖に毎日生きとったね。簡単なんよ、辞めるのは簡単。けど他に何をやる?っちゅうのもあったし(笑)。最高のロックを演奏して、仕事をもらえて、ファンと一緒に最高の時間を過ごせて味を占めたら、もう辞められんよね(笑)。

―確かに! 今回のアルバムの話に戻ると、サンハウスをカバーしているのも感涙です。

シーナと出会った時は、サンハウスはまだブルースバンドで、出来て3カ月目のステージをしよった頃かな。まぁ半年ぐらい経っとったのか、バンド作って、演奏しだして。で、シーナがサンハウスを褒めてくれた。当時、シーナは夏休みを利用して、東京やら琶湖で大きなロックフェスティバルがあってそれを観た帰りとか言いよったけど。東京でも琵琶湖でもあんまり成果がなかったらしくてね(笑)、いいロックが体験できんやったけど、真っ直ぐ家に帰る前にちょっと博多に寄って行こうって言うて来てくれたって話しよったんよね。僕らサンハウスが演奏している店にフラッと入ったら「ここどこ?」って思ったって言うてくれたんよ。今回の旅行で東京やら、いろいろロック求めて行ったけど、あんたたちのが一番良かったって言ってくれたけ、「わ! 気に入ったね」って言って。シーナとの出会いの時はそんな感じやったの。

―シーナさんはサンハウスを偶然見つけてくれたんですか?

うん。偶然見つけてくれた。毎晩生演奏やっているヤングキラーという店に、サンハウスが出ているところにフラッと入ってきて。バーっと入口の戸が開いた時は演奏しよって。もう閑古鳥でね。バンドの習性としては「お客さん来てくれないかな、そやないと俺たちクビになるな』って。そういうノリで。僕ら3カ月の契約で毎晩しよった。そういう中で演奏しよって、バッとドアが開くとみんな職業無意識にカッとお客さんを見てしまう。「あ! 来た。お客が入ってきた」って。その時もお客が入ってきたのを僕はバッと見て、「あ、女性が入ってきた。若い子だ。なんか暗いけどカッコ良さそうな感じだ」って。で、演奏しよって、どうかな?って思ったら、聴いてくれてる感じだなって感じ。ステージ演奏中から燃えよったんよ。で、終わってね、声掛けてくれてっちゅうか、メンバーに「ギターの人と話したい」って伝言があった。俺はいそいそと行って、なんだいなんだいって。そんな出会いやったけど。なにせ喋ってみたらロックの話に詳しいでねぇ。71年の夏なんですよ。

―そういう意味でもシーナさんもサンハウスをカバーするのは嬉しくかったでしょうね?

うん。そうやし、サンハウスがブルースバンドで、ブルースをもっと深く突き詰めてみたいとかっていうメンバー、ダンスホールの生き残りメンバーで作ったバンドがサンハウスやったけ。けどもう2年目ぐらいになると、高田渡、井上陽水、いろんな人たちが日本の歌を歌う、ハッピーエンドはもうとっくに歌っとったけども。日本語で曲を作ろうってなってからっていうのはシーナがいつも横におってくれて。カセットテープで録音して作る時には、段ボール箱と棒切れ持ってトントンってリズムを出してくれて、コーラスも入れてくれたり。ずーっと一緒に作ってきたから、どの曲も、まぁ言わば子どもみたいなものなんです。そやけん、お手の物であったし。でも、特にサンハウスはカバーしようなんちは思わんまんま、もういっぱい僕らサンハウスの曲を歌っとるからね。「ビールスカプセル」や「400円のロック」とかいっぱい。シーナロケッツのレパートリーはスライドしてきとるから、サンハウスの曲を。柴山(俊之)さんが詩を書いて、俺が作った曲やけ。そやけ、特になかったけど、印象的な「雨」という曲を歌った……これも俺が頼んだのかな。歌ってみてくれん?ちゅう感じで。多分レコーディングでちゃんと始まりから終わりまでやったのはこの時だけやと思う。

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